キミと自分①




「キミにとって、一番譲れないモノって何?」

唐突に尋ねられた自分。

「え…なに?」

何も考えていないノーミソは、真っ白な紙にいきなり墨をぶっかけられたような状態。

「キミにとって、一番譲れないモノ」

...きたよ。


たまーに…いや、しばしばと言えなくもないか?
何の脈絡も前触れもなく、まるで抜き打ちテストか服装検査みたいに。

(その質問には、何の意味があるワケ?)


もう何度、疑問に思い、喉から出かかった言葉であるか...口の外に出したコトはないけれど。


数ヶ月前、知り合った当初は、そんなトコロが新鮮でもあり、驚きでもあり、おもしろくもあり、興味深くもあり、
今となっては...やっぱり不思議でおもしろいと言えるのか(笑)。

何だか、それ自体が不思議な感覚だ。


何の意図で聞かれているのかさっぱり判らないのに、
それでも何故か答えを導き出そうとしている自分がもっと不思議。

面倒に感じる反面、ちゃんとした自分の答えを弾き出したい願望も湧いてくる。

思っている以上に、自分で自分のコトを解ってない事実を突き付けられた気持ちになるのかも知れない。

こんなコトをグルグル考えてはいても、実際にはその時間はほんの数秒だと思う。

とは言え『譲れないモノ』も実際には一つや二つでは括れないし、
不変性を伴うモノもあれば、その時の状況によって変わるモノもあるかも知れない。

主義主張として譲れないモノって、その状況にならないとなかなか出てこない。
情けないコトに。


だけど今、この時の自分にとって『譲れないモノ』なら...


「キミとの、こーゆう時間」


...ファイナルアンサー。



その答えを聞いた瞬間の、その、ほんの一瞬のキミの表情を自分は見逃さなかった。

ホントに刹那に近い刻。


無表情と言えるような、その時の顔。
ほとんど判らないくらい僅かに、微かに上マブタが上がったキミ。


自分は間違いなく、その瞬間を見たよ。


でもすぐに元の表情に戻ったキミ。


「…そーゆうコト、聞いてないし」


ぶっきらぼうにキミは言った。


...してやったり。


そーゆうキミの一瞬を切り取ったように共有できる時間、
そのコトこそ、譲れない大切な刻。


これからも、きっと。



まだ、自分たちの時間は始まったばかり。
 
 
 

 
 
 
〔音声化してくださった方〕
 
雨の中でひとりさん
雨の中でひとりさん 音声
 
 
ありがとうございます!
 
 
 
 

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