赤い空青い空

むかしむかし、あるところに
夕焼けの赤さに見とれている女がいた。
時は夕暮れ、青空との境目に夕空がにじんでは
ゆっくりと日が沈んでいく時、一筋の黄金色の飛行機はゆうゆうと
空をかけぬけていく。
白い線を引き連れて海をはしる船のように、頭上に航路が現れた。
ああ。綺麗だな。と、女は立ち止まって地べたへと座りこんだ。
ひんやりとした地面が、もうすぐ日が沈んでいく時を知らせる。
海から潮風がやってくる。
空から色が抜け落ちていく。
うっすらと船の航路は薄くなる。
切れ切れとした黄金色の線は、ぼやけながら短くなる。
赤い空、青い空、金色の船たゆたう
この空の下、見上げるこの眼差しで日々生きていけたらどんなにいいだろう。目を凝らしてからだ委ねて、景色の中に今いる自分を
忘れることがないようにと、締め付けられる胸の中に
何かが湧き上がる。
脳天に風が吹き抜ける。
美しい景色に立ち会っているこの瞬間を
近頃忘れ去っていたことを今、思い出しながら

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