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Last Note.さんが好きだったんだよなって話。

 皆さんはご存知でしょうか、『Last Note.』さんというボカロPの存在を。

 もはや説明する必要はないと思うのですが、ボカロPとは「初音ミク」や「GUMI」などの音声合成技術『VOCAROID』を用いて作曲を行った音楽家のことを指しており、『Last Note.』さんとはニコニコ動画におけるボカロシーンを彩った有名なボカロPの1人です。

 本記事ではその『Last Note.』さんを紹介すると共に、現在は活動休止状態に陥ってしまっていることに対する個人的な見解を述べています。




1.『Last Note.』さんとは一体何者なのか


 知らないという方でもちょっとはボカロシーンを齧ったことがあるという方や音ゲーが好きだったりする方はもしかしたら次の情報のうちのどれか1つはピンと来るかもしれません(思いの外長くなってしまったので知っていらっしゃる方は飛ばして頂いて大丈夫です)。


『セツナトリップ』の作曲者であること
・ニコニコ動画での再生回数が600万回を超えており、多数の音楽ゲームに収録されている言わずと知れたLast Note.さんの代表作。

『現実逃避』をテーマにした楽曲で、小気味いいサウンドに言葉遊びの得意なJKみたいな独特の歌詞が特徴。
 京都アニメーションでアニメーションをされていたキャリアのある「のん」さんの淡麗なイラストと弾いてみた界隈で有名だった演奏陣によりまだそこまで露骨にプロが介入していなかったボカロシーンにおいて未だ色褪せないわりと衝撃的な完成度の作品だったように思います。


『恋愛勇者』の作曲者であること
・ニコニコ動画での再生回数が200万回を超えており、こちらも多数の音楽ゲームに収録されている代表作の1つです。

 後述している『ミカグラ学園組曲』シリーズは例外としても『セツナトリップ』の一発屋ではないことが本作品で証明されています。


『ミカグラ学園組曲』シリーズの作曲者であり原作者であること
・ニコニコ動画での再生回数が200万回を超えている『放課後ストライド』や100万回を超えている『有頂天ビバーチェ』、『無気力クーデター』を始めとした楽曲群『ミカグラ学園組曲』をLast Note.さん本人がノベライズし、MF文庫J様より全8巻で出版されています。また、「沙雪」さんによりMFコミックス様より全6巻でコミカライズも行われています。

 また同シリーズは2015年に動画工房様よりアニメ化されており、楽曲をひとまとめにしたアルバム『ミカグラ学園組曲』をSony Music Records様よりリリースされています。

・上記の説明がよく分からなかった人にざっくり説明すると当時流行っていた物語音楽というジャンルのコンテンツで、曲を先行して製作し、同一の世界観を作り上げた上で小説や漫画、アニメなどのメディア展開をしていくというメディアミックスの手法を取っており(その分後々設定を成立させることに苦戦していたように見えた作品も多いですが)、良くも悪くもニコニコ動画を盛り上げた『カゲロウプロジェクト』の亜種みたいなものだと思って頂いて良いと思います。
 主観ですがボーカロイドは好きだけどカゲプロは苦手という方の受け皿となっていた人が多かったような印象です。CDのオリコンウィークリーランキングは20位と健闘しましたが、DVDの売上げ自体は忖度なしに言うと大爆死したと言っていいでしょう。


 どうですかね?? 大体分かってもらえ(思い出し)ましたかね???


 そもそもボカロなんて聞いたことないし興味ねーよ!という方はこれを機に最盛期のボカロシーンを盛り上げたこの『Last Note.』さんの存在を知ってもらえると嬉しいのですが、残念ながらYouTubeチャンネルは存在するもののこれら代表作のほとんどが投稿されておらず、Last Note.さん自体がもうほとんど活動をされていないので公式で投稿されているMVを観るためにはわざわざニコニコ動画を開かなければなりません。

 では何故そんな面倒くさいことを強いられる状況になってしまっているのかという理由ですが、これには『Last Note.』さんとは「2人組の音楽ユニット」であるという点が深く関係しており、現在は事実上の活動休止状態に陥ってしまったことの大きな要因となっています。



2.なぜ事実上の活動休止状態に陥ってしまったのか


 Wikipediaなどの情報サイトでは『Last Note.』さんは「Last Note.」さんと「ニフ」さんという方の音楽ユニットという形になっていますが、この2人での体制で制作された楽曲は自分の知る限りでは活動を行わなくなる間際での数曲しかなく、発表された全楽曲のほとんどは「Last Note.」さんと「Last Note. T」さんという2人での体制で作られたものとなります。

 Last Note.さんは現在、Twitterで年1、誕生の時だけ祝われに来るという活動内容(お茶目な方なんです)ですが、Last Note. Tさんは現在、「杉下トキヤ」さんという名義(一瞬の間だけT-杉下というヘンテコな名前で活動していましたが)で『けいおん!』で一躍有名となり現在はオーイシマサヨシさんとの音楽ユニット『OxT』としても活動している「Tom-H@ck」さんの経営している株式会社TaWaRaに所属されており、数々のアニメ作品やアーティストに楽曲提供を行われています。


