夏の影

夏の影が色濃くなれば、干からびた命抜けたものが転がる。
上向きにひっくり返る虫々の、つい先ほどまで宿していたであろう命はどこにも見えない。長く土に埋もれてようやく世界に現れて、あっという間に死んでいく。何度も死しては生まれ去る。人間よりもはるかに、繰り返される命ごと。羽の薄さに足の細さに、そのからだのあまりの軽さに驚きながら、転がった体を持ち上げて、草むらに移す。死んだ今、どこにいれど運ばれる先は同じでも、アスファルトよりも草の上にと思わずにはいらえない。
生命活動を続けてきた場所が、誰しもの生まれ故郷。

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