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マエストロ!

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2015年の日本映画。さそうあきらのコミック『マエストロ』が原作。不況のあおりを受け解散したオーケストラの “負け組” 楽団員たちが、破天荒な指揮者との出会いをきっかけに再生していく姿を描いたヒューマン・ドラマ作品です。

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出演は、松坂桃李西田敏行miwa、大石吾朗、濱田マリ、古館寛治、池田鉄洋、嶋田久作、松重豊、中村倫也、ほか。監督は『毎日かあさん』の小林聖太郎。

さそうあきらのコミックが原作

わたし、知らなかったのですが、本作は漫画が原作なのですね!

新装版の表紙はこんな感じ。

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左上のキャラ濃そう(笑)な人物が、西田敏行さん演じる謎の指揮者天道」。左下のヴァイオリンを構えている青年が、松坂桃李さん演じる主人公真一」。miwaさんが演じる「あまね」は、右下のフルートを吹いているキャラクターかな?

さそうあきらさんのタッチ、わりと好きな感じの絵柄なので、原作コミックも気になります。

○ あらすじ(ネタバレなし)
スポンサーの相次ぐ倒産により解散を余儀なくされた名門オーケストラ「中央交響楽団」。才能ある奏者はほとんどが国内外のオケへ引き抜かれ、残りの楽団員たちは再就職先もなく、中には音楽の道をあきらめた者もいた。
そんな “負け組” の楽団員たちはある日再結成の招集を受けて喜ぶが、謎の指揮者・天道(西田敏行)の高圧的な態度に困惑するばかり。若きコンマスの真一(松坂桃李)は、寄せ集めの楽団員たちをまとめられず頭を抱えていた。
無名の指揮者・天道に半信半疑ながらも、1ヶ月後のコンサートへ向けて練習に励むオケの面々。だが、天道が原因でコンサートが中止になるかもしれないという知らせが舞い込み、オケは再び存続の危機に――。

「音楽モノ」映画は、ついつい観ちゃう♩

これまで折りにふれては何度も記事に書いているので、いつもわたしの note を読んでくださっている方には耳タコかもしれないのですが、

わたしは音楽が大好き!♡
"NO MUSIC, NO LIFE"!!

このあたりの記事で、熱く語っています。

▼「チャイコ、天才!」とか言っている回は、こちら。笑

▼「美しいもの」と、その中にある ”grace” の関係について。

▼ ほとばしる “ウィーン・フィル愛” が炸裂している回。

▼ 巨匠バーンスタインの名言にシビレる回。

音楽をテーマにした映画の感想も数が増えてきたので、こちらのマガジンにまとめることにしました! ご興味がありましたら、併せてお楽しみください♩

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本作『マエストロ!』も、オーケストラのお話――ということで、興味を引かれて観てみました。

「なんちゃって」ではない、演奏シーンがみどころ

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本作を観て、まず最初にわたしが思ったこと――

演奏シーンを「エアっぽくない感じでやられていて、すごいなーと。演奏指導だいぶしっかりやったのでは。『のだめ〜』みたいにウソ臭くて冷めてしまう部分はなかった

オーケストラを描く作品なので、当然、オケの練習風景やコンサート・シーンなど、楽器を演奏するシーンが多く出てきます。

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若きコンマス(*)を演じる松坂桃李さん。調弦する姿がサマになっている!

○ オーケストラ★マメ知識 「コンマスとは
コンサート・マスターの略。オーケストラの奏者たちを統率して、指揮者の意図を音楽に具現する役割。いわば「第2の指揮者」。第1ヴァイオリンの首席奏者が務めるのが通常。

桃李さん以外のオケメンバーたちも、みんな、結構しっかり本物っぽいのですよ!

