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その8:家系ラーメンの攻略法

ここ2~3年、家系ラーメンが激烈に盛り上がっています。元々ラーメン専門店としては価格設定が安価かつ食べ応えがあることに加え、昨今では実力派店舗の出店が続くなど、その勢いは衰え知らずといった様相です。

その特長の1つとして麺のかたさ・味の濃さ・油の量を自分好みにカスタムできるという点があります。初めて訪れる店では「全て普通で」とオーダーするのが無難です。

しかし、それはあくまで「無難」なだけであり、個人の好みや食べ方に基づいたカスタムはそれぞれにあるはずです。今回はロジカル半分・主観半分といった構成比で、私の食べ方とそれに合ったカスタムを紹介します。

先ライス派なら「麺やわめ」は鉄則

ライスを食べる前提で話を進めます

ライス(白ご飯)に合うラーメンは多々ありますが、家系ラーメンはその筆頭格といえます。ラーメンの食べ方が人それぞれなら、ライスの食べ方も人それぞれ。ラーメンとライスを並行して食べる人、麺を食べきってから残りのトッピングでライスを食べる人、特に法則性なく気ままに食べる人。

図1 ライスが届いたら先行して作成する「家丼」

今回は私の食べ方、かなり序盤でトッピングを「おかず」にしてライスを食べきり、その後は麺と残りのトッピングでラーメンを食べます。そのため、そのためのトッピングを先にライスに移し、通称「家丼」(図1参照)を創ります。そんな「先ライス」スタイルをベースに述べます。

しっかり茹でた麺はのびない

「先ライス」をするなら、絶対に麺は柔らかめがオススメです。ライスを食べきるまでの間、麺を放置することになります。麺かためだとデンプンの糊化(α化)が不十分なため、麺の芯部に水分が入り込むバッファ(「余裕」や「余白」と捉えてください)があります。

そこにスープが入っていくんですが、スープは茹で湯と比べ温度が低いため糊化は促進されず、ただ水分として吸収されるだけなので、水分勾配(水分傾斜ともいいます)が低くなる、つまり麺の外側と芯との水分量の差が縮まるため、モッソリとしたコシのない食感になってしまいます。これが「麺がのびた」状態です。

対して、しっかりと茹でた麺は茹で湯を水分として十分に吸収しているため、スープが入り込むバッファがほとんどありません。そのため、ライスを食べるために麺を放置しても、その間に麺がのびてしまうという心配がないのです。永遠にのびないというわけではありませんが、少なくともお店が提供する大ライスを食べきる程度の時間なら、何ら問題ありません。

私が「先ライス派」になった理由

この間に、先述したトッピングをおかずにしてライスを食べます。全てのトッピングをライスと一緒に食べきる必要はなく、残ったトッピングは本来の役目であるラーメンのトッピングとして食べます。

これが逆、つまり麺を食べきった後にライスを食べるスタイルだとどうでしょう。ライスのためにトッピングをいくらか残すように麺を食べ進め、いざライスを食べる段階になった際、
・ライスに対してトッピング多すぎ問題
・ライスに対してトッピング少なすぎ問題

のいずれかが勃発する可能性があります。

「いやソレお前の加減次第やろ!」
と怒号が飛んできそうですが、ハイその通りです。
ただ、ご飯:おかずという図式で悩む方、そして何らかの法則を編み出す方は一定数います。それがQ&Aの形で分かりやすく明文化された例が、私も親交のある稲田俊輔(イナダシュンスケ)さんの質問箱にあります。

永遠のテーマ「ご飯:おかず」

幕の内弁当をどう食べるかで4時間も議論したご夫婦の質問に対し、稲田さんは、こう回答されています。

「世の中には二種類の人間がいる。幕の内弁当を真剣に考えて食べる人間とそうではない人間である」

これに当てはめると、私は「家系ラーメン店のライスを真剣に考えて食べる人間」となるのでしょう。また、稲田さんは幕の内弁当のおかずをこのように分類しています。

僕自身は、幕の内弁当をビールと共にいただく事が多いです。なので弁当の蓋を開けてまず行う事は、陣営を「ビールのつまみ軍」と「ごはんのおかず軍」に編成するという事です。

私は家系ラーメンのトッピングを「ライスのおかず軍」と「ラーメンのトッピング軍」に編成しているということになりますね。と言うと聞こえは良いですが、トッピングの過不足発生を恐れているだけかも知れません。

家系ラーメンの食べ方そのものから相当脱線してしまいましたが、家系ラーメンを食べる時はトッピングもライスも腹いっぱい食べたいよ!という方の中から、1人でも多く先ライス派に転じていただけると幸いです。

