上京は音楽と共に

あんなに楽しみにしていた”東京”も、地元を去る時はそんな気持ちはほとんど消えていた。

普段泣かないおばあちゃんが、見送りで泣いていたのも悪かった気がする。

上京しようと思った理由であるあの子もいなくなってしまったし、空虚と疲労を抱えたまま地元を離れることになった。

新幹線の中で幸せの数を数えてみたけど、一つも思い浮かばなかった。

だからこそ変わろうと思った。

とりあえず田舎人だとバレないように厚手の”嘘”を塗り固めて東京の街に降りた。

Suicaの使い方も駅の行き方も分からない時点でとっくにバレていた。

ようやく辿り着いた一人暮らしの最寄り駅。

プラットホームから見えた景色はどこか虚しくて、地元の優しさが残った胸はどこか苦しかった。

それでも動き出した電車とともに、ゆっくりと前へ歩き出した。


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