女の子の日と言っていた
スーパーの一際目立つスペースに、”ひな祭り”のあれこれが並んでいた。
流石に早すぎんか。
と、向暑はる以上にせっかちな店の様子を目の当たりにして、特に意味もなく自分が焦ってきた。
でもいつの間にか、ひな祭りもとっくに過ぎてしまって、その後にやってくる素敵な春を待ち侘びるのだろう。
毎年そんな感じな気がする。
安売りコーナーに移ったら買ってあげよう。
向暑はるにとっては、ひな祭りなんてそんなもん。
心の中で、女の子が主役の日と決めているからなのかもしれない。
小学生の時は”女の子の日”と呼んでいた。
特に変な意味ではないし、というか小学生にしてそんなこと知っている方がやばい。
子供の日が”男の子の日”と言われるくらいだから、”女の子の日”があっても普通だと思っていた。
でも今思い返すとちょっぴり恥ずかしい。
そういえば、ひなあられも菱餅も桜餅も、かれこれ10年以上は食べていない。
幼稚園のとき、幼馴染と一緒に食べたことが記憶の中では一番新しい。
もうとっくに昔のことなのに、味と匂いは今でも鮮明に覚えている。
先生が牛乳も一緒に出してくれて、あんことの相性が抜群だった。
幼馴染は多分向暑はるのことが好きだったんだろうけど、その時は食べることに夢中で横にいたことしか覚えていない。
ごめんね。
気づけば踵を返していて、例の目立つスペースの前に立っていた。
桜餅とひなあられを一つずつカゴに入れる。
恋も愛もちょっと遠ざけている今は、あの頃みたいに食べることに夢中になってもいいと思った。
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