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第十幕:冬の本公演4 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

主人公の回想シーンで会社の場面がある。そこで、最初はみんな後ろを向いているのだが、そのシーンで僕は思わずあくびをしてしまったのだ。ポジション的には一番後ろで、後ろを向くと僕の前には誰もいないし、メンバーは気づくはずはないとたかをくくっていたのだ。
しかし、あろうことか、最も見つかるとまずい時子さんに目撃されてしまった。

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怒れば鬼より怖い中人の時子さんである。中人の時子さんは歌、ダンス、芝居、3拍子そろった人だった。だから、彼女の発言は重みがあったし、影響力があった。教育学部で、理路整然としているところもあった。その時子さんがたまに爆発するかのように非常に怒る時があり、それは男子にとっては恐怖の的だった。なにせ、実力がある上、練習する姿勢も熱心、正論を言うことがほとんどだったからだ。
僕は、この時子さんにはなぜかかわいがってもらっていた方だと思う。夏のある練習の時に、”時子さんの演技って、情熱的な感じがあって僕はとても好きなんです” なんて言ったことがあったからだ。これは、お世辞ではなく、本当にそう感じることがあったからなのだが、一方でやっぱり怖いところもあったから、少し大げさな言い方になってしまったのは否めないだろう。

今だから思うのは、自分の気持ちをオープンにする方でもなかったから、こういうふうに人をほめるという機会は多くなかった。しかし、メンバーにはそれぞれ素晴らしい所があったのだから、良いと思うことは素直に伝えれば良かったのかなという思いがある。そうすれば、もっと距離が近づけただろう。

話しを戻すと、そんなわけで、あくびを目撃された僕は、非常にやばいと思い、冷や汗をかいた。時子さんは容赦がない。場合によっては、みんなの前でどやすのである。しかし、この時は”通しっていうのはとても貴重な時間、無駄にしてはいけないということを話して、”ちょっと、気が緩んでいる。あくびなんてもってのほかだぞ”なんて、それほど怒られなかったので、かなりほっとした記憶がある。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。

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