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読書レビュー

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#読書レビュー

太田匡彦『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(2013年)

以前からよく言われている、日本におけるペットの飼われ方の特殊性が知りたくて、この本を読んだ。

先進国の中でいわゆる「ペットショップ」が存在するのは日本だけ、ヨーロッパの動物愛護先進国では、シェルターと呼ばれる保護施設から、養子を取るような形で飼い始めるのが一般的らしい。そして飼い始める時も、ガラスケースに入った子犬を見て「可愛い!」「目が合った!」と衝動的に買うのではなく、毎日散歩ができるか

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バラバラ・バルトス=ヘップナー(ロコバント靖子 訳)『クリスマスの思い出 冬の炉端で』(原著1982)

ドイツ語の原著のタイトルを訳すと「クリスマスABC」となるように、主にドイツでのクリスマスの風習やその起源などについて詳しく書かれた本です。そこに著者の子供の頃のクリスマス期間の思い出や、クリスマス料理の紹介なども加えられていたりします。

夜が明ける前に早朝のミサに行く習慣などは、日本の大晦日の初詣に近い感覚なのかなーと比較したり、エリコのバラってどんなんかなーと思ってタイムラプス動画を見て「お

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銅冶英雄『3万人のひざ痛を治した! 痛みナビ体操』(2016)

変形性股関節症に引き続き、変形性膝関節症のことも調べたくて購入。

膝の関節の痛み方によって、やるべき体操をタイプ別に分けているところがちょっと新鮮でした。やり方は簡単で、たびたびテレビでも取り上げられてる有名な先生らしいので、たとえば以下の「金スマ」動画の31分以降とかから見てくれたら、この本を読まなくても大丈夫(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=4LZC

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飯田豊『テレビが見世物だったころ 初期テレビジョンの考古学』(2016)

日本のテレビの歴史は、戦後の1953年の街頭テレビの設置から始まったとされているが、本当にそうなのだろうか、というのがこの論考の出発点となっています。

実は戦前にすでに博覧会や百貨店などで、そして戦中ですら国家的プロパガンダ活動の一環として、テレビジョンの公開実験は行われていた。本書はその埋もれた歴史を丹念に掘り起こして詳述しています。そのクロニクルの過程で垣間見える著者の考察の断片が、知的好奇

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舞城王太郎『ビッチマグネット』(2009)

 先日、僕の出身中学校で、女子生徒がいじめを苦に列車自殺をしました。

 ニュース映像には、僕が高校時代、毎日通り過ぎた駅のホームに手向けられた花束が映っていました。少女の父親は僕と同い年らしく、もしかしたら中学時代の同級生かもしれません。

 

 自殺した少女自身と、いじめ問題については、ここでは触れません。

 

 残された家族や彼女の友人らについて、書いてみます。

   

 遺族や友

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パトリシア・コーンウェル/相原真理子・訳『検屍官』 (原書1990)

初めて海外ドラマの「ER 緊急救命室」を見た時、衝撃を受けた。医者という職業の過酷さのみならず、個々人のプライベート問題や仕事にかかわってくる社会問題までを幅広く、徹底的にリアルに扱っていたからだ。リアルというのは、実際にこういう人がいるだろうな、と強く思わせるという意味だ。たとえばジョージ・クルーニーが演じた小児科医ダグラス・ロス。一つだけネタバレすると、ある患者の少年が、どういう流れか忘れたけ

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永田和宏『タンパク質の一生 生命活動の舞台裏 』(2008)

自分の知らないことを知っている人はすごい。その知らないことを説明してくれる人はもっと素敵。しかも、わかりやすいだなんてさらに感動。あまつさえ、それが面白かったらもう尊敬のまなざし。この本の筆者はそういう人。『自然のおもしろさ、あるいは科学の醍醐味は、ひとつのことがわかると、それ以上に多くの謎や疑問が湧いて出てくるところにあると私は考えている。〈わかったこと〉以上に、〈わからないこと〉が湧き上がって

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佃隆『1日3回で、ねこ背がよくなる「姿勢の魔法」シャキーン!』(2016)

200ページ足らずの親書でシンプルな内容でしたが、かなりの感銘を受けました。

この本の結論は、著者が力点を置いた「天地人ポーズ」よりも、個人的には、50ページにある一行、カッコ内のわずか15文字に尽きる気がしました。

これはあまりにも素晴らしい唯一無二の真実(Truth)だと感じたので、この15文字のことを以下、Tと呼ぶことにします。もちろんここで引用してしまうことも可能ですが、それはさす

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