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高次脳機能障害 〜記憶障害(健忘症候群)について理解しよう〜

高次脳機能障害とは、病気や事故などの原因で脳が部分的に障害されたために、言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの知的機能に障害が起こった状態です。

その中の、記憶障害(健忘症候群)は、物の置き場所を忘れてしまったり、同じことを何度も話したり、質問してしまうなど、生活の中で支障が起こりやすいです。

今回は、高次脳機能障害における記憶障害(健忘症候群)について紹介していきます。

以前に、心理学観点から記憶のメカニズムについても紹介しています!

こちらも参考にしてみてください。

それでは、本日も学習していきましょう!


記憶障害(健忘症候群)とは?

記憶の障害、健忘症状を中核とする病態を健忘症候群といいます。

純粋には即時記憶や知的機能が保存されているものをいい、意識障害・注意障害・認知などを含みません。

典型的な健忘症候群であるコルサコフ症候群の特徴は、見当識障害、前向健忘、逆行健忘、作話、病識の欠如があります。


記憶に関連する脳の部位

近時記憶、エピソード記憶には、海馬や海馬傍回といった側頭葉内側のほか、視床、乳頭体、脳弓、前脳基底核などが関連しています。

これらを含むパペッツ回路は記憶に関わる神経回路です。

また、パペッツ回路の傍らには、情動に関わるヤコブレフ回路があり、両者が記憶の形成に関わっているとされています。

意味記憶には主に、前頭葉前方部が関与しています。

手続き記憶には、大脳基底核や小脳と大脳皮質前頭前野が関与しています。


記憶の分類

保持時間による心理学的な分類では、「短期(即時)記憶」と「長期記憶」に分けられます。

短期記憶はもう少し広義の概念として「作業記憶」があります。

保持時間による臨床的分類には、「近時記憶」と「遠隔記憶」があります。

再生の出力様式によっては、「陳述記憶」と「非陳述記憶」に分けられます。

記憶障害の主な原因

健忘症候群を引き起こす主な原因疾患は以下の通りです。

・頭部外傷
・脳血管障害
 くも膜下出血
 後大動脈領域の虚血性病変
 視床梗塞
 脳梁病変
・アルコール中毒
・薬物中毒
・脳腫瘍
・脳炎 など

記憶障害の種類

見当識障害
自分のいる場所、現在の日時を忘れてしまう状態

前向健忘(近時間記憶の障害)
新しい事柄の学習、記憶ができない、記銘力の障害

逆行健忘(遠時記憶の障害)
発症以前の記憶が想起できない。
より近い過去よりも遠い過去の記憶が保たれやすい。

作話
実際になかったことが、誤って追想され言語化される。質問に答え、妄想的な作話をする。
前脳基底核損傷で顕著にみられる。

記憶錯誤
過去の経験や出来事が誤った文脈の中で想起される。

病識欠如
記憶障害があることを認識できない。
そのため、障害がないように話したり行動する。


記憶障害の評価

評価前には、意識、注意機能、知的機能面の評価が必要です。

・スクリーニング検査
 改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
 ミニメンタルステート検査(MMSE)

・より詳しい記憶評価法
 ウェクスラー記憶検査(WMS‐R)
 リバーミード行動記憶検査(BRVT)
 三宅式記銘力検査
 ベントン視覚記銘検査(BRVT)
 聴覚的言語記憶学習テスト(AVLT)
 ROCFT


記憶障害へのアプローチ

見当識障害・近時記憶障害

日時、曜日、時間、住所、場所、入院日、発症日、原因疾患などの項目を繰り返し確認します。入院中であれば病室の目に入るところにカレンダーや病院名などを貼っておきます。

ノートに記録してもらうことも有効です。日付、場所、年齢、食事のメニュー、予定、一日の出来事などを書いておき、可能であれば再認を促します。

記銘

いくつかの物品を提示し覚えてもらい、1課題を挟んでから想起してもらいます。

逆行健忘

時系列に沿って回想してもらう場合と、回想を刺激する材料を用いて行う場合があります。あらかじめ家族に生活史を聞いておき、昔の写真などを持ってきてもらうなどしましょう。

展望記憶

記憶の補助手段として活用できます。

メモ、日記、パソコン、カレンダー、携帯電話、手帳に予定や日課を書き込む習慣をつけます。テープレコーダーやICレコーダーに録音してもいいです。

予定表や日課表を掲示しておきます。時計や携帯のアラームが定時に鳴らして確認する習慣をつけます。


今回、参考にした書籍はこちらです↓

https://www.amazon.co.jp/dp/4780911931/ref=cm_sw_r_as_gl_api_gl_i_VXS4QFXA2QZ24QCF3YVF?linkCode=ml2&tag=hase2424-22


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今回の記事は以上になります。

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