Haru

蔵前の淡い青空には、コーヒーが似合う https://bio.link/haru96

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マガジン

  • 短編小説

    架空のおはなし

  • 節目宣言

    なにかを跨ぐとき

  • 旅の途中で

    旅の途中で考えたこと

最近の記事

いちから

分かれと出会いの季節である4月に、社内異動をすることになった。 サラリーマンだったら当たり前に来る異動というものは珍しくもなく、もっといえば大きく組織が変わるわけではないので、傍から見たらそこまで大きい変化とまではいかない気もする。 ただ、個人的にはそれなりに大きい変化だと思っている。 それは、前の部署にいた期間が長かったことや、業務領域が異なる部署になることへの振り幅の大きさや、異動先が元々やりたかったことに近いことができそうだという期待感も、変化を強調する要素である。

    • 幻影のシンガポール

      チャンギ空港に降り立った。そこに無駄なものはなく、逆にいうとすべてが無駄なものであった。 電子化された入国手続き、そこにスタンプなんていらない。必要なのは自分の顔と指紋である。整形しても顔認証は通るんだろうか。そんなことを考えながら登録をしていると、指紋認証が上手くいかなかったみたいで何回か登録する羽目になった。気にするのは顔より指紋だったか。 そして入国すると目にするのは、空港直結のショッピングモールであるJewelという大層な名前の施設。日本語のものや見慣れた店も多く、意

      • 27歳の7Rules

        4年目になった7Rules企画。 この瞬間に考えている行動指針みたいなものを、未来の自分のために残しておく気持ちで書いていきたい。 記録をつける ここでいう記録とはデータというよりは、主観的なものの見方を残しておくということ。日記を書いたりnoteを書いたり、発信のためというよりは自分が前を向いて生きていくために。 身体を動かす 1ヵ月に50km走る。誰かと一緒にボールを蹴る。ゲレンデに行ったりゴルフ場に行ったりして、身体を動かすことを楽しむ。 無心で汗をかく習慣はどこか

        • #2023

          新婚生活の始まりと共に、「4年ぶり」の対面イベントも増えた2023年。非日常と日常のコントラストが強くなり、より生活リズムが落ち着いてきたけれど、あっという間に1年が経ってしまった。自分の中では恒例になっているので、今年も1年を振り返りたい。 このnoteも実に5年目。きちんと積みあがってきている。 1月 妻の実家から始まったお正月、結婚してから当たり前に話題に出るようになり、本格的に家族が増えたと感じた。 さらに年明け早々から金沢、山口と男旅。久々の道中一人旅と、今年も騒

        いちから

        マガジン

        • 短編小説
          15本
        • 節目宣言
          9本
        • 旅の途中で
          5本

        記事

          27歳のハローキャリア

          はじめに キャリアとは、難しく考えれば考えるほど複雑なものになっていく。一方で、何も考えずに働き続けることで付いてくるものでもあるため、非常にシンプルなものだと捉えることもできる。 基本的にはシンプルな捉え方をしたい。しかし、過去の自分がただ目の前のことを頑張っただけではなく、未来のことも考えたうえで意思決定してきたことが積み重なって現在の自分ができている。そのため、「分からない」に逃げずに向き合おうと思う。 世の中で使われている「キャリア」という言葉の定義もなかなか曖昧な

          ¥3,000

          27歳のハローキャリア

          ¥3,000

          旅路

          人生とは旅である。 果たして本当にそうなのか。 旅とは、住む土地を離れて他の場所にいることであることから、日常と対比させる形での非日常である。個人的には、元々の住む土地や故郷がないと、旅は成り立たない気がしている。 だから、僕の中では、旅は旅なのである。 一口に旅といっても色々なものがある。大人数でワイワイと行くものもあるし、一人で遠くまで行くときもある。観光的に予定をきちんと立てて動くときもあるし、何も決めずにその時の思い付きを大切にすることもある。 旅に行って後悔をする

          ロンドンと僕

          昔から被り物が大の苦手だった。 デパートの屋上で活躍する被り物たちも、舞浜で活躍するネズミの被り物たちも、不気味で理解できなくて、大声で泣いて全力で目をそらした。 同じような理由で、外国人も苦手だった。 身体が大きくて、目の色が違って、使っている言葉も違うのでなにを考えているか分からないくせにどんどん距離を詰めてくる。 流石に物心ついてからはそんなことを思わなくなったけれど、なんとなくの記憶なのか、帰省する度に両親と祖父母から繰り出されるエピソードを後天的にそうだと思ってし

          ロンドンと僕

          パリから足をのばして

          狭い部屋に置かれたMarshallのスピーカーからMaroon5のSundayMorningが流れた。 もう朝か。 授業がない朝は素晴らしいものだなあ。 さて、いつまで続くものか。 そろそろ仕事でも探さないとな。 フランスで生まれ育ち、一旦はフランス国内の大学を出てパリで仕事に就き、結婚して、自分が思い描いたパリジェンヌになれた。 そう思ったのは一瞬だった。 元々言い争いが多かった私たち夫婦は、なにもしなくても別れていたと思うけれど、結局は子供が欲しい夫と妊娠したくない私

