【小説】たぶん、それはきっと愛。(第4話)
「久しぶりー!やっと会えたうれしい♪」
「うん、私も!ほんとめっちゃ久しぶりだよね♪」
土曜日の昼前、予定通り、私は由奈と約束の場所で合流した。
「由奈また綺麗になった?」
「えー、そんなことないよー。けど、うれしい笑 美奈子はちょっと痩せた?」
「うん、ちょっとここのところ仕事忙しかったからあんま食べれてなくて、確かに痩せたかも。」
「そっかそっか。大変だったんだね。」
「ううん、それは由奈も同じでしょ!やっと最近落ち着いたから今は大丈夫!」
由奈はほんとに綺麗になったと私は思った。
肌ツヤもいいし、何よりほかほかとあたたかな幸せオーラが身体全体から溢れ出ている。
「とりあえず、お昼混んじゃう前に行こっか!」
そう言って、電車で来た由奈を、私の車に乗せて、以前、一緒に見つけた2人のお気に入りのエスニック料理店に向かう。
「あそこ、ほんとおいしいよねー!私あそこのタイカレー大好きだもん!
「うんうん、それにお庭も綺麗に手入れされてあって、お花とか、緑とか見ながら食べれるのもさらによきだよね!」
「うんうん、今日はそこで食べて、そしていつもの喫茶店コースかな?笑」
「そうね、結局いつもそうなっちゃうよね笑」
そんな話をしているうちに、そのお店についた。よかった。まだ混んでないみたいだ。お店の中に2人で入って、庭がよく見える窓際の席を選んで座った。由奈はお気に入りのタイカレーを、私もお気に入りの大きなエビが入ったフォーを注文した。
「めっちゃ久しぶりじゃない?」
「うん、ほんとだよ!半年ぶりくらい?」
「そうそう。だってさ、前会ったときって、由奈が元彼と別れたあとすぐぐらいじゃなかった?」
「やだー。そうじゃん。もはや懐かしいんだけど笑」
「懐かしいとか、まだ半年しか経ってないじゃん笑」
「そっか、そうだよね笑 いや半年間いろいろあったわ笑」
そう言われて、私は目の前に置かれたお冷を一口ゴクリと飲んでから、素早く切り出した。
「由奈昨日そういえば、報告があるって言ってたけど、、。」
「あぁ、そうそう!含んだ言い方してごめん。
でも一応報告かな!半年前に会ったときさ、いい人かも、みたいな話してた人いるじゃん。」
「あー、うんうん、あの合コンの人でしょ?まだわかんないからって詳細は秘密って言ってた人じゃない?笑」
「そうそう、秘密にしてたやつ笑 その人とさ、来月結婚することになりました!」
「やっぱり」という言葉が顔に出ないよう急いで、精一杯の笑顔をつくる。
「えー、おめでとう!!ほんとよかったね!!