 この『Last Note.』というユニットでのお2人の役割として、インタビューなどでは以下のように語られています。

Last Note.「まずは何曲か作ってみよう」っていう。彼は編曲がすごくうまいので、お願いしたいっていうところだったのかな。今も編曲はぜんぶ任せてるし。
T「作曲は2人でやるんですけどね。メロディが決まったら、歌詞はラスノさん、編曲は僕っていう分担で。ラスノさんが歌詞を書いている間に、僕はフルコーラス分のアレンジを作るっていう」

https://natalie.mu/music/pp/lastnoteより引用


 つまり、


 Last Note.さん→作詞、作曲担当
 Last Note. Tさん→作曲、編曲担当


 という役割分担を行なっているユニットであることが明言されていました(後にLast Note.さんは作家業やゲーム実況といった活動も始めました)。

 ですが、後にLast Note. Tさんこと杉下トキヤさんはTwitter上でこのような発言をしています。

 この発言をされた当時は体制の変更が発表された直後ということもあってか言葉に多少の険はあるように思いますが、この発言はフォロワーの方へのリプライですので(なのでこのようにピックアップすることになって大変申し訳ないのですが、元のリプ主の方がアカウントを削除されているようなので使わせて頂きました)表立って発信するようなことはありませんでした。

 当時は佐村河内守さんによるゴーストライター騒動や、ニコニコ動画界隈を騒がせたスズムさんによる問題によって「誰が実際に作曲をしていたのか」という部分に関しての権利問題が非常にセンシティブになっており、騒動になることを避けたという見方もできます。

 お2人がどのような関係性だったのかは分かり得ないことですが、作詞という一見誰にでもできそうな仕事を担当してあとは丸投げされ、過剰な作家アピールや作曲してますヅラをして表舞台に立つ友人たちとゲーム実況をしている様子を見ていたらユニットとして破綻することは目に見えた事実だったのかもしれません。


 ですがやっぱり自分はLast Note. さんの作詞能力は唯一無二だと思っていますし、それは杉下トキヤさんも重々理解の上であることはインタビュー上でも語られています。

──(笑)。でも独特の世界観がありますよね、ラスノさんの歌詞は。青春の残酷さだったり、切なさだったり……。
T「いろんなタイプの歌詞があるけど、僕から言わせてもらうと、全曲「ラスノさんらしいな」って感じなんですよね。韻の使い方だったり、言い回しだったり、「この人じゃないと書けないな」っていうものが絶対にあるなって」

https://natalie.mu/music/pp/lastnote/page/2より引用


 つまりなぜ事実上の活動休止状態に陥ってしまったのかの答えとしては、推察でしかありませんがLast Note.さんがLast Note. Tさんへのケアを怠ったという答えに尽きると思います。
 Last Note. Tさんがそれを望んだのかどうかは分かりませんが、もっと表立って自分たちの役割分担を強調したり、表舞台に引っ張り上げることもLast Note.さんに課せられた役割だったのでしょう。


 まあ、過ぎたことは仕方ないですし何かもっと軽く紹介するつもりが暴露記事みたいなノリになってきてしまったので、次の章では個人的に好きな『Last Note.』さんの曲を幾つか紹介したいと思います。



3.個人的なおすすめの曲3選


『セツナトリップ』

・冒頭でさんざ紹介させて頂いたのでもはや言及の余地はないですね。一度で良いのでMVを覗いてみてください。
 ちなみにですが、富士見ファンタジア文庫様よりさつきやまいさんというわりと当時ライトノベルをたくさん読んでいたのにマジで聞いたことのない作家さんによってノベライズされています。原曲のポップさの中に仄かに見える鬱屈とした気持ちという部分をあまり表現してくれず、終始暗めの雰囲気で物語が続くのでわりと叩かれていた記憶があります。



②『少女暴動
 MVが公開されていないいわゆるアルバム収録曲というものになります。ヲタみんさんという歌い手さんのアルバムに書き下ろされた楽曲で、同人時代のアルバム『first trip』とメジャー1stアルバムである『セツナコード』に収録されています。
『first trip』の方はSpotifyなどのサブスクでも聴くことが可能なので良ければ聞いてみてください。これぞボカロ!と言いたくなるほどの早すぎる曲調と明らかに詰め込みすぎている歌詞に加えて虐められっ子の少女が虐めっ子に反逆するという内容の読み切り漫画を読み終えたかのような読後感がそこにあります。

『ほら、メチャクチャな無灯火疾駆(むとうかしっく) 
 ムシャクシャ愚者降下滑空(ぐしゃこうかかっくう)
 有耶無耶になったきっかけはなんだっけ?』

『少女暴動』より引用

 とかいう語感が気持ち良いだけの滅茶苦茶な歌詞は一体何度のアルコールをあおれば思い付くんでしょうか。



③『ルートスフィア

・Last Note. さんことラスノさん(今更愛称を持ち出してきてアレなのですが、この愛称を用いると今回の記事の内容が非常にややこしくなっちゃうので使用していませんでした)の特徴として言葉遊びの得意なJKみたいな独特の歌詞というのは前述した通りなのですが、ラスノさんから言葉遊びを取り除いたらただのJKやないか!と言いたくなるほどのストレートな青春ソングです。

『大人がいつも正しいことだけを教えるとは限らないってそう教えてくれたのもまた大人で、だから────
 ただ俯いていた背中を粗雑に押しただけで満足そうに去っていった人達にもう道は尋ねない』

『ルートスフィア』より引用

 っていう部分の歌詞が一番好きです。ああ、大人で尊敬できない人ってたくさんいるんだなっていうそれまでの自分の固定概念を壊してくれた名曲です。


終わりに


 何か#わたしとニコニコっていうお題があったから好きなアーティストを紹介しようと思っただけなのに思った以上に筆が乗ってしまったのでこのような重箱の隅をつつくような記事となってしまいました。それもこれもドワンゴが悪い。嘘ですアマギフください。 

 つまりこうして無駄に長々と一体何を言いたかったかというと、


 わざわざニコニコ動画を開くの面倒臭いからYouTubeにアップロードしてくれ!!!!!


 というお2人へのシンプルな苦情です。

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