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第十幕:冬の本公演7 ミュージカル研究会の頃-汗と涙の青春ストーリー-

おそらく、メインキャストの彼らはこういうことををちゃんと理解して、素晴らしい舞台を作り上げようと奮闘していたに違いない。実際、江夏さん、真壁さん、彼女役の多恵さんの終盤の主人公が復活するシーンは、ハイライトの一つだった。

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舞台の上で主人公も色々な困難に直面していたが、大学生だった僕たちミュー研のメンバーも、おそらく40人誰もが、この冬公演の練習の間は、同様だった。時に笑い、時に泣き(陰で)、時に喜び、時に怒り、できるだけ一生懸命、週6回の練習を夜遅くまでやっていた。夜10時過ぎになると、徐々に帰宅を始めるが、残っているメンバーの談笑や歌声が聞こえたり、ひとけが少なくなってがらんとした空間に大道具をトンカチで叩く音が響いたりしていた。そんな時間は、ちょっと不思議な、素敵に感じる時間でもあった。

そして、毎かい最後はみんなでフィナーレの歌を歌って、なんとか一体になってがんばろうという雰囲気を作り、よたよたと本番に向かって、一日一日を歩いていた。時は12月、吐息も白くなり、寒さが身に染みる季節。青空まで空気が澄んでいるように感じることも、東京ながらに少なくはなかった。僕たちはいよいよ、冬公演を迎える六本木の劇場に移動して、準備を始めることになった。

そこは駅からは結構遠く、徒歩で15分くらいある便利とはいえない場所にあった。3車線の大通りから横道に入った場所にあり、ちょっと見つけにくい劇場である。地下にあるのだが、春公演とは違い、照明から音響、座席まで、本物の劇場という事もあり、とても雰囲気がある場所だった。僕はここがかなり気に入った。

準備から公演が終わるまで一週間ほどだったが、毎日、緊張しながら、冷たい手をポケットに入れて、通ったのを思い出す。車がたくさん走っていたが、空気は新鮮に感じたものだった。

つづく…(続きを見たい方は、ハルカナル屋根裏部屋へ!)

第一幕:未知なる舞台へ!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/第一幕:未知なる舞台へ!

第二幕:衝撃! 初役はみんなが大嫌いなあれ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act2

第三幕:最初の公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act3

第四幕:夏の発表会
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act4

第五幕:脚本会議、夏の陣
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act5

第六幕:夏休みも大変!? 音響スタッフで出陣!
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act6

第七幕:夏合宿
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act7

第八幕:猫たちが大騒ぎ!?
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act8

第九幕:試練の秋
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act9

第十幕:冬の本公演
https://rekishi-tanbo.com/musical-story/act10

登場人物

-新人-
僕:元帰宅部。歌、ダンス、芝居、3拍子そろわない珍しい新人。しかも、入部したのが2年生の時だったため、振り返るとかなり浮いた存在だった。
岩尾…親友。2浪しているフリーターながら、ミュージカル研究会に入る。
鉄郎:某都内に通う高校時代、伝説となった男。野性的で、繊細で、躍動的で、とても頭がよく、次元の違う存在感を放っていた。どこを行くのも裸足で歩いていた。
冴子…高校時代は声楽をやっており、作曲ができた。才能にあふれており、同期で最初に頭角を現した存在だった。彼女の作る曲は作品にしっかり寄り添いながらも、さらに作品を高めるような、素晴らしい曲が多かった。のちにNHKのみんなの歌に曲を提供した。
優有:歌と芝居が大好きで他の女子大学からミュー研に通っている。穏やかで性格が良く、みんなから好かれており、脚本家の坂上さん、美也子さんらに気に入られ、たびたび彼らの作品に主役で出演することになる。
芽衣…大阪出身でのりやよく、ダンスが好きだった。若くして亡くなってしまい、この作品を書くきっかけになった存在の1人。

-中人(2年目)-
美也子さん:容姿は少しボーイッシュで、性格は物静かで控えめ。宮沢賢治を愛しており、彼女が生み出す脚本は、独特で素晴らしい世界観だった。
江夏さん:新人の時はぺけをつけられていた僕や岩尾とかなり距離があり、あまり話す機会はなかった。坂上さんとおなじ愛知出身で、師匠と弟子のような間柄だった。普段はちゃらんぽらん、三枚目だが、ミュー研への思い入れが人一倍強く、男子では歌、ダンス、芝居が一番うまかった。とても個性があり、 後に百萬男 – フジテレビに出演した。
時子さん: 歌・ダンス・芝居、すべてのレベルがトップクラスの先輩だが、怒ると鬼より怖く、男子全員に恐れられていた。
松田さん:初対面の時に「俺、次の舞台で主役とっちゃうよ!」と言ってのけた自信家。実際は繊細で神経質な一面もある。一方でできの悪い後輩を気にかけ、面倒見の良い一面もあった。
夕実さん:松田さんの彼女。小柄でかわいらしく、親切な先輩。

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