憂いる花

目の前に紫陽花の花がある。青く染まり憂いている。
紫陽花に明るさはない。雨の季節とともに現れる梅雨時の花。
目にとらえきれぬような、細い糸のような雨がよく似合う。
耳に触るように音現れた梅雨の日は、薄暗い光に反射しながら雨の所在を垣間見る。葉が、土が、屋根が水滴とこすれては、窓越しから聞こえる穏やかな音に耳をすませる。眠りうつつの中、外はまだ雨で降り続けていて、目をこすり上げながら窓を開ければ乳白色の空に縦に流れる幾線もの雨。
私の心が振れている。横たわり、体奥に視線を合わせれば、心に触れる。
じっと休まりながら敷布団に体預ければ、静かなる胸の内のみ。
波のない海の上をすうすうと風が吹くように、ただ流れていく時間を知る。
悩みも憂いも外のこと。私の中は、幾多もの流れる線。



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