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母ちゃんをメンフィスへ

 僕はお腹の中にいるときからずっとエルヴィス・プレスリーの英才教育を受けてきました。KING OF ROCKを0歳から叩き込まれました。母ちゃんがエルヴィスのことを大好きだったから。

小学生の時から

 母ちゃんは小学生の時からエルヴィスが大好きだったそうだ。少ない小遣いで雑誌やレコードを買い漁った。英語の雑誌も買っていたらしい。本当に大好きだったから、独学で英語を勉強してなんとか読んでいたそうだ。小学生にして。わからない単語が出てくるたび、分厚いジーニアスの紙の辞書で調べてはまた調べて、とにかく大好きだったそうだ。
「もう少し大きくなったらエルヴィスに会いに行こう」という思いもあり英語は本当に熱心に勉強していたそうだ。中学生の時には単身アメリカに行こうとしたが、どうしても両親の許可を得られず断念していたところ、エルヴィスは突然亡くなってしまったのだった。

母ちゃんにとってのエルヴィス

 大大大好きだったエルヴィスの突然の死。コービー・ブライアントが大好きだった僕はその気持ちが本当にわかる。現実とは到底思えず一切受けいれることができない。遠いアメリカの地、まだ見たことのない大好きな人。あんなにかっこよかったエルヴィス(コービー)がまさか死ぬなんて…本当に理解し難い。しかし、現実は現実。もう会うことはできないのだ。
 しかし、彼のレガシーは決して消えない。映像に、音源に、彼の想い、生き様は全て生きている。
ほとばしるほど熱い「Burning Love」
心の底から酔いしれる「Love Me Tender」も合間合間に飲むレモネードも、真っ白なジャンプスーツも全て生きている。全て生きている。いつでも、Liveの映像とレコードを聞けば思い出せるんだ。でも、会えないということには変わりはない。いなくなったことでむしろ彼への愛、情熱は高まり続けた。高校生になっても、大人になっても、ずっとずっとエルヴィスを追い続けた。大人になった母ちゃんはついにアメリカに渡ったそうだ。1人で何ヶ月もいたそうだ。ネットも携帯もない、今よりもっと治安も良くない世界で。

母ちゃんとアメリカ

 母ちゃんはエルヴィスに会いに行った。エルヴィスが残したものに。テネシー州メンフィスにあるエルヴィスのお墓とお家、グレイスランドへ。世界中のエルヴィスファンが訪れる「聖地」である。多くの著名人も訪れている。若い人にはわからないかもしれないが、エルヴィスは本当に大大大スターである。現代のスターたちと比べる必要はないが、史上最高のスターであったことは間違いない。SNSやネットのない時代にあれだけ世界中で人気を獲得したことがその証明だ。
 グレイスランドは当時、エルヴィスのおじさんが管理していたそうだ。母ちゃんはエルヴィスのおじさんと会って話をしたらしい。実際の本人に会えずとも,その肉親や友好の深い方と話すというのは大きな感動がある。僕も、コービーの妻ヴァネッサや父のジョーと一度は会いたい。
 アメリカではメンフィスだけでなく、ニューオリンズやユタ、他にもいろんなところに行きその日その日で安いモーテルを探してなんとか生活していたそうだ。若い日本人女性、カモにしやすいかもしれないがそれでも優しくしてくれた人たちがたくさんいたそうだ。いろんな人とエルヴィスに会いにきた,という話をしたそうだ。想いは国境を越えるのである。


母ちゃんと僕とエルヴィス

 その後、日本に帰ってき、月日流れ、Theグローバルネーム「ハルク」が誕生した。
 お腹の中にいた頃のことは正直知らないが、生まれてからずっとエルヴィスは僕の生活の隣にあった。部屋にはめちゃくちゃ大きな額縁に入ったポスターが何枚もあり、写真や雑誌などもたくさん飾っている。
 我が家にはレコードプレーヤーとエルヴィスや他のレコードもたくさんあったため、幼い頃からずっとレコードで音楽を聴いていた。今は、携帯のアプリで何曲でも聴きこなせるが、やはりレコードにはレコードの良さがある。「レコードを聴く」という音楽鑑賞の思い出はたくさん残っている。
 英語なんて聞けない4歳の頃から「ハンカッハンカッバーンラー!」と吠えていた。カバーであり、意味も違うがジョニーが名前であること、グッドが良いという意味であることから何かいいことをした時は「ジョニビグッ」と呟いていた。童謡やアニメの歌よりも先にロックに触れていた。今の僕は、あまり洋楽は聞かないがプレーリストにエルヴィスだけは入っている。暖かい気持ちになるから。
 他のエルヴィスの思い出として、スティッチがエルヴィスの真似をしたり、「レコードを咥えるとエルヴィスの歌が流れる」、という演出があったのとディズニー作品ということで母ちゃんと兄貴と「リロ&スティッチ」を見に行った。最後に母ちゃんと見に行った映画だったこともあり今でも大好きな映画の1つだ。ディズニーランドにはスティッチに関するアトラクションが2つあり、2つとも明るい楽しいものだが普通に泣きそうだった。


母ちゃんと僕

 僕は母ちゃんにかなり世話になっている。私学の高校、私学の大学へ行かせてもらい、ストレートに一般企業に就職せず「プロバスケ選手」という夢を追いかけることを一切否定せずめちゃくちゃ応援してくれた。むしろ僕より乗り気だった。仲も良く、昔からいろんな話をする。そもそも僕はめちゃくちゃ喋る息子である。
 もちろん、プロになるという夢を叶えることが1番の恩返しでもあるが、母ちゃん自身の好きなこと、大切なことでもう1つ何か夢を見せてあげたい。
 母ちゃんは、「私が死んだらメンフィスに骨撒いてくれ」と冗談でよく言う。「グレイスランドに埋めたるわ」と僕は言う。本当にそうしてあげたいと思う(無理とはわかっている)。でも、今母ちゃんは生きている(いい歳だが)。生きている母ちゃんにしてあげられることがある。僕は、母ちゃんをもう1度メンフィスに連れて行ってあげたい。兄貴も僕も、大学まで進学したのに普通に就職せずに「アーティスト」「アスリート」になった。はっきり言って、金銭的に余裕のある生き方、仕事ではない。でも、お金のかかる夢だが、母ちゃんをまたエルヴィスに会わせてあげたい

サポートしていただいたお金は、全てコートの利用費、プロテインやサプリメントの購入などプロバスケ選手になるための費用に使わせていただきます。よろしくお願いします。