アイスを愛す
頭が痛くて、整体に行った。
ズキズキする痛みだった。
それでも、肩から下は元気なつもりだった。
けれど、蓋を開けてみれば、足がぱんぱんで、前傾姿勢になっていると言われた。
二足歩行に進化しても、私は前傾姿勢で生きていたらしい。
ビタミンCをとるように言われて、「一階のスーパーで買います」と調子の良いことを言った。
一階までちゃんと向かった。動く歩道が運んでくれた。
でも、スーパーの入り口まで来て引き返した。
そこまで来たのに、そこからの動作ひとつひとつ想像すると面倒になってしまった。
ポ⚪︎カレモンがスーパーのどこに陳列されているかなんて、想像もつかなかった。
いや、少し嘘をついた。
調味料コーナーかな、とは思った。
けれど、醤油やソース、ハバネロと一緒に並ぶ調味料にしてはパンチが弱いなと思った。
そんなことを考えて、余計億劫になった。
考える間に、動いていればいいのに、頭が働いてしまうので、私はやっぱり動けなくなった。
身軽じゃなかった。
吉祥寺で「アイスクリーム・フィーバー」という映画を上映している。
正確に言えば、「していた」である。
上映は今日が最終日だった。
私は、吉岡里帆みたさに試写会に応募して、外れていた。
けれど、なんとなく名前が気になって検索したときに表示された夢みたいなピンクの画面が頭から離れなくて、観にいきたいと思っていた。
億劫な私は、それでも自分のやりたいことには貪欲なようで、いやいや最寄り駅まで車を走らせた。
だって、今日を逃したら、映画館で観ることはきっと叶わない。
「サーティーワンアイスを目印に」
アクセスを事前に調べた私は、その通りにアイス屋の目の前を通ってパルコに向かった。
いつもより上質なソファ。足をたっぷり伸ばしても余裕のある空間。それだけで最高だった。なんだかゆるい空気だった。
帰り道。サーティーワンの前を通ったとき、私はアイスに敏感になっていた。前の道でたくさんの人がアイスを食べていて、不思議な心地だった。
そこにアイス屋があるという事実に、私はより真剣に向き合うことになった。
アイス。愛する。アイスを愛する人たちを見つけた。
映画の後、夕飯に選んだタンドリーチキンのプレートには付け合わせのレモンがついていた。
あっと思った。ビタミンC摂取が完了してしまう。
世の中はうまくできているもんだな。
生きている意味がまたひとつ分かった気がした。
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