脱ステロイドではアトピーは治らない 〜 アトピー治療で"やめた"こと(6)
脱ステロイドは、アトピーの方なら一度は通るのではないかと思います。私がハマった中でも最悪な民間療法でした。
脱ステロイドとは
脱ステロイドとは、ステロイド薬の使用を一気に止めて、自分の自然治癒力によってアトピーを治すように切り替えるという民間療法です。
ステロイド薬を長期間使用することによって発生する副作用を解消するためと言われます。
"好転反応" という根拠の無いワード
脱ステロイドでは、ステロイド薬の使用を突然中止するためにリバウンドが発生します。
リバウンドとは、それまでステロイドで抑えていた症状が、ステロイドをやめたことで一気に噴出することです。
脱ステロイド療法では、このリバウンドを良いものと捉えて"好転反応"と呼んだりします。その説明としては「体に溜まっていた毒素を排泄しようとする反応が起き、一時的に状態が悪くなるが、それは良くなる前兆としての反応である」というものです。
私も、脱ステロイドを行っていた頃には、この「好転反応」という何の根拠も無い言葉に騙されていました。この言葉は非常に危うく、判断を惑わす、非常に良くない言葉だと私は思っています。
ステロイドはアトピーの原因ではない
そもそもステロイド薬を使い始めたのはアトピーの症状が現れた後であり、炎症が酷くなっていくのを抑えるためだったはずです。
それなのにステロイド薬=悪とすり替えて、あたかもステロイドがアトピーの原因であるかのような扱いとしてその中止をさせる、というのが脱ステロイドです。
アトピーを抑えるために使っていたステロイドをアトピーの原因が解消していないのにやめてしまったら、アトピーの原因は残っているのに抑えを止めたわけですから、リバウンドが発生するのは当たり前のことなのです。
悪化の言い訳を作ってしまう
この脱ステロイドの説明の最も良くない点は、アトピーの悪化に対して、それを良しとする言い訳を作ってしまうところです。
普通に考えれば単に症状が悪化しているだけなのに、本人はそれを改善していると思い込もうとする心の動きを作ってしまうのです。
私自身も、この罠にハマっていた時期があります。この思考の時には、すこしの改善でもそれを顕微鏡で拡大するかのように大きく捉え、好転反応であると思おうとするのです。
実際には、単なる悪化と、皮膚の回復力とで、肌の状態が多少行き来する体調の波でしかありません。アトピーの原因が取り除かれていないのであれば偶然の上下でしかありません。
"毒素"が具体的に何かを説明できない
さらに言えば「体に溜まっていた毒素」とは一体何か、それを「排泄しようとする反応」とは一体何のことか、誰も何も説明できません。
非常に曖昧で根拠の無い話であり、"毒素"、”排泄”という言葉は何も説明していないのですが、アトピーで苦しんでいるとこの言葉を何も考えずに信じてしまいます。
実際、毒素とは具体的にどのような物質なのか?
それがあるとなぜアトピーが発生するのか?
どこにどれくらい溜め込まれているのか?
なぜステロイドを止めると排泄されるのか?
どのように排泄がされるのか?
なぜ排泄の過程でアトピーの悪化を引き起こすのか?
答えられる人はいません。答えられるとしたらアトピーのメカニズムが解明されていることになります。そうするとアトピーは一般的に治せる疾患となるはずですが、現実はそうなってはいないからです。
そして、実際にアトピーの原因はそんなものではないからです。
なんとなくのイメージを利用するアトピービジネス商法
これらの”好転反応”、”毒素”、”排泄”といった言葉は、耳ざわりのいいイメージでしかありません。抽象的で、何も具体的な事実を表していない言葉です。
これらの言葉は「悪いものが出ていって身体が綺麗になる」という、私たちがなんとなく描く"排泄"のイメージを利用しています。しかしその実は、何の科学的説明や根拠も伴わない、イメージだけの無意味な言葉です。
そして、これらはアトピービジネス屋が好んで使う便利ワードです。彼らはふんわりとしたこれらの便利ワードで、アトピーと向き合うように見せかけて現実から目を逸らさせて、自分たちが提供するサービス・療法への購買に繋げます。
「老廃物」「毒素」が具体的に何なのかの科学的な説明がされ、その排泄プロセスがちゃんと説明されて、好転反応という事実が客観的な現象として認められたときにやっとはじめて、「そういったことがあるのかもしれない」という程度に受け止めるべきものです。
そうでなければ、それは妄想です。そして、妄想のために、私たちがアトピーの辛い時間とお金を費やす必要はまったくありません。
アトピーの根本原因と治療方法について
アトピー性皮膚炎の根本原因を科学的・論理的に解説しています。こちらもご参照ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?