見出し画像

一緒に休もう

チュンチュン...

外から鳥がさえずる声が聞こえる、どうやら朝がやってきたようだ。僕と彼の体温で暖かい世界から冷えた世界へ体を動かす、冬に近づくにつれこの移動が一番大変だと思う

「ん....」

僕がモゾモゾと動いた事で彼も少し声をあげるがすぐに夢の世界へ戻ったようだ

「ふふ、おはよう。まだ寝てていいからね。さて、僕は朝ごはんの用意しようかな」

どちらかが先に起きた方が朝ごはんを作る。そういう決まりにしたのだ。まあ二人揃って寝ている場合が多いのだが

「う〜ん....ふわぁ.....うん、僕もまだ眠いや」

ふわふわした頭で目を擦りながら、自分もまだ眠り足りない事に気づく。どうせなら"あれ"を先に用意しようか

「この前新しく買ったんだよね、楽しみ」


数十分後

ふわりと深みのある独特の香りが俺の鼻に触れた。この匂いは...。匂いに釣られるように俺は目を覚ます。きっと彼が用意してくれているのだろう

ウトウトした頭をなんとか働かせてキッチンへ向かう。案の定、そこには彼が立っていた

「おはよう」

「あ、おはよう〜」

彼が俺に気付くと笑顔で迎えてくれる。うん、いつ見ても可愛い。俺はそのまま彼に抱きついて頬にキスをした。最近、彼はこの程度ではいい反応をしてくれなくなったから少し寂しい

「ふふ、やっぱり起きちゃった?」

「まあこの匂い嗅いだらね」

抱きしめたまま彼が持っている物を見る。コーヒーだ

「僕も今日はなんだか眠くて朝ごはんより先にこれを飲みたくなったんだ」

「俺もまだうとうとしてる」

「それでも僕にキスしてくるんだ、流石だね。眠いなら一緒にコーヒー飲む?」

「そうしようかな、せっかく用意してあるみたいだし」

彼の近くにはお揃いのマグカップが既に用意されてある。中身こそ入ってないが、きっとマグカップが俺の物もある時点でそういう事だろう

「あ、わかっちゃった?まあ君も飲むかなと思ってね。ソファで休んでてよ、持ってくから」

「おう、ありがとう」

彼に言われるままリビングのソファに体を預ける。あ〜、また眠気が襲ってきた。このまままた寝てもいいかもな、まぶたが重くなってきたのを感じているが、彼が用意してくれたコーヒーを飲むまでは眠るに眠れない。なんとか意地で起きようとしていた

「ふふ、本当にまだ眠そうだね。はい、コーヒー」

「お〜、待ってた」

まだ白い湯気が立つ暖かいコーヒーを持ってきた彼が俺の様子を見てくすりと笑う。そんな彼を愛おしいと思いながら渡されたコーヒーを一口

香ばしくすっきりとした苦味、コーヒー特有のキレのある味わいに体が反応していく。なんだか少し優雅な朝を送っている気分だ、忙しい朝だとこうはならないからな

「うん、美味しい。なんだか前と変わった?前はもう少し酸味があったような」

「うん、この前のコーヒー豆と変えたんだよね。酸味を少なくしてキレがある豆にしてみたの」

「なるほどね」

うん、これはこれでまた美味しい。コーヒーは豆や淹れ方によって味が変わるから毎回楽しみではある。そんな事を考えながらもやはり眠気はそう簡単に引いてはくれない

「ねえ、俺の隣に来て」

「ん?いいよ」

彼が俺の隣に座ってくれた

トサ

俺はそのまま彼の肩に頭を置いた

「肩貸して、眠い」

「ふふふ、うん。眠そうだもんね」

「あ〜、幸せ。今日はお互い休みだししばらくはこのままでもいい?また寝ちゃいそうだけど」

「もちろん。こんな日くらいゆっくり過ごそう」

彼の優しい雰囲気にまた一段と眠くなってきた時、ふと目前にある彼の首筋から匂いがしてきた。彼の匂いだ、俺はそのまま彼の首筋に鼻を寄せる

「ひゃっ!な、なに、突然!」

彼が少し驚いたような声を出した、可愛い。ただ、せっかく預けていた肩が離れてしまった

「いや、君の匂いがいい匂いだったからつい」

「くすぐったいからダメ!それにコーヒーの方がいい匂いでしょ!」

「そりゃあコーヒーの匂いも好きだけど俺は君の匂いも好き!」

「やだ!」

「やだってなんだよ。いいだろ、別に。君だって俺の匂いとか言って嗅いでくるくせに」

「うっ...」

「隙あり!」

「わあっ!」

俺は彼に覆い被さるように抱きついた。流石にこれには彼も恥ずかしがって顔を赤らめている、可愛い。もっとそんな顔をしてほしくなる

「それから、こうしてギューってして髪の匂い嗅ぐのも俺は好き」

「うぅ...恥ずかしいよ」

「ふふ、可愛い」

悪戯心で彼の赤い耳を少し噛んだ。ふにゃりとした感触だ

「ひっ....。変な声出るからだめ...」

....なんだかいけない事してる気分になってきた、流石に申し訳ないな。でも、俺はわかった事がある

俺は彼が大好きで、彼と居ると幸せなんだという事だ

「俺、幸せだ。君は?俺といて幸せ?」

「え?な、なに?突然。そりゃあ......幸せに決まってるじゃん」

「はは、よかった」

俺はそう言って彼にキスをした、今度は口を合わせしっかりと

「....ん、僕も毎日が幸せだよ。君が作ってくれるご飯とか、こうしていろんな事話してる時とか、君といると僕はずっと幸せを感じてる」

彼の言葉に俺はまた心が踊ってしまう。彼もまた、俺がきっと好きで好きで仕方ないのだろう。ああ....本当に彼と出会えてよかった

「ねえ、今日は一日こうして一緒に休んでいよう。俺も何よりも君が好きだから」

静かに笑って頷く彼をようやく冴えてきた頭で理解する。こうしてゆっくり過ごす日は大切だ


こんな幸せな日常をくれる彼を守るのだ、絶対に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?