ん、でもさ結構急展開じゃない?籍入れるの。だって、さっきも言ったけど、半年前会ったときって、ちょうど前の彼氏と別れたばっかで、、みたいな話も一緒にしてなかったっけ?」
「そうそう、そうだったんだけど、まぁいろいろあってさ、これもまだ言おうか迷ってたんだけど、、、私実はお腹に子どもできたの。今、妊娠3ヶ月。まぁ、いわゆるデキ婚てかんじ?笑」
「えーーー、まじ?さらにおめでとうじゃん!!」
「うん、ありがとう!だからいろいろあってバタバタしてたんだよね笑」
「そうだったんだ。全然気がつかなくて、、、ごめん。てか今日も私と会ってて大丈夫?」
「うんうん、それは全然!美奈子には絶対会って報告したかったし!」
「そう言ってくれたらうれしい!てかさ、今日普通にここ来ちゃったけど、つわりとかは大丈夫なの?」
「それがさ、私、全然平気で笑 生理こないこと以外まったく今までと変わりなしってかんじ?笑 聞いたら、お母さんも全くなかったらしいし、遺伝かな?笑」
「そうなんだ!それはよかったね!」
そのタイミングで店員さんが、料理を持ってきた。
「うわーおいしそう!食べよ食べよ!」
そう言って互いに料理を食べはじめる。
たしか、半年前に、由奈から連絡がきたとき、彼女は3年付き合った彼氏に振られて、かなりショックを受けていた。積もる話を受け止めよう、由奈を精一杯慰めようと意気込んで、ちょっと贅沢なディナーのお店を予約して、当日に会ったとき、由奈はまるで失恋などなかったようなケロッとした顔で現れた。
「そういえば、ほんとあのときからこうなる運命だったんだろうな〜。」
「運命感じたの?」
「ううん、全然笑 だって光輝、全くしゃべらなくて、面白くなかったんだもん。」
「でも顔はタイプだったんでしょ?」
「まぁね笑」
由奈の旦那さんになる光輝さんとは、元彼に振られ、ショックを受けすぎていた由奈をみかねた、由奈の会社の先輩が連れて行った合コンで出会ったらしい。
「最初に前話した合コンで会ったときはさ、なんでその場にいるんだろうって思うくらい、光輝だけその場で浮いてたんだよね。何もしゃべらないし、、。けどさ、私も正直、失恋してすぐだったから、全然気持ちが乗り気じゃなくて、、そういう意味で浮いてる者同士、通じ合うものがあったのかもね、、。」
「でもそれで、どうやって進展したの?」
「いや、それがさ、その合コンの帰りに、偶然、帰る電車が同じで、最寄駅も同じだったのよ。ちょっと気まずかったんだけど、でも逆に、もう会うこともないからいいか!って思って、話すことも特になかったし、元彼と別れたうっぷん話を、光輝にぶつけたのよ。」
「それで?」
「そしたら、光輝さ、別に嫌がる顔1つせずに、うんうんて、あいずちうちながら、ずっと聞いててくれるわけ。絶対話聞いてないだろって思ってたんだけど、そのあいずちのタイミングが絶妙で上手でさ、最寄駅に着いた頃には、私泣いちゃってて、、。でも背中さすって大丈夫、大丈夫って言って、家の近くのコンビニでハーゲンダッツ買ってくれてさ、家まで送ってくれたんだよね。」
「それで、家でそのまま成り行きで?笑」
「になるかな、って思ってたんだけど、家の前で彼さ、携帯開いて、力になれるかわからないけど、またつらかったら連絡してって言って、とりあえず連絡先だけ交換して、普通に帰って行ったの。」
「不思議な人というか、いい人なんだろうね。」
「うん、その背中見送りながら思っちゃったんだよね。あぁ、私この人と結婚するんだろうなって。というか、逃しちゃいけないって。」
由奈は、学生時代から長年一緒に過ごしてきた中で、彼氏を途切らしていたことがない。
失恋しても、すぐどこからともなく新しい男を捕まえてくる。今回だって例外じゃない。私が由奈の失恋を癒す計画を練っている間に、光輝さんという新しい存在との恋愛のスタートを切っている。恋愛はスタートダッシュが肝心と話す由奈の最初のクラウチングスタートからの走りだしは誰よりも速い。
