肯定のフィロソフィー

「いつもスマイルしなくてもいい 深刻な女はきれい」【戸田真琴 2021年7月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「いつもスマイルしなくてもいい 深刻な女はきれい」【戸田真琴 2021年7月号連載】『肯定のフィロソフィー』

2020年5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  思えば去年の夏よりも、その前の夏よりも、もちろん4年前の夏よりも10年前の夏よりももっと、誰かと出会い、話し合い、人生を見せ合うような機会が増えている。  人生を見せ合う相手なんて一人もいなかった頃、中古屋で探したボロボロの二つ折りケータイのカメラ機能で覗いた世界はいつも雨の日のバスの車窓のようで、遠くの光は色とりどりに、でもそのオレンジ色がなぜオレンジなのか、あのピンク色がなぜピンクなの

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「まこレコ日和とクソ映画」【戸田真琴 2021年6月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「まこレコ日和とクソ映画」【戸田真琴 2021年6月号連載】『肯定のフィロソフィー』

2020年5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  チェンソーマン第39話でデンジとマキマさんがしていたデートをしようと思い、日曜日に計画を立てた。最近はずっと心が急いでいて、何をしていても何もしていなくてもずっと何かを恐れている。心がいろんなガスで膨れ上がりくるしいときは、たとえ2、3時間急に予定がなくなってもマシなことは何も出来ずに街を彷徨ったりネットニュースなんかを見て日が暮れてしまうし、日が暮れたらちょうど20時くらいになる季節だか

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「芸能人とのセックスに死ぬほど興味がない」【戸田真琴 2021年5月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「芸能人とのセックスに死ぬほど興味がない」【戸田真琴 2021年5月号連載】『肯定のフィロソフィー』

2020年5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  誰にでも週刊少年ジャンプとかしか読めない時期というのがあって、今がまさにそれである。私がどことなくくたびれてしまい、感受性が鈍ることをにわかに受け入れておきたい季節なんかに、ただ普段よりも多く眠りこけたり目的もなくジャケ買いした漫画を読みあさったり俗っぽい話ができる友達と俗っぽい話をして一日だらだらとパフェをたべたりポテトをたべたりしている間にも、世界はべつに止まっていてはくれない。野望が

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「心と身体とポルノスター」【戸田真琴 2021年4月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「心と身体とポルノスター」【戸田真琴 2021年4月号連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  先日、ミスiD2021が決定した。私は今年初めて選考委員をやらせていただいて、約1年間をかけてのべ2676人の応募者の方々と、そのほとんどをネット回線ごしに対峙することとなった。書類審査の時点で新しく設けられた「3分動画」で爪痕を残す人や、Zoom面接であることを逆手にとって映像演出的に面白い工夫をしてくる人、最終的にファイナリストから対面で面接できる人数も限りなく絞られ、最後まで最終3分動画の提出

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「退屈な授業と退屈な授業の合間に」【戸田真琴 2021年3月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「退屈な授業と退屈な授業の合間に」【戸田真琴 2021年3月号連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  橋本愛さんが共に歌い、出演もしている大森靖子さんの「堕教師」という曲のMVを見た。茫然自失のずっと先にある喧しい絶望のような空気が、学校と教室、教師という仕事に付随したイメージと重なって、なんてうまくできている作品なんだろうと感動した。  教師という職業に関する最も古い記憶は小学校低学年の頃で、うちの母親は他人を容姿や態度で選別する人間だったので、当時の担任だった先生のことも家では馬鹿にし、あだ名を

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「花束みたいな恋をした」―見る人の恋をそっと匿う物語【戸田真琴 2021年2月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「花束みたいな恋をした」―見る人の恋をそっと匿う物語【戸田真琴 2021年2月号連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  石岡瑛子展を滑り込みで見に行き、時代を写し取った上でそこに不足した何かを強烈に投げかけるようなクリエイティブに対して称賛を超えた脱力感を覚えた。あまりにパワフルで、情熱とユーモアがあって、骨太だ。今の日本ではこれに並ぶクリエイティブは生まれないだろうと思うと、展示を進めば進むほど、目の前の作品の持つ威力そのもののような希望と現代に対する絶望がちかちかと交互に点滅し、見終わる頃にはとても立っていられな

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「好きなキャラクターだいたい不人気問題」【戸田真琴 2021年1月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「好きなキャラクターだいたい不人気問題」【戸田真琴 2021年1月号連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  友達から借りた「NANA」を一気読みしている途中、自分も随分大人になったことに気づいた。私は本当に視野の狭い人間なので、自分が共感できる立場の登場人物が1人もいない物語はすぐに読むのをやめてしまうのが常だったのだ。だから未だに、家族を大事にしている人が中心の物語や、意思が薄弱だったり貞操観念が緩い人々が中心になった物語などはしっかりと最後まで味わい尽くせた覚えがあまりない。どこにも自分の写鏡がいない

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「年末年始プレッシャー」【戸田真琴 12月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「年末年始プレッシャー」【戸田真琴 12月号連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら 「私、年末年始が得意じゃない。」先日、Podcast「戸田真琴と飯田エリカの保健室」の収録時に飯田さんが言った言葉だ。驚くほどしっくりきて笑ってしまった。  本当に、私も年末年始が得意ではない。ずっと続いている時間を区切ることで何かみんなが同時に同じスタートラインに立たされるような感じも同調圧力があるようで嫌いだし、実家に帰って家族と過ごすとか、恋人や大事な人と過ごすべきとか、おせちやお雑煮を食べるべ

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「TENET」感想-何処から来て、何処へ行くのか【戸田真琴 11月号連載】『肯定のフィロソフィー』

「TENET」感想-何処から来て、何処へ行くのか【戸田真琴 11月号連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  グランドシネマサンシャインの大袈裟なビルから出て雑多な街に降り立った時、私はようやく「TENET」に出会ったのだ、と心から嬉しくなった。そして、映画というメディアのことを、一層信じようと思った。どちらかというといい思い出のあまりなかった、全然綺麗じゃない池袋の街がやたらと深みのある色合いで輝いている。これがなかったら一生見ることができなかったかもしれない未来にいる。すれ違う人も車も、誰もが知らないこ

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「宇宙の星は引き攣れて」【10月号 戸田真琴 連載】『肯定のフィロソフィー』

「宇宙の星は引き攣れて」【10月号 戸田真琴 連載】『肯定のフィロソフィー』

5月号連載『「half of it」−愛:思惑すること』(無料)はこちら  愛は5次元の力で、時間は伸び縮みはするけれど逆方向には進まない。  SF映画で聞いた言葉を、奥歯で噛み砕きながら生きる。誕生日を過ぎてまた一つ大人と呼ばれる年齢になったものの、そこにある感慨は「目の前にいるファンの人たちと何度目のお祝いをしたのか」といった種類のものだけで、自分の歳についてはなんの感情もない。何歳だっていいのだ、こんなものは。時間は伸び縮みするもので、君と過ごした年月は思い起こすタ

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