500円のモーニングセット
都会の駅周辺ならどこにでも見かけるカフェでパソコンを開いていた。
モーニングセットで頼んだトーストは、家で食べる食パンとなんら変わらない気がした。
500円という値段に惹かれたはいいものの、よく考えたらスーパーなら5枚も買える。
まあいいか。
そんな節約思考をコーヒーと共に食道に流し込んだ。
外と内を分けるガラス窓の向かいに座ったため、外の景色がよく見えた。
スーツを着た営業マン、仲睦まじそうなカップル、コスプレをした女の子、ギターを担いだバンドマンみたいな人。
向暑はるの田舎ならその全員が注目の的として誰かの視線を奪ってしまうものだけど、
ここ都会は、全員が”人”として括られて生存している。
だから何も浮いていないし、目立ってもいない。
気にしなければ何も感じない。
数年前、友人と一緒に地元に帰ったことがあった。
全身白を基調としたコーデの彼は、都会の派手な雰囲気にハマっていて隣にいる平凡大学生コーデの向暑はるが逆に浮いていた。
でも田舎にたどり着けばそれはさらに逆となり、浮いているのは彼となった。
目立つ格好だね。と迎えに来てくれた彼の母親は言っていたけど決して褒め言葉ではないのだろう。
こうして500円のモーニングを食べていることも家族が知れば、多分朝ご飯くらい家で食べなさいと言うだろう。
でももし地元にこのカフェができれば色んな人が利用するだろうし、
このカフェ×朝というなんとも言えない心地の良い空間に500円を軽々と落としてしまう気がする。
結局”慣れ”というのは”浮き”があってこその結果だと感じた。
窓の外にちらほら歩きタバコが映る。
これだけはいつまでも浮いていてほしい。
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