「それでね、そんなこと思っちゃったもんだから、そこからは早かった。私からまたごはんに誘って、何回かデートして、付き合おうって話も私から切り出して、、。」
「光輝さんは、全然おっけーだったの?」
「うん、最初は何するにしても反応薄すぎてさ、何食べたい?って聞いても絶対、由奈の食べたいものでいいよっていうし、デートしてて、どこ行きたい?って聞いても絶対、由奈の行きたいところに着いていくよっていうし、付き合おうって言った時だって、うん、由奈がそう思ってくれてるのならって。全然張り合いないじゃんて思ってたんだけど、、。」
「けど、、。」
「それがよかったんだと思う。ほら、私頑固だし、主張強いし、おしゃべりじゃん?だからさ、逆に何の主張も激しくなくて、無口で、スポンジみたいに何でも吸い取ってくれるんだよね、光輝。」
「スポンジ、、、。」
「うーん、うまい例え見つからないけど、観葉植物みたいなかんじ?光輝はさ、太陽の光を浴びて、勝手に自分で光合成して、おいしい空気作ってくれるのよ、それを私は吸うだけでいい。みたいな。存在自体が空気。みたいな。」
「空気か。」
「そう空気。たしかに張り合いはないんだけどさ、一緒にいると、元彼みたいに気を張らなくていいっていうか、ありのままの自分でいられるっていうか。たぶんもう、気づかないうちに、光輝がいないと無理みたいなかんじになってたんだよね。たぶん。でも別に一緒にいたからと言って何があるわけでもないし、別に何とも思ってないつもりだったんだけど、、あっ、基本無口だからね笑 でもさ、光輝が、2週間くらい会社の研修で会えなかったことがあってさ、そのとき私、寂しさと不安で仕方がなくなってて、そのときに思ったんだよね。いつのまにか光輝が、私にとってはなくてはならない存在になってるって。」
「そっかそっか。空気ね。でもきっと、光輝さんにとっては、栄養となる太陽の光が由奈の存在そのものなんだろうね。」
「そうそう。私はそうだろうなって思ったらうれしいし、今後もそういう関係性で2人で過ごして行きたいなって思ってる。」
気づいたら、私が食べていたフォーがもうあと、大きなエビだけを残してなくなっていた。私は基本食べるペースが異様に早い。それとは逆に由奈の食べるペースは遅い。
目の前の由奈が注文したタイカレーは、まだ半分以上残っている。
「でも、それでよくこんなスピーディーに結婚までたどり着いたね。だって、相手からグイグイくる感じでもないでしょ。」
「うん、そうなのよ。年も2つ下だしね。でも、私もね、なんだかんだ女の子だし、付き合うみたいなのは私からだったとしても、プロポーズとかはね、やっぱりしてもらいたいなって思ってたんだけど、、。」
「思ってたんだけど、、?」
そう言いながら最後に残った大きなエビに箸をつける。私は最後に好きなものを取っておくタイプの人間だ。
「思ってたんだけど、、。もう私29でしょ?もとから結婚願望強かったし、子どもだって最低2人は欲しいと思ってたからさ。」
「うんうん。」
箸で掴んだ大きなエビが宙に浮いている。
「だから気長に待ってるわけにもいかなかったの。私はもう付き合うって決めたときから、彼と結婚するっていう選択肢以外考えられなかったし、、結婚したら、30までには絶対に1人目は産みたかったの。」
「選択肢」という言葉に反応してしまって、私は宙に浮いたエビをスープの中にぽとんと落としてしまった。
「だから、その選択肢しかなかったから、ここだけの話、彼に嘘ついたの。」
「嘘?」
「付き合ってしばらくしたタイミングでさ、自分の排卵日を事前にチェックして、けど、彼には今日は安全な日だから、避妊はしなくていいって嘘ついて、、そして今に至るってわけ。」
「え、プロポーズ願望は?」
「あったんだけどさ、シンプルに今後のこと考えたら、そんなことより、光輝と幸せな家庭つくっていくことの方が優先だなって。
