プライベート用のお金なんてものはない
丘の上にあるマンションの角部屋は明かりが灯っていた。
既に日は沈んでいて、周りに何もないせいか妙に目立って見えた。
カーテンを閉め忘れてるぞーと、そこの住人にテレパシーを送る。
なぜかテレパシーが帰ってきた。
そこの住民は向暑はるだった。
急いで帰るが、無駄に電気のついていた8時間は取り戻せはしない。
電気代、電気代、電気代、、、
と脳内が一つの名詞に侵食されてしまう。
そういえば昔、”脳内メーカー”というものが友達の中で流行ったけど、今やれば間違いなく”光”と”金”で埋め尽くされているだろう。
暖房をつけ始めたせいか、先月の光熱費は今までとは比べられないレベルの金額が請求されていた。
すぐに給料と照らし合わせて、今月は支出の方が多いことに気づく。
顔面蒼白を通り越して、多分透明になった。
こんな時、現実を見たくなくて何度も計算するけど、結果が変わったことは一度もない。
まるで先月はタダ働きをしていたような思いが身体を駆け回る。
これが関東で一人暮らしをしながら奨学金を返し続ける人間の末路なのかもしれない。
奨学金という名前に騙されて、借金ということを忘れていた。
まあ田舎人が大学生活を満喫したのだからしょうがない。
服でも売ろうかなと目先のお金しか考えないくらいには、貯金ができていないことに対して不安になっている。
そんなことを考えながら、今日も社会人という皮を被るためのスーツをベットに脱ぎ捨てた。
カーテンがまだ空いていたことに気づく。
透明だからいっか。
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