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青い鳥から逃げ出してみた話

 先日、とうとうデビューしました。あの、多分皆さん知ってると思うんですけど、例の青い鳥のロゴマークの、呟くやつ。知ってる?あのアプリの名前って「鳥のさえずり」っていう英語なんですって。その時その場で思ったことをふと鳥がさえずるように呟いて世界と共有してみるアプリ。すごい、画期的、パチパチ!(15年遅い)

 恐る恐るアプリをインストールして、IDを作ってパスワードを決めて。えっとパスワードは英数字の組み合わせ10桁です。あ、言っちゃった!


 いやー、びっくりした。流れてくる流れてくる。知らん人の考えたこと、今日あったこと、愚痴、自慢、嬉しいニュースの報告、等々。わたしのタイムラインはあっという間に膨大な量の情報に埋め尽くされた。「さえずり」なんていうから「今日は晴れてるね」とか「お腹減ったな」とか「ピヨピヨ」とかそんな内容が多いのかと思いきや、いやいやヘビーな話題から様々な主義主張から、最早呟きではなく絶叫。アプリの名前、screamに変えたほうがいいのでは。

 何はともあれ、一ヶ月ほど、絶叫の狭間をさまよってみた。通勤時間とか、お昼休みとか、寝る前とか。スクロール、スクロール、ほんでまたスクロール。

はい、もうやめた。

 無理。もう、耐えられん。アイギブアップ。

 この一ヶ月でわたしは気づいてしまった。

世の中には「通じない」ということが厳然と存在するのだ。

 別に言語の壁で意思の疎通が出来ないという話じゃない。むしろそれならまだ気が楽である。そうじゃなくて、同じ日本語を話しているのに、全く話が通じ合わないという現象が思ったよりもずっと多い、ということ。わたし自身が何か発言して炎上したとかいう話ではない。何を隠そうわたしは皆さんが信じられないであろう程の人見知りなので、顔も知らぬ赤の他人と意見を交わすことなんてまず無理、絶対無理。なので、他の方々が喧々諤々議論を交わしているのを蔭からそっと見守っている訳なんだけど。結構な頻度で思う。

これ、無理やろ。

 幼い頃は「話せばわかる」とか「理解し合うのが美学」みたいに思っていたけど、このインターネットの大海をさまよっているとそんなことは絵空事にしか聞こえない。分かり合えない人とは分かり合えないし、住んでる世界が違う人なんてざらにいる。

 思えば、幼稚園から始まって社会人になるまで、そこそこ均質な社会で生きてきた。強いて言えば数年間だけ通った小学校は大分荒れていて、見たこともないような暴れん坊がいたけれど、それだって少数派だった。それに、リアルで会う人々はそう簡単に腹の中をさらけ出したりしないので、びっくりするほどの心の闇を覗いてしまう機会もそうはない。結果、誰かに幻滅する、ということはそうそうないまま生きてきた。恵まれていたのだ。けれども。歯に衣着せずに言わせて頂ければ、青い鳥での絶叫の波に飲まれて、ここ最近わたしは毎日のように見知らぬ誰かに幻滅し続けていた。

何かと言えば未成年に手を出して捕まる大人たち
承認欲求の塊みたいな若者たち
子供を通して自己実現をしようとする母親たち
育児の「手伝い」しかしてないくせにイクメンを名乗る父親たち
米株と不動産投資をやたら勧めてくる投資家たち

やべえやつばっか。

 でももしかしたらわたしだって、なにか書き込んだりしたら「こいつやべえ」って思われたかもしれない。もしかしたらこのnoteを読んですでに「こいつやべえ」って思ってる方もいるかもしれない。そうだとしたら、どうか、そのままそっとこのページを閉じて欲しい。そして、忘れ去ってほしい。わたしのことも、わたしが書いたことも。

 人には収容力というものがあって、何事もその収容力を超えてくると苦痛をもたらす。全ての人を無条件に受け入れられるようなマザーテレサみたいな人はそうはいない。受け入れなくてもいい、ただ、お互いの存在を許そう、みたいなきれいごとも、あまり言いたくない。申し訳ないが、存在自体が不愉快な人というのは確かに存在する(お互い様かもしれないけど)。そういう場合は、

見ないのが正解。

 誰も、存在しないものに腹を立てることは出来ない。しからば、嫌なものは見なければいい。勿論、社会を知ることは大事なので取捨選択をしつつ自分のキャパが許す範囲で情報収集はしたほうがいい。でも、自分が望むと望まざるとに関わらず膨大な量の情報が一方的に流れ込んでくる青い鳥のようなツールは、一歩間違えば人の心を蝕み、絶望させる。情報を得ると同時に絶望感も得るなんて、正直言って割に合わない。

青い鳥なんて籠にしまって氷の女王に献上してしまえばいい。

 という訳で、わたしの短いツイッター活動は誰に惜しまれることもなく幕を閉じた。せいせいしたわたしは今日もnoteで好きなことを書き、ぬくぬくと生きている。

おしまい

#やってみた大賞


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