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あの時、あの場所で見つけたもの

あの時、あの場所で見つけたもの

人生の中で
どれくらいの人に出会うだろう

子どもの時に出会った人もいるだろう
大人になってから知り合った人もいるだろう
学校、仕事場、バス、電車で

ながーい付き合いの人もいるだろう
別れる事もあるだろう

人に出会うのは
偶然?必然?

あの時、あの場所に行かなければ
出会っていない人もいる

運命の出会いなんてのもある?

今思えば、仕事帰り
少し寄り道をしたその先に
その出会いはあった

雨上がりのいつもの道の脇の路地
水色の紫陽花に惹かれるように
入ったその先に
小さな骨董品屋さんがあった

古い洋館の様な佇まいの
骨董品のお店だった
扉がとても大きくて
なぜか、その扉を開けたくて
カラコロとなるベルを鳴らしながら入った

いらっしゃいませ
と、低い優しいバリトンボイス

店に流れてるのは聞いたことある様なジャズ?

ゆっくり見ていってくださいね
説明必要なら、解る範囲で答えます

と、店の奥にあるレジから声がする方を見て驚いた

あまりにも
声と容姿にギャップがあった
おじ様的な人を想像してた
そこにいたのは
綺麗な顔をした背の高い今どきの男の子

きっと、私、驚いた顔してたのだろう

あっ、僕
オーナーの孫で
代わりに店番しています
ここにあるのは、じっちゃんが
昔、蚤の市とかで集めたモノらしいデス
色々聞かされて来たので少しぐらいなら説明できます

(いやいや、驚いたのは
君の声と容姿のギャップだよ)

という、思いを飲み込んで
はい
とだけ答えた

彼の提案通りにゆっくり見てまわる
骨董品の良し悪しはわからないけど

凄く高そうなアンティークな花瓶とか
綺麗な額に入った絵画とか並んでる

それでも中には
好きなタイプのマグカップとか
刺繍のハンカチとか
ガラスのペーパーウェイトとか
小さな可愛いボタンとか
細工の囲ったブローチとか

好みのものも、いくつかある

気に入ったのがあれば触ってみてくださいね

そぉーと触ってみる
値札を確かめると
コレは無理って値段のモノや
いがいにお安く、手に入りそうなのもある
どうしよう!買う?

別に、買わなくてもみるだけでもいいんだよ

私の気持ちを察して?彼は言った?

じっちゃんが
骨董品は人と一緒で
出会いだから
本当に欲しいものは
手に取ったら解るって

そうなの?

そう、言ってたよ

彼の持ってるマグカップから
コーヒーのいい香りがした

いい匂い

あっ、もう一杯分あるよ、飲む?

うん、飲みたい

じゃあ、ちょっと待ってて

レジの奥に引っ込んだ彼は
アンティークのマグカップを持って

はい、と差し出した

可愛いマグカップ
ありがとう
いただきます

木製の売り物のベンチに腰掛けて
ふたりでコーヒーを飲んだ

アンティークの懐かしい感じの香りと
ちょっと深煎りのコーヒーと
ジャズと彼のバリトンボイス

それらが合わさって
なんだか、異次元に来たみたいな気分

夢?

ここは、パラレルワールド?

私たちはコーヒーを飲みながら
他愛もない話をした

デジャブのように
この瞬間を、覚えてる気がした

このコーヒーを飲み終えたら
目が覚める気がして

ゆっくり…
ゆっくり…
コーヒーを飲んだ

彼は二つ下の大学生
金曜日の夜と土曜日にここで店番しているらしい

美味しいコーヒーを飲んで
彼に、お礼を言って

また、来てもいい?
見るだけでもいい?

うん!また、来て!
次は好みの物が見つかるかもしれないし

彼の笑顔と声と
アンティークの香りと
コーヒーの香り
BGMのジャズ
座り心地のいい古い椅子
窓から見える雨上がりの明るい外の景色
部屋の中の古くて懐かしい景色

この心地よい場所に
わたしはすっかり
魅了されてしまった

寄り道をして
見つけたもの

それがなにかは

まだ
先のおはなし…

あの時
あの場所で

いつもと違う事をした

寄り道をした

いつもと違う選択をして
君に会えた

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