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②45坪のオールウェイズ第一章「18才の旅立ち、私のパリへ」②
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鳥取県 大山
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山陰の小さなこの町とは、鳥取県の中央辺りに位置する倉吉という町である。 白壁の土蔵が続く静かな町並み、天女伝説の打吹山の麓、新町三丁目に古びた私の家はあった。
春は、霞み立つ巣立ちのぬくもりと、すべて命あるものの息吹を感じ、夏は素潜りで大、小の魚を追いかける。秋には栗やアケビ、キノコ取りに夢中になる。そして冬には、吹雪のなか山に入り、クリスマスの枝振りのいい樅ノ木を持ち帰へる。飾り付けて母に褒められた事も思い出す。
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まさに自然に取り込まれた自分が、何時もこの町に居たのである。
先へ急ごう。
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夜行列車は、都会の駅といえども遠慮なくスピードを増して通り過ぎる。 踏切のチンチンの音も3度聞くことはない。特別な気分ではある。京都でジーゼルに衣替えした機関車は、更にスピードをあげ名古屋、静岡、熱海を通過。 やがて丹那トンネルに凄まじい音と共に突入!
30分近く漆黒の闇の世界を走り狂う。私はほとんど虚ろ状態になって来ていた。そんな私の眼前でいきなり車窓の黒幕が引き落とされ、スパッと水墨画のような視界が開けたのである。
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今思えば川端康成を借りれば、“長いトンネルを抜けると雪国であった”となるのだが、しかし“雪解けを急ぐ原野であった”ではしっくりこない。ドラマも始まらない。
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しかし澄み切った朝焼けの霧の中、朝露を身にまといし残雪が、キラキラ黄金色に輝く。そして溶ける気のない雪かぶりの峰々に、あの優しい春色の光りが、群れ降り注ぐパノラマは、、、あまりに美しい!ただ、ただ見とれるばかりであった。
湯河原、小田原、大船この辺りから風景が変わり、大きな高いビルが林立してくる。いかにも都会を演出してきた。
いよいよ横浜である。更に川崎、品川、新橋あたりで久々の車内アナウンスが東京が近いことを教えてくれた。車内は一気にざわめき始め、床の敷物も片付けられ、いよいよ慌ただしさが増してくる。
そしてついに終着駅の名が響き渡ったのである。私のパリ!トーキョー!トーキョー!トーキョー!!
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寝台特急“出雲”の終点です。お疲れ様でした。荷物、手荷物など、呉々もお忘れもののないよう、もう一度よくお確かめください。
寝台特急“出雲”終点トーキョートーキョートーキョー。
さて私をパリへ運んでくれた列車と見れば、頑張りすぎてギイギイと息も絶えだえの音を吐き出しながら、より戻しを繰り返し、ゆっくり、ゆっくりとその任務を終え・・・止まった!
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さあこれからが大変である。ホームは人々で溢れ、皆しっかりと荷物を持ち、その上更に大きな荷物をしょっている人も居る。車内で大声出してハシャイでいた幼子は、びっくり顔して母の手を、両手でしっかり握りしめている
改札口付近は人、人、人、芋洗いの超過密状態である。
名前を呼び合う人、再会を喜び抱き合う人、夢中で迎え人を探す人、チケットはどこだ、どこだと休中探す人。何を言っているのか全くわからぬアナウンス。笑い声、あちこちからいきなりの拍手の嵐。田舎で想像していた都会の混雑風景・・・!?である。
そしてあっという間に、高まる胸膨らませ、それぞれの目的地に向かって四散して行く。
さて私の迎え人といえば、一目瞭然。存在際立つ女性。私の姉ヨーコ女史である。今まで子供の頃一度しか会っていないのに、あ、うんの呼吸ならぬ、DNAのなせる業。お互い顔を見合わせ、ニッコリ笑い合い、心静かにはにかみ合いながら、名前を確認しあったのでした。
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一度八重洲広場に出る。石切場の崖のように垂直にそそり立つビル群。田舎には一基しかない信号機が、まるで危険案内板のように幾つも立っている。 行き過ぎる人々は、よく訓練された兵隊アリのようだ。
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洒落た喫茶店で姉が注文してくれたコーヒーを飲みながら、ガラス越しに見るパリの風景。興味津々キョロキョロしている私を見て、笑い顔の姉。
街路樹が連なる風景なんぞ見たことない。観るもの、聴くもの、飲んでるコーヒーカップまで当たり前だが、何もかもが新鮮で温かい!思わずウキウキ、ツーステップを踏みたくなってくる。
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しかも私のパリは、すでに桜咲く春満開の暖かき季(とき)をむかえていたのでした。
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東京駅の写真は、haveagood holiday「ホリデー」抜粋掲載です。 つづく
やはりこの頃思い出す曲とは、オールディーズの数々、一瞬にしてタイムスリップ!
ポールアンカ、ニールセダカ、パットブーン、コニーフランシス、アンディウィリアムズ、、、特にコニーフランシスのケセラセラ(勿論ドリスディもいい)、(日曜はだめよ。)は時代の日だまりの香りさえ感じます。そして何故かフランク永井、坂本九、ペギー葉山他
次はいよいよ“私のパリ(トーキョー)便り”です。
第2章 私のパリ(トーキョー)便りは8月30日に掲載します。
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