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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(ジブリ「ハウルの動く城」の原作者)ー私がお店を開いたら扱いたいもの(古本編vol.7)ー

 私が好きな作家の1人に、ダイアナ・ウィン・ジョーンズという方がいる。

 彼女はジブリの「ハウルの動く城」の原作者(原作と映画はかなり違うところも多いけれど)としても知られている。

 私は、ジブリが好きで、その映画に原作があると聞くとその本を探してしまう。

 そうして私は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズという作家と出会った。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ        1934年イギリス生まれ。子どものころから古典に親しみ、オックスフォード大学セントアンズ校ではトールキンに師事。大学卒業と同時に結婚、三人の子どもの子育て中に、ファンタジーを書き始める。魔法を扱った独創的なファンタジーを数多く発表、イギリスを代表するファンタジー作家と評価が高い。(以上、「魔女と暮らせば」の著者紹介より)

 彼女の作品としては、最初、「ハウルの動く城 魔法使いハウルと火の悪魔」を読んだ。

 ジブリの映画も好きだけれど、こちらの原作も面白くて、はまってしまった。

 このほかにも読んだけれど、今回は、最近読んだ彼女の著作について、感想を交えて書いていきたい。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「花の魔法、白のドラゴン」田中薫子訳、佐竹美保絵

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あらすじ
はじまりの舞台は、異世界のブレスト諸島にある、王がいつも旅してまわるという変わった国。国の魔法をおさめる「マーリン」という役職があるが、その周りで渦巻く陰謀を、少女ロディは知ってしまう。彼女は祖父の助言を得て、古の魔女の〈花の魔法〉を手に入れ、異世界(私たちの世界)の少年ニックに助けを求める…。(*訳者あとがきを簡単にまとめました)

 キャラクターが魅力的なのが、彼女の著作の魅力の一つだと思う。 

 そして、そのキャラクターたちも、みんなどこか欠点があって、親しみやすい。

 さらに、どこかしらにユーモアが存在している。

 それが読者を惹きつけ、飽きさせない。

 今回、ロディの側とニックの側とが交互に書かれていて、徐々に繋がり、最後に大きな物語になるという構造が良かった。

 物語を読んでいて、あ,繋がった!と思える時は、かなり快感だ。

 そして、佐竹美保さんの絵が、こういうファンタジーにとても合っている。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「グリフィンの年」浅羽英子訳、佐竹美保絵

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あらすじ                  魔法が存在する世界。「ダークホルムの闇の君」(シリーズ第一弾)で一段落した騒動後、若手中心となった魔術師大学は赤字に苦しんでいた。寄付を募る手紙から大事件が続発し、新入生を狙う刺客、学食に乱入する海賊、外套掛けにつきまとわれる学生、グリフィンで中庭がいっぱいに…? 魔法世界のキャンパスライフを生き生きと描いた作品。

 繰り返しになるが、登場人物たちが魅力的だ。

 人間だけではない、グリフィンやドワーフ…多様性というものを感じさせる。

 彼らは突飛ながらも、あり得ない人物像というわけではない。共感ができる部分がちゃんとある。

 この本では、自分の運命に「反抗」するような、彼らのエネルギッシュさと、文章から感じられるユーモアに私は夢中になった。

 そして、大団円で終わるところ。結末まで辿り着いた時、安堵と共に、思わずにっこり笑ってしまうような気持ちを感じた。

 本の余韻に浸ることほど、痛くてどこか心地よいというものはない。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「大魔法使いクレストマンシー 魔女と暮らせば」田中薫子訳、佐竹美保絵

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あらすじ                  両親を亡くしたグウェンドリンとキャットの姉弟。姉は将来有望な魔女で、弟は姉に頼り切っていた。ある日、大魔法使いクレストマンシーのもとに引き取られたが、「こどもは魔法を使ってはいけない」と言われ、姉は魔法で嫌がらせをした挙句、ある日姿を消す。代わりに現れた、姉にそっくりだが「別の世界から来た別人」と主張する少女ジャネット。彼女の面倒を見なくてはいけなくなった弟は頭を抱えるが…。

 ずっと、読んでいて、姉のグウェンドリンを好きになれなかったし、それは最後までそうだったけれど…

 クレストマンシーの
「きみの家来たちは、きみの命令にしたがってなどいないぞ。ふりをしてるだけで」という言葉に、

グウェンドリンが
「それでもいいのっ!」と言った場面で、

彼女の心が少しだけ分かった気がした。

 グウェンドリンは、なんだか、悲しい子だ。哀れに思う。

 物質的に恵まれていても、心にぽっかり穴が開いたような感覚。それをずっと、感じていたのではないだろうか。

 だから、弟のキャットに酷い仕打ちをしてきた…

 そのことは許されることではないけれど。

 グウェンドリンがどういう気持ちだったのか、本当のところはわからない。けれど、寂しさを感じていたのではないかなと思う。

 だから、彼女は大きな野望に突き進んでいったわけだけれど…それはつまり、行き過ぎた承認欲求だったのではないかな。

 結局、彼女は我が道を突き進む。

 それでも、彼女が、幸せだと思うなら、いいと思うけど…

 主人公のキャットの気持ちも、ジャネットの気持ちも考えると、ちょっと痛々しい。

 でも、彼らはこのことをきっかけに大人になっていくのだろう。

 大人になるって、そういうことだなと思う。理不尽なことも辛いことも抱えて生きて行く。

 そこに支えとなる人やものがあれば、生きていける。

 彼らは互いに支えとなれるのではないかな。

 それから、魔法の世界という設定と、多世界がある(パラレルワールドのような)設定の組み合わせ、好きだなと思った。

 


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