HARUI

目に見えぬものを可視させたい/世界のどこかの誰かの話

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目に見えぬものを可視させたい/世界のどこかの誰かの話

最近の記事

花はつとめて。

言葉忘れた日々に埋もれる屍が 病巣をあらいだすように 白く光って百合の花 意味のない話題に適当に相槌を打ちながら 自分のありかを見失う そうですよね、確かにと繰り返す言葉の中に私はいない。 言葉発して瞬時にころがる屍が 呆れたようにわたしを見ては白く光る タネはそのままこぼれ落ち 気づけば足元に百合の花

    • 死する場所 生きる場所

      もしかしたら病かもしれない。と、医者の一言に耳傾けながら驚くこともなく、そうかもね。と、他人事のように頷く。自分はないだろうと思った勘など、勘以外のなにものでもなく。自分のものではないような体。今、動いている指先もあぐらをかいている足も私のものなのに、その中の姿をまるで知らない。何かが蠢いていても、何かが尽きようとしていても、すこぶる調子がいいのだとしてもわからない。ただ、この目に映るもの聞こえるもの触れるもの、その感覚の先に生じる心の模様のみが、わたしのものとして捉えられる

      • 夏の影

        夏の影が色濃くなれば、干からびた命抜けたものが転がる。 上向きにひっくり返る虫々の、つい先ほどまで宿していたであろう命はどこにも見えない。長く土に埋もれてようやく世界に現れて、あっという間に死んでいく。何度も死しては生まれ去る。人間よりもはるかに、繰り返される命ごと。羽の薄さに足の細さに、そのからだのあまりの軽さに驚きながら、転がった体を持ち上げて、草むらに移す。死んだ今、どこにいれど運ばれる先は同じでも、アスファルトよりも草の上にと思わずにはいらえない。 生命活動を続けてき

        • 憂いる花

          目の前に紫陽花の花がある。青く染まり憂いている。 紫陽花に明るさはない。雨の季節とともに現れる梅雨時の花。 目にとらえきれぬような、細い糸のような雨がよく似合う。 耳に触るように音現れた梅雨の日は、薄暗い光に反射しながら雨の所在を垣間見る。葉が、土が、屋根が水滴とこすれては、窓越しから聞こえる穏やかな音に耳をすませる。眠りうつつの中、外はまだ雨で降り続けていて、目をこすり上げながら窓を開ければ乳白色の空に縦に流れる幾線もの雨。 私の心が振れている。横たわり、体奥に視線を合わせ

        花はつとめて。

          雨にも負けず 過去にも負けず 今をひねらず 未来は祝祭

          雨にも負けず 過去にも負けず 今をひねらず 未来は祝祭

          うたをよむのは 時に重石をつける作業だと聞いてから わたしの中で短歌はいつかの夢になった

          うたをよむのは 時に重石をつける作業だと聞いてから わたしの中で短歌はいつかの夢になった

          世はくらし 影させど わたしは希望を 見て生きていく気しかない

          世はくらし 影させど わたしは希望を 見て生きていく気しかない

          ねえ私 いつから大人になったのと 自分に問うてもわからずに今

          ねえ私 いつから大人になったのと 自分に問うてもわからずに今

          寝れずとも 明日はやいと危惧しても 指先とまらず うたを詠む2時

          寝れずとも 明日はやいと危惧しても 指先とまらず うたを詠む2時

          花色の 季節求めて 色染まり 抜け落ちる頃には 散るさだめかな

          花色の 季節求めて 色染まり 抜け落ちる頃には 散るさだめかな

          透ける足 かたち成さずに揺れ揺れる わたしはあぶく あなたはくらげ

          透ける足 かたち成さずに揺れ揺れる わたしはあぶく あなたはくらげ

          皇々と光る小舟は水平線 向こう側からわたしは見えない

          皇々と光る小舟は水平線 向こう側からわたしは見えない

          さめざめと雨音連れて 夜更けて 遠い記憶の 風が鳴る

          さめざめと雨音連れて 夜更けて 遠い記憶の 風が鳴る

          初めて会う男

          むかしむかし、あるところに初めて会う男の逢瀬の前に 朝から、他の男の顔ばかり思い出す女がいた。 ああ。今日、あの男に初めて会うのか と思いながら、朝起きた瞬間に 懐かしい男の顔を思い浮かべる。 今、どうしているのか元気なのか。きっと元気なのだろうが、生きているのか。つらつらとそんなことばかり思い出しながら いつ会えるかもはやわからない男の顔ばかり思い出したところで 何かが始まるわけでもなし。 いい加減、考えることをやめにしようと思って見ても どれだけ焦がれていたかをなぞる

          初めて会う男

          赤い空青い空

          むかしむかし、あるところに 夕焼けの赤さに見とれている女がいた。 時は夕暮れ、青空との境目に夕空がにじんでは ゆっくりと日が沈んでいく時、一筋の黄金色の飛行機はゆうゆうと 空をかけぬけていく。 白い線を引き連れて海をはしる船のように、頭上に航路が現れた。 ああ。綺麗だな。と、女は立ち止まって地べたへと座りこんだ。 ひんやりとした地面が、もうすぐ日が沈んでいく時を知らせる。 海から潮風がやってくる。 空から色が抜け落ちていく。 うっすらと船の航路は薄くなる。 切れ切れとした黄金

          赤い空青い空

          HARUIといふ女

          HARUIといふ女