          パリから足をのばして

          妻のこと、のこと

          この文章は、手紙か記事か、エッセイ、観察日記。どんな言い方をしてもあまりピンとこない。個人的なただの記録である。生活の記録。 こんな一文から始まる「妻のこと」という非常に個人的な連載を時々書いている。それは昨年の11月から。つまり、引っ越しや入籍が無事に終わって少し生活に余裕が出てきてから。 しかし、その読者は基本的には妻一人だ。公開するほどの内容は書いてないし、特別感も出しておきたい。 だからこそ、まさかその連載を結婚式のプロフィールブックに書いて参列してくださった皆様に

          妻のこと、のこと

          恩返し

          東日本大震災の時、僕は中学生だった。 どこにでもいるような、サッカー部の中学生。 東京にいたので、被害は多少あったものの生活に関わるようなレベルではなかった。つまり大震災は、テレビの中の話である。 その時に、君にできることはいつも通りサッカーを頑張ることだと言われた。それを言ったのは顧問だったか、コーチだったか、親だったかは覚えていない。しかし、言われた事実はなぜだか覚えている。 それは、不思議な感覚があったからだと思う。 大震災があったから、寄附をしよう、自粛をしよう、電

          恩返し

          ルクセンブルクの影

          「結婚してほしい。」 彼は私に跪き、そう言った。 次の瞬間には小さな箱が開けられていた。 幼いころから思い描いていた夢、素敵なお嫁さんになること。 それが叶う瞬間だった。 「はい、これからよろしくお願いします。」 そう言って私は泣き崩れた。 今までの努力が報われた気がした。 「ここに着いてきてほしい。」 彼は夕食を食べながらそう言った。 次の瞬間には、世界の歩き方が開かれていた。 投資銀行に勤める彼の夢、海外の本社で働くこと。 それが叶う瞬間だった。

          ルクセンブルクの影

          古都クラクフに根付く因縁

          カツカツと乾いた音が、軽快に鳴り響く。 私の手捌きは安定感があり、いつものルートの歩みを進めていく。 歩みといっても、私自身の足ではなく、私が握っている手綱の先にいる2頭の馬の8本の脚である。 私の父は、立派な警官だったと聞く。 リビングには、父が馬と一緒に中央広場で胸を張って立っている写真が飾ってある。 近所からは尊敬の眼差しで見られていて、あまり口を開かない母親も、父のことになると一家の誇りのように話していた。 そのためか、私は幼いころから恵まれた子どものように扱われ

          古都クラクフに根付く因縁

          あの子とブリュッセル、時々アントワープ

          「しょんべん小僧は残念スポットなんかじゃない。」 「EUの本部は絶対にここはじゃない。」 「私も巨人の手を投げられる人生がよかった。」 髪の毛を眉毛からだいぶ上で切りそろえた彼女は自信をもってそう言い放った。 卒業旅行に行ってから別れてしまった彼女の語録を時々思い出してしまう。 しょんべん小僧はやっぱり思ったよりだいぶ小さいもので街角にありすぎるし、EUの本部の近くにたくさん人がいて怖い思いもした。 アントワープにデイトリップをしたときは、巨人の手を投げている像が

          あの子とブリュッセル、時々アントワープ

          ひとこと

          僕は住む場所を変えるたびに、その街に馴染もうとする。 その街の色と、象徴的なものを考える。 ある一場面を思い出すと、芋蔓式に走馬灯のように自分が見た景色が映る。 備忘として。 萌黄色の神戸の坂と、異国情緒漂う港街 赤いスニーカーと吉祥寺 藍に染まった永代通り、一人歩く門前仲町 緑の自転車で走る清澄白河 蔵前の淡い青空には、コーヒーが似合う

          ひとこと

          気分の向く先

          なんのドラマで、いつ読んだ漫画で見かけたのだろうか。 行きつけの店があり、店主と他愛のない会話をしながら一人で一人でもない時間を過ごすという一場面。 本当はそんな大人な時間の使い方に憧れていた。 自分で自分の時間の使い方ー行く店、寄り道、オーダー、話し出し-を決めるということに、憧れていた。 学生時代も、ハモニカ横丁に入り浸り、よく行く店はあった。しかしその想いは一方的なものであり、あくまで顔の見えないお客さんである。 ある日、門前仲町にも慣れてきた日、少し勇気を出して気

          気分の向く先

          アムステルダムの裏側

          ドラッグとセックスの街、アムステルダム。 そんなのは虚構だ。 アムステルダムは優等生のようだ。 ドラッグとセックスを押し売りしておいて、実は水の都であり、風車の街である。 そんなことを思ったのは、セックスを売りすぎてしまったからだろうか。 若いころから神戸でのびのびとソープで働いていた私は刺激だけが欲しくなった。 努力なんてなにもしないまま、若くしてヨーロッパに挑戦するサッカー選手のような気持ちで海外進出した。 オランダではまんまるなお目目より切れ長の艶やかな目

          アムステルダムの裏側