小さなおはなし

小石

小石

道端のなんでもない石をけとばし歩いてた あっちへころころ こっちへころり どんどん転がしていくうちに なんでもない石の外側は 雲母のように少しずつはがれてゆく そのたびに光をまとっているようにも見えた どんどんはがされ小さくなる石は 最後に家についたとき 思い切りきれいなものになっていた 僕はてのひらにそれを乗せ言葉を失う 言葉を失うけれど その石は言葉だったので なんでもない顔をして 僕のものになったんだ 僕が光らせたぼくの言葉の石だった

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黄金の糸

黄金の糸

春の陽の中には黄金の糸が混ざっている それはわたしたちの目をおだやかに眩ませる 黄金の糸は束になったりほぐれたり 陽の中でゆらめき遊ぶ 束になればいっそう太くきらめいて ほぐれればいっそうやわらかに遊ぶ 春風がざぁっと強く吹く日 ほつれていた黄金の糸はふつりと切れたりもする 切れはしになった糸は風に乗って どんどんどんどん飛んでゆく わたしたちの視界のはしに まぶしさを残すのを楽しむように 小さな子らは小さな手を伸ばして 黄金の糸切れをつかもうと飛び跳ねた つかんだて

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