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はるのひ
2019年9月1日 01:51
「もしもし、今どこ?」気まずそうな恋人の声。呼び鈴を押しても出ないから、電話をしてきたのだろう。黒い空に輝く月と白い雲を近くに感じながら、私は努めてシンプルに答えた。「富士山、の5合目」「は!?」予想どおりの反応に、思わず小さく笑ってしまう。私と彼はケンカ中だった。その夜、私は彼に何も言わず、勢いで女友達と富士山に来ていた。勢いと言っても、装備や下調べは万全だ。少し前に
2018年9月26日 01:20
海の近く、見晴らし台への階段の途中。上るほどに、風が強く吹き荒れる。髪は乱れ、生き物のように次々と形を変えていく。はしゃいで先に進む友人たちの後方で、私はついに立ち止まった。風が怖い。優しいそよ風は、好きだ。だけど荒々しく吹きすさぶ風は、どうにも怖くてしかたない。一瞬のうちに、どこから来て、どこへ行くのか。その途方もない距離を思うと動けなくなる。宇宙に放り出されるような気が