ピース
小学生の頃、クラスの人気者の奴がいた。
僕は奴が嫌いだった。
ちょっとスポーツができるからって調子に乗り過ぎだ。履いてるデニムがちょっとお洒落なくらいでお洒落扱いされていた。声が少々デカいだけで何にも面白くない奴の話にみんな笑っていた。集合写真では決まって寝転びピース。
本当に気に食わなかった。
僕は奴に喧嘩を仕掛けた事がある。
一世一代の大勝負に出たのだ。
勉強が取り柄の僕にとって不利な勝負である事は重々承知だった。
ただ、テストで勝ったからって何も変わらない事を僕は知っていた。
だから喧嘩することにした。
…喧嘩は負けた。惨敗だった。
ただ1発は殴ってやった。不意打ちではあったけれど。
きたねーぞと言われたが、僕は先制パンチだよ。とか言ってたな。
喧嘩の後と言うものの、僕には友達ができなかった。中学生の頃まであの時の喧嘩に勝てていれば同級生間の勢力図をがらりと変えられていたかもしれない。僕が人気者になれたかも知れない。
そんな事を一人で思う日々だった。
まあ大人になった私が今思うことは、勝敗なんてどうだって良い。喧嘩なんてしなきゃ良かった。それくらい。
大人になった僕はデニムを履く事が多い。
いわゆるアメカジ好きだ。
著:橋野航
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作品展Literature×Local『ディグる』より
『ピース』橋野航
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