だから結局、妊娠がわかって、光輝にそれを伝えたときに、おめでとう。うれしい!そしたら結婚しようかって!」
「それだけ?」
「うん、それだけ。だけどうれしかったの。もちろん、光輝が受け入れてくれない不安もちょっとだけだけど、少しはあったから。」
「そっか、、。でも、とにかくおめでとうだね!」
「ありがとう!」
そう言って、由奈がまだ半分以上残ったタイカレーにスプーンをつける。私が食べていたフォーのお椀の中で、さっき置いたエビがスープの上で、ゆらゆらと浮かんでいる。
由奈には光輝と結婚するという選択肢があった。
そして由奈には光輝と結婚すること以外の選択肢がなかった。
状況も場所も違えど、私がピルを飲んだときと似ている。そう思った。
由奈は口には出さないけれど、私と同じように暗闇の中を彷徨っていたはずだ。
由奈の実家は、名の知れた大きな企業を経営していて、代々社長の座は家族経営で受け継がれ、3代目の社長が、由奈の父だ。
伝統を重んじる家庭で育った由奈はよく、まだ20代もはじまったばかりなのに結婚結婚て、家がうるさくて、、。そう言って実家を出て一人暮らししていた。離れたとはいえ、かなりのプレッシャーはかけられていたはずだ。
それに、周りの友人も次々に結婚していっていたし、もともと、早くから結婚願望の強かった由奈だから、余計にその状況も相当しんどかっただろう。
だからこそ、その由奈の前に現れた光輝との結婚という選択肢は、由奈にとって、これと言ってない、とても大切な選択肢だったに違いない。
周りから見たら、ちょっと強引だと思われるかもしれないけれど、その選択肢を、しっかりと逃さずに掴んだ由奈に、もはや尊敬の念さえ抱きながら、私はスープの上で泳いでいるエビを逃さずに箸で掴んで、口に頬張った。
「おいしかったねー!」
いつのまにか、由奈のタイカレーのお皿も綺麗に空になっている。
私たちはその後、デザートに2人とも杏仁豆腐とチャイを頼んだ。
おいしく味わいながら、由奈の怒涛だった両家挨拶の話や、結婚式はまだせずに籍だけ入れることや、2人で住む家を今悩んでいる相談などをして、店をあとにした。時刻は14時を過ぎている。だいぶ長居してしまった。
「このあと、どうする?」
「うーん、ちょっと今日このあと実は夕方から旦那と2人で、物件見にいく予定あってさ!」
「そうなんだ!ごめんごめん長居させちゃったね。」
「ううん、こちらこそほんとに会って話できてよかったよ!こっちこそ私の話ばっかでごめん。」
「ううん全然!ほんとこれから新しいスタート大変だと思うけど、影ながら応援してるね!駅まで送るよ!」
「ありがとう!」
そう言って、由奈をまた、私の車に乗せて、駅まで送る。駅まではすぐなので、そこで車を止めて、由奈の電車の時間まで一緒にいて、電車が来て、由奈をホームで見送った。手を振った由奈が見えなくなるまで、私はずっと手を振り返し続けた。
言えなかったし、言うつもりもなかったけれど、ほんとはこの後、いつも一緒に行く喫茶店での想い出が、いつのまにか、この間会ったときで最後になっていた。
由奈といつも行く喫茶店は、由奈を送った駅の近くにある古びた商店街の一角に位置している。私と由奈のお気に入りの場所だった。
商店街同様、外観も古びているのだけれど、いくつもの時代を乗り越えてきたような年季の入った荘厳な趣があって、店内に入ると、チリンチリンとお客さんが来たことをお知らせするベルの鐘の音がまた、味があって、いつも座る席のソファは、座るとギシギシと歴史のある音がして、レジの横に置かれた現役の黒電話が、まるで、一時代昔にタイムスリップしたかのような重厚なコール音を鳴らしていた。
由奈を見送ったあと、私は1人でその喫茶店を、無意識のうちに訪れていた。
いつも座っているソファ席に今日は1人で座る。由奈の声が聞こえない今日は、ギシギシと座るときの音が、いつも以上に鮮明に聞こえた。
