小さな頃から、僕はおばけが怖かった。"おばけ"と呼べばいくらか恐怖が薄れるだろうから、敢えて幽霊だとか怨霊だとか、厳つい呼称は使わないようにしているくらいには恐…
揺らめく空は、いつも頭上にあった。 それを水面が描く模様だと解したのは、気まぐれに境界から顔を出した四月のことだった。 世界は案外広くミドリ色。拓かれた視…
梅本千叶文
2024年5月22日 23:01
小さな頃から、僕はおばけが怖かった。"おばけ"と呼べばいくらか恐怖が薄れるだろうから、敢えて幽霊だとか怨霊だとか、厳つい呼称は使わないようにしているくらいには恐れていた。 とはいえ、僕は創作物としてのホラーは大好きだった。映画やアニメ、漫画など、ホラージャンルは自ら進んで鑑賞してきた。 中でも、僕は都市伝説に強い関心があった。都市伝説は、それが生じるまでの過程と時代や地域に因る変移こそが
2024年4月29日 00:09
揺らめく空は、いつも頭上にあった。 それを水面が描く模様だと解したのは、気まぐれに境界から顔を出した四月のことだった。 世界は案外広くミドリ色。拓かれた視界に、これまで漂っていた空間の狭さを知る。この状況を、井の中の何と言ったか。 ぴちゃり――波紋、その始まりに飛沫。 飛び出して行ったのは、ああそうだ。蛙だ。 不細工な手足、不細工な顔付き。愛し難い見た目に、愛し難い鳴声。くす