マガジンのカバー画像

僕と彼の恋

92
僕と俺が描くbl恋愛系小説
運営しているクリエイター

記事一覧

Sweet Scarlet Heart  前編

Sweet Scarlet Heart 前編

残暑が厳しい時期も過ぎ、だんだんと寒さが際立つようになってきた秋の暮れ。それを知らせるように緑の木々も枯れてきて、遠くに見える山には赤と黄色の色が目立ち始めた

彼と付き合い始めてから初めての秋だ。そろそろ、彼と紅葉を見に行ってみたい。そんな気持ちが湧いてきた

だが、最近彼の様子が少しおかしい

朝、一緒に学校に向かう時は眠そうにしていたり、授業もたまに寝ている。帰りはHRが終わったらすぐに出て

もっとみる
時雨月

時雨月

深夜の2時

雲が空を覆い、いつもに比べて闇の密度が濃い夜だ
10月になり、この時間は冷え込むようになった
外で鳴く鈴虫の声が静かな部屋の中にかすかに響いていた

「ねれねぇ」

そんな中、俺はなぜか目が冴えて寝れなくなっていた。眠いはずなのに目を閉じても眠れないのだ。俺の腕の中にいる温かい彼はとっくにすやすやと眠っている

こうなってしまっては起きていようかと思い始めてきた。幸いな事に明日は休み

もっとみる
淡い光に咲く

淡い光に咲く

赤、橙、黄

小さな光に照らされるその顔は

儚げで、優しくて、色気を感じた

ゴクリと、喉がやたらと大きな音をたててしまう

噛みついてしまいたい

8月も終わりを迎え、9月になったというのに残暑が厳しくまるでまだ夏真っ盛りのようだった。それでも、朝と夜は涼しい風が吹き、どこか過ごしやすい気温へと変化してきていた

そんな事を考えながらも、涼しい部屋から出る気の一切ない俺は、のんびりと仕事疲れを

もっとみる
それは君の中に

それは君の中に

昔によく考えていた事がある

大きくなったら、素敵な人と一緒に綺麗な未来を、輝かしい毎日を送るんだと。きっとその世界は幸せで満ちていて、僕も相手も笑顔で楽しそうにしてるんだ。時には苦しい事やつらい事もあるけど、二人でそれを乗り越えて笑い合うんだ、と

そんなおとぎ話のような事を考えては未来に期待を馳せていたのに、そんな事を考えるのすらやめたのはいつからだったのだろう

高校三年生の夏、僕と彼は大学

もっとみる
あなたの隣に

あなたの隣に

*これは一歩 前後編の後日談となっております。まだ読まれていなくても問題ありませんが、読んでいない方は先にそちらをお読みになるとより理解が深まると思われます

「え?新しいブレスレット?」

彼がキョトンとした顔で俺を見ている

「そう。説明したけど、君が本来付けてたサンストーンのブレスレットはあいつに壊されちゃっただろ?どうせなら新しいブレスレットを買いたいと思ってな」

それに勝手に俺が借りた

もっとみる
一歩 後編

一歩 後編

*このお話は一歩 前編の続きになっております。まだ読んでいない方は、先にそちらをお読みになる事を推奨致します

懐かしい温かさと独特の浮遊感が僕を包む。これは....夢の中なのだろうか。目を開けると彼の姿があった。だが、どこか幼い雰囲気を感じた。よく見てみると懐かしいブレザーを着ている。つまり、高校生の彼だ