いつものごとく、広い店内にお客さんはまばらだ。注文があるとき以外は、カウンターでずっと新聞を読んでいるマスターを呼んで、いつも頼むブレンドコーヒーを注文する。
マスターが持ってきてくれたお冷を一口飲んで、テーブルの隅に重ねられた銀色の灰皿を1枚とって、私はタバコに火をつけた。
「ふぅ」
と白い息を吐く。由奈から、妊娠していると言う報告を受けた会話の時点で、私はここに彼女と一緒に来ることを諦めていた。店内はここ最近随分と少なくなった、全席喫煙OKの喫茶店である。
「ふぅ」
また、私は白い息を吐く。
「ねぇ、私も1本もらっていい?」
由奈は昔、筋金入りのベビースモーカーだった。元彼に注意されて、ここ最近はずっと辞めていたものの、私とこの喫茶店に来たときだけは、なぜか我慢できないらしく、いつも私にタバコをねだっていた。
「ふぅ」
2人同時に白い息を吐き出す。
「やっぱり、久しぶりに吸うとおいしいなー。」
「でしょう!」
「あー戻りたいけど、彼がうるさいんだよね、、、。」
そんなことを由奈は言いながらよく、元彼を愚痴っていた。タバコをやめろと言う割に、自分はパチンコに行くことを辞めないこと、一緒にデートするときも、洋食が好きな由奈と、和食が好きな元彼でいつもどちらに行くか揉めること、休日にお出かけしたい由奈と、家で過ごしたい元彼で意見が割れて喧嘩すること、そうやって愚痴りながらも張り合いのある彼との生活を、由奈はいつも楽しそうに話していた。
彼氏を途切らさない由奈の相手はいつだって、由奈と張り合っていた。
だから、今回、まったくと言っていいほど張り合いのない光輝さんとの結婚をこの短期間で由奈が選んだと聞いたとき、私はかなり驚いていた。
「おまたせ。」
マスターが出来上がったブレンドコーヒーを私の目の前に置いてくれた。
湯気がもくもくとあがっている熱々の淹れたてのブレンドコーヒーを私は一口飲む。
「ほんと嫌になっちゃう。私の運命の人は彼じゃない。」
そんなことを言っていた由奈を思い出す。そんな会話をしているうちに、私たちのテーブルに置かれたコーヒーを飲むときには、湯気がいつのまにかなくなって、いつだって、生ぬるくなっていた。
今日はそんな由奈がいない。だからコーヒーは熱々で、いつもよりおいしく感じる。
そのおいしさが、苦しくて、私は一口飲んだコーヒーを受け皿に置いてまた、タバコを口に含む。
「ふぅ」
由奈とこの喫茶店で、やがてコーヒーが生ぬるさを通り越して完全に冷えきってしまうまで、語り合ったたわいもない話と由奈のタバコを吸っていた姿を思い出す。気がついたらいつだって、私の満杯に入っていたタバコの箱がいつの間にか空になっていた。
「ごめんごめん。ついつい、もらいタバコしすぎちゃった。」
そう言って帰り道のコンビニで、由奈は私が吸っている銘柄のタバコを、必ず奢ってくれていた。
そんな由奈のいない今日のタバコは全然減ってくれない。
「ふぅ」
きっと由奈は、この場所に私と一緒に来たことも、それが以前来たときで最後になったことも気づいていない。そのくらいしっかり前を向いて歩いている。
「ふぅ」
私はそんな事実がとても寂しい。
1人でこの喫茶店にいる事実が悲しい。
寂しくて、悲しくて、全然前に進めない。
目の前に置かれたコーヒーカップと灰皿がかすむ。
いつのまにか頬をつたって涙が流れていた。
「ふぅ」
白い息を吐き出して、周りに気づかれないよう、早く来た花粉症を装って、テーブルに置いてあったティッシュで鼻を噛んで、涙を拭く。
霞んで見えなかったけれど、まだ、目の前に置かれた飲みかけのコーヒーカップからは湯気がたちのぼっている。
このあと涼と会う予定の夜まで、まだたっぷりと時間がある。
私はそのコーヒーが、生ぬるくなるまで、完全に冷え切ってしまうまで、由奈との想い出に浸っていようと、また、1本、箱から取り出したタバコに火をつけた。
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