自分のヒーリングは苦手。手の酷い荒れを放置したまま始まった恋 タイツを破く程荒れた手では優しく触れてやれなくて 本氣でヒーリングを始めた途端その恋は壊れた 今手肌は少し回復し、でも優しく触れてあげる貴方が居ない 人はテメェだけの為にゃ本氣になれぬものだから。私はきっと再び恋をする
職業に「イケメン」の枕詞を冠されてメディアに露出させられていた男と別れたのが10年前。ひょんな事から現在の彼の取材記事を見つけた。成功を手にした彼の首には今も私が贈ったペンダントが下がっていて、ただのイケメンがそうなるには短かったであろう10年の辛苦を共にしたソレに妬いて祝った。
ブラックバードに跨る男に惚れて大型二輪の免許を取ったのは23歳の頃。最初に彼がくれたのは無線機。行け!減速!止まれ!の無線がウザくて、隼に跨るスピード狂に乗り換えた。付いて来い!と叫ぶと同時にフルスロットルの隼を追いながら、無性に鴉が恋しくなった。2度とは会えない鴉を2年想った。
お元氣ですか?ブスだと云われて泣いていた15歳のあの日、 「君は40歳がピーク。イイ女になるよ」と云ってくれた先輩のその言葉に支えられ40まで生きられました。でも何故50歳って云ってくれなかったの?私まだイイ女なんかじゃ… 「40からは自分で支えろ」笑う先輩の声が聴こえた氣がした
誕生日に何が欲しいかと問われ、負担にならぬよう薔薇と答えた。 ハタチになった朝に私が目にしたのは車一杯に積まれた赤い薔薇。 コイツは馬鹿だ。安く済ませてやろうとして言った事なのに。 どうせ枯れる薔薇に一体いくらの金を遣ったの。 けれど未だに、胸に焼き付いたあの薔薇が枯れない…
「あの男はやめておけ。後が怖い」と私は云われ 「その純情を刺される覚悟で愛してる」と返し、胸に秘めた 「あの女はやめておけ。傷つくだけ」と彼は云われ 「大丈夫だよ」と返し、私に告げた 時に友人は心配顔で残酷 深手覚悟と言えないのね するまでも無かった私の覚悟が紫煙に溶けた
30を過ぎてから、目の悪い厚い眼鏡の男を愛した。 何故俺なのかといつも云う。 「よく見ようとしてはダメ。本当の事が見えなくなるわ」 彼が眼鏡を外したら、私は服を脱ぎ捨てる。 女には、安らぎに身を委ねて初めて燃えるものがある。 私の炎を見たのは彼だけ。私に見せてくれたのも…
「魔法の惚れ薬があったら一体どれ位の人が今の想い人に飲ませるかしら。 どうせもっと高嶺で高値の人に飲ませるわ。そういうものよ」 「貴方が妥協してるの知ってるわ」と言う私の虚勢は、 「貴方で妥協しているの」と彼には聞こえた。 愛こそ卑屈の毒の中和剤だと、今なら教えてやれるのに…
31になった頃、19歳の大学生に愛された。 彼は私を「姫」と呼び、大層舞い上がっていた。 4年で付き合いが終わった後も誕生日には必ずメールをくれている。 私は少し照れて居る。若かった彼が当時の私の年齢になり 「なんだ。姫もこんなにガキだったのか」と。 今は知れてしまっているだろう
昔、若い恋人が「平等と公平の違い」を説明してくれと言った。 「平等は揃いのマグ、公平は夫婦茶碗…」と語ると落ち込んだ。 「入社面接で答えられなかったんだ、俺」 唇で彼の若い肌に触れながら思った。 何を知らなくてもいい。 「真剣と一生懸命の違い」に氣付ける子になってくれたら…