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オーケストラを描いた他作品、たとえば感想ツイート内でも触れている実写版『のだめカンタービレ』(何度も引き合いに出して申し訳ない…笑)など、演奏シーンで

「あ……。役者さん、弾いてるフリ” してるなぁ……」

と感じてしまうと、どんなに感動的な良いシーンだとしても、一瞬、スーッと気持ちが冷めてしまうんですよねぇ。それまで作品の世界に入り込んでいたのに、ひゅっとシラケてしまう感はどうしても否めません。悲

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わたしが愛してやまないオールタイムベスト邦画砂の器』。加藤剛さん演じる新進気鋭の作曲家・和賀英良(わが・えいりょう)が、クライマックスで名曲宿命を演奏するシーン
表情は迫真の演技なのですが、動きがあまりにも音楽と合っていなさ過ぎて……毎回笑ってしまいます。ピアノの音階はだんだん上がっているのに、加藤さんの手が逆に下がってゆく動きをしていたり。笑
でも、それ以外の作品そのものが完璧ですから! 許しちゃう! これも “ご愛嬌” ということで♩(全力で贔屓♡笑)

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本作の出演陣がホンモノのプロ奏者っぽく見えるのは、やはり、それぞれの楽器について、それなりの指導期間を設けていたからのようです。

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若手ティンパニ奏者「丹下」を演じた中村倫也さんは、公開当時のインタビューでこのように答えています。

Q:名門オーケストラの若手ティンパニストという役どころでしたが、演技以前に楽器をプロらしく演じられるようになるまで、大変だったのではないでしょうか?

小学校の授業でティンパニをたたく程度の経験でした。今回はバチの持ち方、たたき方から教わりました。家では練習ができない楽器だし、実物をたたかないと、バチにかかる力や返ってくる力の加減がわからないので、早く楽器に慣れて、芝居をしながら演奏しなくちゃと焦りました。
クランクイン前にオーケストラのキャストが全員集まったことがあって、そのときは周りのみんながどれくらい楽器が上達しているのかそれぞれ探り合っていました。面白かったですね。

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主演の松坂桃李さんに至っては、1年間の猛特訓を積んでヴァイオリニスト役に挑んだのだそう。

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公開直前のこちらのニュースを見ると、宣伝イベントでの発言ということで多少のリップサービスは差し引いたとしても、プロの奏者である宮本笑里さん(ヴァイオリニスト)が、松坂桃李さんの構え方やボーイング(弓の上げ下げ)を褒めています。

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ほかの出演陣も、各パートごとに演奏する姿がちゃんとサマになっているので、そちらにも注目してみてくださいね♩

そして、ここにも登場している古館寛治さん! 癖の強いキャラクターをリアルに演じることが多い古館さん。好きです。笑
▼ 関連作品: 南極料理人キツツキと雨

演奏の音源は、ベルリン・ドイツ交響楽団&佐渡裕!

作中、ラストのコンサート・シーンでの演目は、ベートーヴェンの『運命』とシューベルトの『未完成交響曲』。

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○ ベートーヴェン 交響曲第5番 『運命』
N響と小澤征爾さんの演奏を貼っておきます――♩♩

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○ シューベルト 交響曲第7番 『未完成』
クリストフ・エッシェンバッハさんと hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)の演奏で――♩♩

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本作のコンサート・シーンで流れる『運命』と『未完成』の音源は、ドイツの名門・ベルリン・ドイツ交響楽団と指揮者の佐渡裕さんによる演奏。(佐渡裕さんは、本作の指揮指導もされています)

しかも、その録音が行われたのは、ベルリンにある「イエス・キリスト教会」という所。

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イエス・キリスト教会は室内音響が素晴らしく、1970年代初期までカラヤン&ベルリン・フィルが多くの名盤を残したほか、数々の音楽家たちがレコーディングを行った場所として有名なのだそうです。

「たくあん」と「天籟」

本作をこれから観る方のために、覚えておいて欲しいキーワードを2つ、挙げておきますね。

ひとつめは「たくあん」。食べる時にポリポリ音のする、大根のお漬物。アレです。

もうひとつは「天籟」(てんらい)という言葉。オンラインの辞書で意味を調べると、このように書いてあります。

てん‐らい【天×籟】
天然に発する響き。風が物に当たって鳴る音など。
2 詩文の調子が自然で、すぐれていること。絶妙の詩文。「天籟の文章」

作中で、この「天籟」(てんらい)という言葉が象徴しているもの――。

わたしは、こちらの記事の最後に書いたバーンスタインのエピソードを思い出していました。美と調和だけがそこにあり、宇宙そのものが響き合うような音――。

音楽とは魂の歓び” だなぁ……と、つくづく感じます♩


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▼ 音楽をテーマにした映画・まとめ(note マガジン)

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