「お前の事が好きだ」

......そうだ。あの時、彼の家で僕はそう告白された。今でもこ

もっとみる
一歩 前編

一歩 前編

*このお話は君との距離 前後編の続きになっております。まだ読んでいない方は先にそちらをお読みになる事を推奨致します

コンコン

誰かが僕の部屋の扉を叩く音がする。それに返事をする気力は今の僕にはない

「おい、いるんだろ。俺だ」

友人の声が扉の向こう側からする。最近よく来るようになった

「.....入るぞ」

少し間が空いた後、友人はガチャリと扉を開けて入ってきた

「いつまでそうしてる気だ

もっとみる
色、褪せて

色、褪せて

「........」

何をするわけでもなく、自分の部屋の天井を眺める。思い返すのは河川敷での出来事ばかりだ

あれから二週間が経った。僕の怪我は少しよくなり、巻かれている包帯は少なくなっている。心の傷はまったく癒えないが

久しぶりの実家だというのに、懐かしいという感情は湧かない。彼の言葉が僕の心に黒いよどみとなって重くのしかかる

話し合ったってしょうがない

彼は僕に対してそんな事を思ってい

もっとみる
戻って、こないで

戻って、こないで

ふと目を覚ますと、涙が出ている事に気づく。一人では広く寂しいベッドで身を起こした。いつも側にあった当たり前だったはずの温もりは無い

あれから一週間が過ぎた。彼はあの後、実家で療養する事にしたそうだ。河川敷での出来事の後、すぐに準備をして俺に何も言わずに帰っていった

ずっと思い起こされるのは、彼の酷く苦しそうな、悲しそうな顔と距離を置かせてという言葉。そして、手に今でもズキズキと疼く冷たい痛みだ

もっとみる
君との距離 後編

君との距離 後編

*この話は約束、飾りに願いを、君との距離 前編の続きになります。そちらの話を先に読む事を推奨致します。また、シリアスな展開があるので苦手な方はご注意ください

ドッドッドっと音を立てて走っている。それが俺の鼓動の音なのか走る音なのかわからないくらいには大きな音だ

「病院内ではお静かにお願いします!」

すれ違った看護師の方に注意される。申し訳ないと思うがそれを気にするほどの余裕が今の俺にはない

もっとみる
君との距離 前編

君との距離 前編

*この話は約束、飾りに願いをの続編になります。まだ読んでない方はそちらを先にお読みになる事を推奨致します

また、シリアスな展開や流血表現が含まれるため苦手な方はご注意ください

ここは俺達の家から少し離れたショッピングモール。中にある喫茶店である人と俺は待ち合わせをしている。そろそろ来るだろうかと思いながら頼んだコーヒーを口に流し込む

「よっ、久しぶりだな」

そんな事を思っていると、テーブル

もっとみる
飾りに願いを

飾りに願いを

クリスマスまであと数日。外の街並みもイルミネーションだけでなく、赤や緑、白といった色の旗や装飾が多く見られるようになった

「クーリスマスが今年もやってくる〜♪」

鼻歌を口ずさみながら僕は一人、家でクリスマスツリーの飾り付けをしていた。この時期になると僕達の家でもクリスマスモードになる

いや、僕が勝手にしているが正しい。彼もよく手伝ってくれるが、恐らく彼の性格上僕がやらなければツリーやリースは

もっとみる
約束

約束

手紙が届いた。差出人の名前はない

「あ、まただ」

数日前から新聞や広告チラシに混ざってある手紙が送られてくるようになった。宛名も無く、手紙に書いてある事もよくわからないのだ

「今日は...」

見つけられるかな

この一文だけが白い紙に目立つように書かれている

「....気味が悪いんだよね」

悪戯だとは思うが、ホラーが苦手な僕としてはあまり見たくない。だからいつもすぐに捨てている、今日も

もっとみる
一緒に休もう

一緒に休もう

チュンチュン...

外から鳥がさえずる声が聞こえる、どうやら朝がやってきたようだ。僕と彼の体温で暖かい世界から冷えた世界へ体を動かす、冬に近づくにつれこの移動が一番大変だと思う

「ん....」

僕がモゾモゾと動いた事で彼も少し声をあげるがすぐに夢の世界へ戻ったようだ

「ふふ、おはよう。まだ寝てていいからね。さて、僕は朝ごはんの用意しようかな」

どちらかが先に起きた方が朝ごはんを作る。そう

もっとみる