幸せを見守る準備のための22のドレス
「お姉ちゃんのお嫁さんになる!」
と、小さい頃に言われた記憶はないが(笑)。
自他共に認める、シスターコンプレックスの私。7歳下の妹とは、「姉と妹」というより「兄と妹」という感じだったと思う。
行きつけの店や、友だちとの集まり。春は花見、夏はバーベキュー、秋は酉の市、神輿も一緒に担いだし、冬はあちこち忘年会。
「うちの妹、可愛いでしょっ」と、いろんな場所に連れて行き自慢してた。「俺の妹」的な感じで。
その妹が32歳のとき、付き合ってまだ1ヶ月ほどの彼を連れてきた。そしてもう、結婚を決めたと言う。
そして出会って1年後に入籍、その2か月後の9月には式を挙げることになった。
あまりに早いペースにぶちぶち言っていた私も、妹の花嫁姿は大切。挙式の年の春から8月まで、ドレスを選ぶ日々が始まった。
最初は母と3人で、私が気になった表参道のサロンへ。
なんせ初めてなので勝手が分からなかったが、写真を見ながらドレスを選び試着。母と妹は「目移りしちゃって決められないよね~」という雰囲気だったので、たぶんこのときは、私の意見を押し付けていたように思う。
それから2カ月ほど後、式を挙げるホテルのサロンへ。このときは、父、母、義弟と私と4人が付き添い。
ビデオを回しながら動画を撮る私と、試着をしている妹の横で写真におさまる父と母。それをいろいろ気遣いながら見ている義弟。みんなの意見を聞いて、あれこれ試着。なんだか「遠足」に来ちゃったような雰囲気だった。
3軒目の試着日。義弟は仕事。父と母は前回の付き添いで満足したのか、「お姉ちゃん(私)、頼むわね」と。
仕事が早上がりだった妹と向かったのは、妹の職場から近い、みなとみらいのサロン。ロマンティックなインテリアにときめき、目がぐるぐるするほどテンションがあがった。そこでは3着試着。どれも素敵だったけど……。
2着目に着たレースをふんだんに使ったドレス。ゴージャスでクラシカルな雰囲気に、私はため息。それを着た妹の美しさに、またため息。
試着の後は、そのまま夕飯を一緒に。すっかりこの日のドレスが気に入ってしまった私は、「さっきのドレス、素敵だったー」と、全力で妹にすすめる。
しかしまだまだ、決まらない。
最後は山下公園近くのドレスサロン。ここは妹が探してきたところだ。内心「この間のドレス、良かったのになぁ」と思いながら、付き添い。
そこであれこれ見る間に、妹は「運命のドレス」と出会った。
今思い返しても、ちょっと震えてしまうほど妹にぴったりのドレス。ハイウェストの直線的なラインで、シンプルだけどやわらかくあたたかい印象。
妹が願う結婚生活、義弟と一緒に歩んで行く思いが詰まっているようなドレス。当たり前だけど、姉が願う結婚生活と、妹の願うそれは違う。ドレス選びを通して、妹の強い決意を見たような気がした。
その後、カラードレスも同じサロンで無事に見つかり、メイクさんとの打ち合わせにも参加。
最後は、もちろん義弟が来て打ち合わせ。そのふたりの様子をDVDと写真におさめて、無事に姉の任務は完了した。
ウェディングドレス13着、カラードレス9着で合計22着のドレス。
サロンをまわりドレスを探し、結婚式に向けてどんどん美しくなる妹を見て。だんだん「妹が巣立っていく」という現実と向き合うことができた。
新しい家庭を築く妹の幸せを、見守るのも幸せと思えるように。
暑かった9年前の夏の日々は、私のことを成長させてくれた。
今では7歳と5歳の女の子の母親である妹、変わらず可愛い「私の妹」である。
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