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第十幕:冬の本公演2 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

全く関係ない主人公の歌や象の歌、ねずみの歌などもうたっていたのだ。だから、脚本もなく、大学時代の思い出なのに、 歌詞や曲調をはっきり覚えていたりする。ともかく、個人連が多かったというのが、冬公演の記憶だった。

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友人の岩尾は、猫以外にも医者という重要な役があったので、そのユニットでの練習も結構多くあった。そんな岩尾のことを僕はうらやましく思っていた。実を言えば岩尾は、看護婦役のかわいらしい小柄な同期にほのかの恋心を抱いていたのである。
岩尾はとてもよい男っぽい太い声をしていたら、院長の役はぴったりだった。さらに、矢沢栄吉が大好きで(高校時代には栄ちゃんは最高だからこれを買うんだと、 無理やり単行本を買わされたこともあった)、声が良いから、歌だって聞かせることができたのだ。
”岩尾の声ってかっこいいよね”という女性メンバーや先輩の声をよくきくようになったのもこの頃だ。加えて、この頃になると彼の院長としての芝居の評価は上々だった。 ”岩尾の医者ってシブくってかっこいい”なんて、いう声まで出てきたぐらいだ。不器用なタイプで、最初はぎこちなかったが、一生懸命取り組むタイプなので、その姿勢が院長の演技に迫力をもたせていたし、 板についてきたのだ。
フリーター、さらに、一浪の僕よりも年上という岩尾は、周りは全員が大学生という状況で、色々コンプレックスもあったのだが、役者として評価する人も出てきたて、本当に良かったと思う。

一方、もうひとりの友人、堺田はなかずとばずだった。もともと、女の子が多いと言う下心があって入ったというのもあったのかもしれない。 彼の場合は、経験もない中で入ったから仕方なかったのだが、本公演をいちど経験して、すぐにやめてしまった。そんな彼のことも、松田さんは結構かわいがっていたように記憶している。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。

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