見出し画像

第十幕:冬の本公演6 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

一方、旧人、幹事長の真壁さんは、この舞台が最後だったので、いわば3年間の総決算だ。だから、思い残しはないように全力を出そうという気持ちが強かったのだと思う。もちろん、幹事長になるほどの人だから、とてもしっかりしていて、みんなのよき相談役でもあった。彼の素晴らしい所は、阻害されがちな落ちこぼれ組に対しても、分け隔てなく 声をかけてくれたことである。とても公平で、穏やかな性格だった。もちろん、うちに秘めたものは強かったと思うのだが……ちなみに、真壁さんは時子さんの彼氏だった。

6

このように個人の資質もあったのだが、やはり美也子さんの作品が素晴らしかったのだと思う。僕はといえば当時は、その凄さや素晴らしさの半分もわかっていなかった。理解が浅かったのである。

繰り返しになってしまうが、カメラマンを夢見る主人公が、現実社会の壁にぶちあたり、一時は命さえたとうとしてしまう。 自殺未遂なのか、事故なのかは、ちょっとあいまいに描かれているが、テーマはすごく重いのだ。
さらに、ネズミのシーンでは実験モルモットが出てきて、外の世界も見られずに実験のために殺されてしまうという厳しい現実をつきつけている。
猫のシーンはちょっと、あやふやなところもあるかもしれない。しかし、主人公が現実の壁に当たって息詰まってしまう場面や、生きるために泣きながらネズミを食べるシーンなどは、重みがあるシーンだった。
最後は象である。象の世界は、再生、復活の希望のシーンである。フィナーレに向け、まさに見せ場となっていく。

おそらく、メインキャストの彼らはこういうことををちゃんと理解して、素晴らしい舞台を作り上げようと奮闘していたに違いない。実際、江夏さん、真壁さん、彼女役の多恵さんの終盤の主人公が復活するシーンは、ハイライトの一つだった。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。

この記事が参加している募集

ご覧いただきありがとうございます!