＃45 社会人編　〜ネットショッピングの末路〜

そう、私は生粋のめんどくさがりである。

こんなこと、堂々というようなことでもないし威張れるようなすごいことでもない。

そんな私が最近味を占めたように手を出しているが、何を隠そう“ネットショッピング”である。

それまでも、インターネットの某アメリカ大手ネットショッピングサイトには、色々な買い物でお世話になっていたものの、せいぜいお店で買えない物が売っているからとか、セールになっていてネットの方が安いから程度の認識だった。

その認識は働き始めて少し経つを変化してくる。

まず、何より買いに行くという手間が全て省かれるのだ。

確かに見ることができず、実際のものが本物なのかどうかさえ、インターネットでは判断できないという欠点がある。

だがその欠点を補ってなおあまりある魅力がこれだ。

だって、わざわざお店まで行かなくていいのだ。どんなものか分からなけれな不安にになるが、それが日常的に買っているものだったらどうだろう。

このトイレットペーパーは、いつものスコッティと何か違う！！…とはきっとならないと思う。

その他日常的によく使用しているもの、食べたり飲んだりしている商品に関しては、インターネットでは疑う余地はないのだ。

だったら、普段機械的に買っている日常の生活用品は全てネットショッピングにしてしまえば、その分生活が時短できるというわけだ。このメリットは大きい。

そして、もう一つ大きなメリットとして、品揃えである。

ネットで扱っている商品の量は一般的などんな店よりも多いと思う。そこが、なんとも素晴らしい。

だって、ネットで検索すればどんなものだって大抵見つかる。

ねじの穴に合う変なドライバーも、コーヒーメーカーに適したフィルターも、コンビニでは何故か売られなくなっていた飲み物も、全てネットでは扱っているのだ。

そんな風にして、私の日常のありとあらゆるものをインターネットで購入するようになっていったのだ。

そしてそんなことをしていたある時、事件が起きるのだ。

いつものように、必要な日用品を買おうとネットショッピングをしていた。

そこで、お気に入りのドレッシングがちょうど切れていたことを思い出した。

このドレッシングがなかなかの強者で、どんな野菜だって美味しく食べられるほどの効果を発揮する商品でありながら、未だかつてどのスーパーにもコンビニにも売っていた試しがない。

もしかしたら業務用の商品を扱っている店に行けば買えるかもしれないが、いつもわざわざ足をその店まで運ぶのもめんどくさい。

そんな美味しいドレッシングが、ネットでは普通に売られている。

これはまた買わなければならない！というよくわからない使命感に駆られ、いつものように購入画面に映る。

しかし、そこで指がはたと止まる。

いつも購入していたのは200mlのドレッシング1本だ。でもこれだけ消費するのなら、ある程度大きいものでもいいのではないだろうか。

と、そんな謎の理論が頭の中をかけめぐり、なんといつもは見逃していた1000mlのバージョンの購入ボタンを押していたのだ。

なぜそうしたのか、その後どうやって購入完了画面まで持っていったのか、実の所私もよく覚えていない。

だが、1000mlというたいそうな量のドレッシングを購入してしまったという興奮感だけは、私の心をざわつかせていた。

そしてドレッシングがいざくると、その大きさにびびる。

1000mlなのだから当然だが、これをどうやったら消費し切れるのかというほどでかい。

試しに、サラダを買ってきてかけてみる。

…全然減らない。

当たり前だ。そもそも一回のサラダにかけるドレッシングの量なんてたかが知れている。それも一人暮らしで1000mlのドレッシングを買うなんて正気の沙汰ではない。

現実的な頭に戻り冷静に考えてみると、自分の愚かさにだんだんと頭痛がしてきた。

しかし、頼んでしまったものは仕方がない。その日から私のドレッシング消費生活がはじまった。

ただいかんせん1000mlは強敵で、サラダにかけどもかけども減っている感じはしない。後悔もいいとこである。

そうしてドレッシングもようやく3分の2ほどまで減り、ひと月ほど過ぎたある日、唐突に玄関のチャイムがなった。

「あれ、なんだろう？」

と出てみると、宅配ですという声。はて、私は最近なんも頼んでないぞと首を捻る。

そして、とりあえず宅配物を受け取る、重い。こんな重さのものを注文したかなとまた首を捻る。

そうしてなんだか嫌な懐かしさのある重さのある宅配物を開けて出てきた物…そう、それはあの1000mlのドレッシングだった…

？！なんでこれがまた送られてくるんだ。ただでさえまだ消費しきれてない一本目がある。というか、私は二本目なんて注文した覚えはないぞ、新手のネットウイルスかなんかか。

と半ばパニックになりつつ、インターネットで某ネットショップのマイページへととぶ。

するとなんということでしょう、普通にドレッシングは購入されたことになっている、なぜ？

そうしてよくよく自分の購入した時に概要を見ていくと、どうやら私は興奮のあまり、ドレッシングの“定期購入欄”にまさかのチェックを入れていたらしい。

ドレッシングの定期購入、聞いたこともなければしている人を見たこともない。

しかし、現にここに定期購入をしたばかがいるのだ。

自分の愚かさをまさか再確認するとは…と、新たに送られてきた1000mlの素レッシングと、3分の2ほど残ったドレッシングのボトルを両脇に抱え、私はこれをどう消費しようかと、途方に暮れるのだった。