31年目の夫婦げんか
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2012年のアメリカ映画。アカデミー俳優、メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズが共演。結婚31年目の夫婦が、お互いの関係性に情熱を取り戻そうと滞在型カウンセリングに臨む姿をユーモアを交えて描くヒューマン・コメディ作品です。原題 "Hope Springs"。
主演は『クレイマー・クレイマー』、『マディソン郡の橋』、『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープと、『逃亡者』、『メン・イン・ブラック』、『ノーカントリー』のトミー・リー・ジョーンズ。共演に『リトル・ミス・サンシャイン』のスティーヴ・カレル。監督は『プラダを着た悪魔』のデヴィッド・フランケル。
結婚31年目の夫婦って、どんなだろう?
○ 主なあらすじ(ネタバレなし)
結婚して31年目を迎え、変わり映えのしない毎日を送っていたケイ(メリル・ストリープ)は、もう一度人生に輝きを取り戻そうと、夫のアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)を無理やり連れ出し、1週間の滞在型カウンセリングにやってくる。カウンセラーから予想もしなかったさまざまな “宿題” を課されて驚くケイは、次第にため込んでいた感情を吐き出していき、口の重たいアーノルドも本心を打ち明け始めるが――。
(出典:映画.com)
本作の主人公は、結婚31年目の夫婦。約30年といえば、長い年月ですよね。もし 20代半ばで結婚したとしたら、実家で親と過ごした年月より長い時間を共に過ごしているわけです。一番身近な家族として。
私事ながら、わたし自身は結婚11年で離婚しているので、それよりも長い夫婦関係がどんなものなのかは想像でイメージするしかないんですよね。一方で、わたしと同世代(50代)の友人などは、25周年の銀婚式を過ぎ、結婚30年を迎えるご夫婦もそろそろ出てくるのかな。
若き日々に恋人として過ごし、その相手と家庭を築き、子どもを育て、マイホームなんかも持ったりして、やがて、子どもたちが手を離れ―― まあ、人生のライフステージや関係性の変遷は、夫婦が100組いれば100通り、多様にあるのだとは思いますが。
そういう生き方とは別の道を歩んできたわたしから見ると、まさに
「夫婦に歴史あり」
長いよなぁ、すごいなぁ、と素直に思います。
ところで、本作でも、他の映画やドラマでも、朝の食卓のお父さんは新聞を読みがち。笑(ちゃんと家族の顔を見てコミュニケーションすることを心掛けたいですね♩)
カウンセリングのある風景
本作の主人公ケイ(メリル・ストリープ)は、自分たち夫婦のあり方に潜在的に “むなしさ” や “孤独” を感じています。
ひとつ屋根の下で一緒に暮らしていながら、夫アーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)も、妻である自分も、いつも同じ日課、会話は必要最低限のやりとり、夜は別々の寝室で眠る―― 穏やかと言えば穏やかだけれど、もはや、ケンカの種すら見つからない。
わたし、何のためにここにいるのかな?
どうして、この人と一緒にいるのかな?
ずっとこんな感じで人生終わってしまってもいいのかな?
もっと、情熱や、つながりや、愛情、充実感を感じて生きていたい!
より良い人生を生きたい!
でも……
たぶん、そんな想いを抱えていたのではないでしょうか。ケイの気持ち、わかる気がします。
なんとか改善への糸口を見つけたい、と、本屋さんで出逢ったカウンセリング本を夢中で読んでみたり――。うんうん。わたしも、生きづらさを抱えて悩んでいた会社員時代はそんなだったなぁ。
・・・
そして、普段はあまり夫に強くモノを言えない控えめなケイが、たっての願いで「滞在型の夫婦カウンセリング」に申し込むのです。
費用が高額だの何のと、全く乗り気ではない夫。ですが、珍しく “本気感” を漂わせる妻の様子を見て、渋々ながら一緒に来ることに。
二人のカウンセリングを行うのは、本の著者であるフェルド医師。『リトル・ミス・サンシャイン』で弱々なお豆腐メンタルを持つ叔父(笑)を演じたスティーヴ・カレル。
・・・
ところで、わたしの大好きな『マリッジ・ストーリー』でも、冒頭から夫婦でセラピー(カウンセリング)を受けるシーンがありました。
日本ではまだあまり一般的ではないかもしれませんが、カウンセリング先進国アメリカではごく普通のことだと聞きます。カウンセラーの層も厚いでしょうしね。
15年ほど前になるでしょうか。主に職場関連で心がしんどかった時期がありまして。一番つらい時、わたしもカウンセリングを利用していました。大いに助けられました。あのタイミングでカウンセリングに出会えてよかったな、と思っています。心のプロが提供してくれる “どんな感情も吐き出して良い、安全な場” が、必要な人へ、必要な時、届きますように――。
想像以上に○○で、気恥ずかしい……(赤面)
さて、お話を本作『31年目の夫婦げんか』に戻しまして――
主人公夫妻が臨んだ1週間の集中カウンセリングでは、1日目、2日目――と、日を追うごとにどんどん突っ込んだ質問が医師から投げかけられるのです!
「結婚前の二人は、どんな恋人同士だった?」
みたいな質問から始まり、これまでの経緯をひとつずつヒアリング。
次第に、
「何がきっかけで別々の寝室で寝るようになったの?」
などなど掘り下げてゆき、ついには
「最後に二人でセックスしたのはいつ?」
といった、核心に踏み込む内容へ。
・・・
“心のひだ” に触れるような質問であればあるほど、夫アーノルドの心理的抵抗感は大きく強いものに。
「くだらん!」
(相手の医師を指して)「こいつ、大丈夫か?」
と、すごい抵抗ぶり。笑
他人事だから笑って観ていられるけれど、誰だって自分の心の “弱く” て、“無防備” で、“柔らかい” 部分に、よく知らない人が踏み込んで来たら大抵抗します。心理学をちょっと学んだから、わたしにもわかる。それは、大切な心を守るための “防御反応” なのです。
・・・
さらには、医師から
今夜は、お互いに抱き合って一緒に眠ること。
など、カウンセリングの度に予想もしなかった宿題を課されます。
「二人の関係が良くなるためなら」と、毎回、真面目に宿題に取り組もうとするケイ。抵抗感が強くて、どうにも受け入れられないアーノルド。
作中、夫婦の “セックスレス” に関する話題が多く、それが主たるテーマでもあるのですが、コメディタッチで “笑い” の方向に振り切るでもなく、夫と妻それぞれの “心の動き” を描こうとしているせいか、(名優二人を起用しているのだから、そうしないと勿体ないけれど)
コメディだから、もっと笑えるシーンを期待したんだけど、身につまされるというか、気恥ずかしいというか。むー。
(鑑賞時の感想ツイートより)
――な気持ちに。ご夫婦や家族で観る場合は、ご注意を。笑
ストリープとジョーンズの共演は見応えアリ♩
とはいえ、メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズの共演は、やっぱり魅力的! 年齢を重ねた人物の深みや心の機微を、チャーミングに、たっぷり魅せてくれます♡
わたしがはじめて本作を観たのは5年前だったので、またあらためて観てみたら初回とは違う印象になるかもしれませんね。
・・・
ちなみに、本作の劇中に登場するフランス映画は『奇人たちの晩餐会』(1998年)というコメディ作品だそう。
ちょっと気になります♩笑
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