梅本千叶文

「春告教育」代表。小学生対象の勉強・スポーツの指導、障がい児の保護者の相談、所属お笑い…

梅本千叶文

「春告教育」代表。小学生対象の勉強・スポーツの指導、障がい児の保護者の相談、所属お笑い芸人のマネジメント、ライティングなど幅広く活動中。

最近の記事

【小説】ホラー映画を観た後に。 『自伝 柳葉魚の卵』より

 小さな頃から、僕はおばけが怖かった。"おばけ"と呼べばいくらか恐怖が薄れるだろうから、敢えて幽霊だとか怨霊だとか、厳つい呼称は使わないようにしているくらいには恐れていた。  とはいえ、僕は創作物としてのホラーは大好きだった。映画やアニメ、漫画など、ホラージャンルは自ら進んで鑑賞してきた。  中でも、僕は都市伝説に強い関心があった。都市伝説は、それが生じるまでの過程と時代や地域に因る変移こそが魅力である。つまりは、複数の創作者が一体となって成立していく作品なのだ。  例

    • 【短編】おたまじゃくしの夢

       揺らめく空は、いつも頭上にあった。  それを水面が描く模様だと解したのは、気まぐれに境界から顔を出した四月のことだった。  世界は案外広くミドリ色。拓かれた視界に、これまで漂っていた空間の狭さを知る。この状況を、井の中の何と言ったか。  ぴちゃり――波紋、その始まりに飛沫。  飛び出して行ったのは、ああそうだ。蛙だ。  不細工な手足、不細工な顔付き。愛し難い見た目に、愛し難い鳴声。くすんだミドリの生き物は、同じ色の背景と絶妙に馴染まない。  しかし。そんな醜い侵

    【小説】ホラー映画を観た後に。 『自伝 柳葉魚の卵』より