「味こいめ」で予防線を張っておく

またもや登場、麺とスープとの一体感

味の濃さは、なるべくなら「味こいめ」にすることを推奨します。これは、家系ラーメンのスープ製法の難しさに起因します。

一般的に多くのラーメン店では仕込み段階で味を完成させる、通称「取りきり」という製法を採用しています。しかし家系ラーメン店では、ある程度まで仕上がっているスープに更に豚骨や鶏ガラを投入し、それを炊きながら様子を見て使うという「呼び戻し」という製法が基本です。

スープのブレがあって当たり前

呼び戻しだからこそ得られるフレッシュな旨みがある一方、数時間ある営業中の味が安定しにくいというデメリットもあります。お客さんの入り具合によって、味が安定したり、あまりにもお客さんが殺到してなかなかスープの旨みが上がらなかったり、逆にお客さんがあまり来ないと煮詰まって旨みが必要以上に強くなってしまったりします。

我々食べる側は、どのコンディションのスープに当たるか、選ぶことはできません。強いて言うなら、通い慣れた店で自分が好みのコンディションのスープが出てきた時間を覚えておき、それに近い環境を再現する程度のことはできます。しかし先述の通り、お客さんの入り数で変動するため、完全な把握は不可能です。

味こいめを推奨するのは、もしシャバめ(旨みが弱い)のスープに当たった時、せめて味こいめにしておけば麺とスープとの一体感を担保できるという理由からです。スープがシャバいということは、麺の存在感ばかりが前面に来るので、それに負けないようスープを強くしておきたいのです。

濃すぎる時こそライス&卓上調味料

逆にスープがしっかりしている時に当たった場合、旨み過多になってしまいます。そんな時こそ活躍するのが、家系ラーメンのお供・ライスです。麺をすすった時に味が濃すぎるなぁと思ったら、そこに少量のライスを頬張ると口中で味のバランスがとれます。(私はこれが苦手なのでやりませんが)

また、トッピングをおかずにするスタイルを使わずとも、スープがしみた海苔や卓上調味料だけでライスが進むというメリットも生まれます。(図2参照)こういう時、卓上調味料の豊富さが重宝します。

図2 豆板醤を塗った海苔巻きライス

じゃあライスがなくなったらどうするのか?といえば、やはり卓上調味料です。基本に忠実な家系ラーメン店であれば、ニンニク数種類、辛味系(ペーストやラー油)と共に、酢やショウガが置いてあるはずです。(図3)

図3 王道家(千葉県柏市)のラーメン酢と刻みしょうが

どれだけ濃すぎるスープがでも酢を入れれば相当まろやかに変化しますし、ショウガを入れれば爽快感とシャキシャキ食感がダブルで加わるため、スルスルと麺が進むはずです。

ちなみに、多くの家系ラーメン店では、ラーメン提供後も味の調整をしてくれますので、「普通」でオーダーしておいて、薄かったら「濃くしてください」と言えば応じてくれます。「味こいめ」を多用するのは、家系ラーメンを食べ慣れてからで結構です。

「油多め」は単なる私の好み

「麺やわめ」はほぼマスト、「味こいめ」は慣れてきた方に推奨と、徐々に押しが弱くなってきました。最後の「油多め」はさらに弱くなり、本当にただの私の好みです。但し、一応は過去の経験を踏まえてのものですので、参考までに書いておきます。

とある家系ラーメン店で油の量を「普通」でオーダーした際、僅かな量しか鶏油が注がれていないラーメンが出てきました。まぁ油を食べにきてるわけじゃないから良いか、程度に考えてそのまま食べ始めたら、これが全然物足りない。

その逆で、別の店で同じく油の量を「普通」でオーダーしたら、鶏油でテッカテカのラーメンが出てきました。いやこれは流石に…と思って食べ始めたところ、鶏油の香りが非常に豊かで、スープの旨みもさほどマスキングされていないことに気付きました。

シンプルに油が多いのが苦手、という方もいらっしゃるでしょうから無理強いはしませんが、上記のような経験を踏まえて必ず「油多め」にしています。一度お試しいただければと思います。

番外編:トッピングでラーメン太り防止

「麺やわめ」の章でさんざん述べたトッピング。家系ラーメンはトッピングの種類が豊富なのも特長です。ライスのおかずとして適しているものも多々ありますが、ライスと麺を1回の食事で摂るという糖質過多な構成になることには間違いないので、ダイエットには大敵です。

そこで活躍するのがキャベツやワカメです。キャベツに含まれる不溶性食物繊維は便秘の解消に役立つため、糖質や脂質が皮下脂肪として蓄えられるのを防ぎます。

ワカメに含まれる水溶性食物繊維は糖質の吸収をおだやかにして、急激な血糖値の上昇を抑える上、その粘性によりお腹がすきにくくなるので、食べすぎそのものの防止にもなります。

食べる量や回数を制限するのではなく、ちょっとした工夫で太りにくくできる、そんなアイテムがあるのも家系ラーメン店の魅力の1つですね。


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