真っ昼間でも読んどくれ

夢待人〔結編〕

ふたりで買い物をしてしばらく後の朝。

 身支度を整えたイメミが桐吾(とうご)を呼びに行くと、まだベッドに潜り込んだまま丸くなっている。

(あれ? 夕べも良く眠ってらっしゃったよね?)

 以前のことは知らないが、少なくともイメミが菅江家に来てから、この一年ほどはきちんと起きていることが多かったため、珍しい。

「桐吾さま? もう、朝食のお時間ですよ?」

 布団に手をかけ、そっと声をかけるとモ

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おれもだよ♡
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夢待人〔転編〕

まるで、これが合図であるかのようだった。

 イメミの脳裏には、これまで不思議に思っていた桐吾(とうご)の言動が一気に甦り、あれはやはり偶然ではなかったのだ、と確信する。

「前にも仰いましたよね……私の名前のこと。それだけじゃない……あの本のことも。何故、ご存知なんです」

 少し睫毛を伏せ、納得するように小さく頷いた桐吾は、呼吸を整えようとしたのか、一度大きく息を吸い込み、そして吐き出した。

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テレリ(〃ノω)σ| モジモジ♡
22

夢待人〔承編〕

扉に背を預けて座り込んだイメミは、しばらく動けずにいた。

 ふと、胸に抱えていた本の存在を思い出すと、今しがた見た光景が脳裏に甦って来る。

 『今』が現実味を帯びるのを感じながら、表紙に目を落とし、そっと指先でなでた。

 *

 書庫の奥に、桐吾(とうご)は確かにいた。

 出窓に腰かけ、脚の上に開いた分厚い本の世界に、まるで己を漂わせているかのような桐吾が。

 逆光で縁取られた影は窓側の

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テレちゃう♡
25

夢待人〔起編〕

※注)四話完結ですが、一話が長いです。(予告注意w)

 
 
 
「夢を見ることが夢なんだ」
 
その人は、笑ってそう言った。
 



 石造りの大きな門構え。細工が施された扉の向こう側には、屋敷が見えないほどの前庭が待ち構えている。

「……え……ここ……?」

 住所が記された紙切れを確認し、門の前で濱坂(はまさか)イメミは目を白黒させた。

(こんなお屋敷だなんて聞いてないよ……!)

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おれのスキ♡には『大』がつくぜ?♡
26

軒先にて

いつか返そうと思っていた人が、いつかの内に、いつの間にか自分の傍からいなくなっているなどと、ほんの少しも考えてもいなかった。

 変わらずに迎えてくれた古い家。それは、ちっとも変わっていないかに見えたのに、そんなことはありえなかったのだ、と思い知る。いや、変わったのは自分も同じなのだ。

 若い時分には考えもしなかった。まだ若く力強い両親が年老いて行き、いずれはこの世を去ってしまうなどと。そして、

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おれもだよ♡
45

冬がれに春たちて

春、まだ淡き日。

 私の心を根こそぎ奪って(とって)行った女(ひと)の残り香と遭遇した。

 いや、出会って──しまった。

 顔を見ても全く気づかなかった。似ても似つかなかったから。

 気づいたのは偶然。特に珍しくもない苗字の方ではなく、名前を見た時。

『中村冬詩(なかむら とし)』

 その文字を見た途端、17年前の記憶の引き出しから彼女の言葉が甦り、冬空のように冴え冴えとした早春の空を

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テレるぜ♡
40

それは…どぉゆうコトなの?2~後編~

彼女たちの後をつけ、ぼくは地下鉄に乗り込んだ。ストーカーも真っ青な行ないであることは、自分でも百も承知なのだが、どうにも気になって止まらない。

一定の距離を保ち、後ろを歩いていると、次第に人が…………人が…………何でこんなにひと気が多いんだ!見失うじゃないか!──と、目に飛び込んで来たのは、古めかしいながらも、立派な建物。同じ方向に歩く人たちも、そして彼女たちもそこに入って行く。

(……ここが

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テレリ(〃ノω)σ| モジモジ♡
32

何よりも引きとめる〔後編〕

(……生きてる……?)
 薄っすらと目を開けた曽野木(そのぎ)は、見覚えのある天井に、まずそう思った。
(……何故、助かったんだ……?)
 ふと、人の気配を感じて傍らを見る。小春(こはる)が突っ伏して眠っており、ベッドサイドには曽野木の薬、そして注射器のセットが置いてあった。
「…………?」
 不思議に思い、眠っている小春の顔を覗き込もうとするも、自分の身体のあまりの重さに断念する。何とか手だけで

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おれもだよ♡
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何よりも引きとめる〔前編〕

「生を受けたからには、致死率は100パーセント。例え、長かろうと短かろうとも。その運命からは、誰も逃れる事は出来ない」
 
 ──曽野木(そのぎ)は、もうかなり前から薄々感じてはいた。自分の身体は、程なく限界を迎えるのであろう、という事を──
 

 
 今後は、単発の仕事以外、継続的なものは引き受けられない、と勤め先に伝え、今までに引き受けていた仕事は全て完了した。私的な手続きや処理も全て終わ

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テレリ(〃ノω)σ| モジモジ♡
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角砂糖のような

まるで、角砂糖のような恋だった。
 
 そう──角砂糖のような、という表現が相応しい、と思っている。
 思い浮かべるのは、甘さ、だからなのだろうか。
 
 そのまま含めば、ただ甘く、水に溶かしても、なお甘い。溶け込むその姿は、揺らめく陽炎のようでしかなくとも、確かに存在していることを何より舌で感じる。
 
 では、コーヒーなら?
 
 ほんの少しの姿さえ見えなくなる。けれど──。
 
 そこに、い

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テレちゃう♡
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