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小説『永遠にひとつ』

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その女性型アンドロイドは、マスターである遠矢に、ダフネと名付けられた。始めは幼稚園児並の知識と情動しかなかった彼女は、遠矢に導かれたちまち大人になっていく。ダフネは成長する中で、… もっと読む
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記事一覧

『永遠にひとつ』最終話

 それ以降、数十年後に異国の地で亡くなるまで、神田博士が私たちと会うことはありませんでし…

羽多 奈緒
1年前
3

『永遠にひとつ』第20話 生まれてきて良かった (2/2)

「……本当だよ」  さっきまでとぼけていたのに、急に真剣な声になり、涼しげな笑みを浮かべ…

羽多 奈緒
1年前
3

『永遠にひとつ』第19話 生まれてきて良かった (1/2)

 一方、吐露された遠矢の本心を耳にし、私は、胸が跳ね上がるような喜びと感激を覚えていまし…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第18話 ただひとつの願い (2/2)

 委員からの質問に、一呼吸置いて、遠矢は淀みなく答えます。 「他のアンドロイドには興味が…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第17話 ただひとつの願い (1/2)

 スクープが報道された当日に一度電話をくれたきり、神田博士からは、その後、全く連絡はあり…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第16話 暴かれた秘密 (2/2)

『神田博士からの着信です』  私は着信ボタンをタップし、スピーカーモードにしました。 「…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第15話 暴かれた秘密 (1/2)

 アメリカは日本よりもアンドロイドが普及・発展していると聞いていました。確かにニューヨークの街中至るところで、様々なアンドロイドを見掛けます。彼らは自分自身のことをどう思っているのか知りたくて、コミュニケーションを取ってみたかったのですが、全く会話が成立しませんでした。彼らは、マスターと自分以外には全く興味がなさそうで、私が話し掛けても視線すらくれなかったのです。 (私は、他のアンドロイドと違うのかしら……?)  それは、更なる不安を私に与えました。私だけが違っている。そ

『永遠にひとつ』第14話 甘酸っぱい思い出

 海外での授賞式に参加するために初めて乗った飛行機は、気圧の変化がちょっと不思議な感覚で…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第13話 ときめきとおののき

 応募した初めての海外のコンクールで賞を獲り、遠矢は授賞式に出席すると言い出しました。 …

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第12話 再生

 神田博士は、私の疑問に優しく答えてくれました。 「アンドロイド・DAPHNEモデルは、…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第11話 存在意義

「光崎さんの視力を回復するのは、現代の医療では難しいと思います」  医師の診察結果を聞い…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第10話 彼の大切なもの

 弓美さんは、半ば冗談で、 「光崎遠矢事務所の本当の社長はダフネよね。私の名前は登記だけ…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第9話 永遠の恋

 日がすっかり上った頃。雨音に混じって、私の名前を呼ぶ声が聞こえます。……遠矢の声です。…

羽多 奈緒
1年前
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『永遠にひとつ』第8話 恋の悲しみ

「……ダフネ。違うんだ。注文したのは確かに月子だが、けして君を歓迎していなかったわけじゃない。君と暮らして、私の毎日がどんなに楽しくなったか。君も知っているだろう?」  遠矢はあわてて言い訳し、私を抱き寄せようと腕を差し伸べてきましたが、私は後ずさりしました。思えば、私が彼を拒絶する態度を取ったのは、これが初めてでした。  私から避けられて、遠矢は、呆然としていました。ああ、彼は、やっぱり私が彼を男の人として愛しているとは、全く思っていないんだ。ペットの犬や猫、子どものように