見出し画像

「シン・ゴジラ」と「踊る大捜査線」が何度見ても面白い理由

映画「シン・ゴジラ」をただの巨大怪獣映画だと思っているあなたへ

2016年に公開された映画「シン・ゴジラ」を2020年の今さらになって観ました。

公開当時の評価が高かったのは覚えていたのと、監督が庵野秀明とのことで、エヴァンゲリオン世代の自分としてはかなり高い期待を寄せて遅ればせながら鑑賞。と言っても、見たのは数ヶ月前なんですが、そこからかれこれ5~6回は観たかな。数ヶ月で5~6回観たというのが物語っている通りとても面白い作品。何が面白いって、とにかく「リアル」。「巨大怪獣が出てるのにリアルって、、、」と思う方もいるかもしれませんが、リアルなんです。ただそのリアルは決してゴジラの描写がリアルな訳ではありません。極論あの映画は「ゴジラ」の描写が無くてもきっとリアルで面白い作品。具体的にどこが面白いかは後述しますが、何が面白いのかを考えた時に思い出したのが、「踊る大捜査線」。僕個人的に「踊る大捜査線」も面白くて好きな作品の1つなんですが、その「踊る大捜査線」と同じ面白さを感じたというのが率直な感想。どこが?って話よね。では、その辺り詳しくお話しします。※BGMが似てるとかそんな話ではないです。

「シン・コジラ」と「踊る大走査線」ってジャンルは何?

よく映画とかドラマを「●●モノ」って言い方しますよね。例えば「恋愛モノ」とか「サスペンスモノ」とか。じゃぁ「シン・ゴジラ」と「踊る大捜査線」はと言えば、普通に考えると「シン・ゴジラ」が巨大怪獣モノとかパニックスリラーモノとかで、「踊る大捜査線」は刑事モノってくくるのが妥当な線かな。でも多分違うんです。実はどちらも「業界モノ」と言われるジャンルになるんじゃないかと言うのが僕の考えです。「業界モノ」とは、所謂様々な業界の裏側を掘り下げるようなモノ。華やかに見えている業界の裏の泥臭い部分やダークな部分などを含めた世界観をリアルに描くもの。「シン・ゴジラ」では政治家、とりわけ内閣の内部をリアルに掘り下げていて、自衛隊の火気使用には総理大臣の許可がいるとか、官房長官の会見を開くのにも会議が必要とか、巨大生物対策に自衛隊を使用するのに法案を通す必要があるとか、米国からの圧力とか今までの巨大怪獣モノでは無視されてきたリアルの部分。ゴジラの出現で「アクアラインの通行止めや、羽田便の欠航による経済的損失」というセリフが出てくるが、今までの巨大怪獣映画で「経済的損失」を気にかけたシーンがあっただろうか。「踊る大捜査線」も同様に今まで描かれることがなかった警察組織内のキャリア・ノンキャリアの待遇差別とか、警察組織内の出世・派閥・学閥、所轄署の現場においては拳銃携帯許可の発令や、張り込みに行く際の総務部への申請書の提出、経費の精算や経費削減の指示などなど。「踊る大捜査線 THE MOVIE」の名シーン「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてんだ!!!」のセリフでお馴染みのシーンは、まさにこの警察組織内の縦割りによるノンキャリアの待遇差別により犯人を目の前に逮捕に踏み切れない湾岸署(所轄)の青島(織田裕二)が怒りから発した名台詞。

因みに、本来の巨大怪獣モノは、未知の巨大生物が暴れ倒して、宇宙防衛軍的な組織が新開発の近未来武器で倒す感じ。本来の刑事モノは街中でタカとユージが犯人に拳銃発砲しまくり覆面パトカーで街を暴走する感じ。←「あぶない刑事」の話、伝わるかなぁ。。。

では、今までの巨大怪獣モノや刑事モノの概念を打ち破った「シン・ゴジラ」と「踊る大捜査線」がなぜ大ヒットしたのか?決してたまたまで片付けられるものではなく、ちゃんと日本人に「ウケる」要素がこの2作品には詰め込まれていたんです。

「シン・ゴジラ」と「踊る大捜査線」ヒットの核心

日本人が好きなものって何だと思いますか?もちろん映画とかそんなの関係なく細かいこと言えば色々出てくると思うんですが、映画を含めた映像作品において言うと、

①スキャンダルや裏側の覗き見

②弱者の反逆

の2つが大きくかかわってます。

①のスキャンダルや裏側の覗き見は、言わずもがなみんな大好きでしょ。オフレコの話とか、毎週どんな芸能人の不倫の暴露が出てくるか文春砲楽しみに待っている人も多いしね。井戸端会議で近所の奥さんの悪口とか言ってるオバさま方と同じ感性と言っていいのかな?とにかく自分が知らない裏情報とかスキャンダルを知りたいという欲求を満たしてくれるのが①。だってぶっちゃけた話、芸能人が誰と不倫しようと、安倍さんが森友学園とか加計学園へ忖度しようと、どーでもよくない?

②の弱者の反逆はヒット作を見れば統計的に日本人が好きな要素として浮き彫りになってきます。言い方を変えるとジャイアントキリング。「半沢直樹」も「下町ロケット」も「ノーサイドゲーム」もみんなこの手のお話。立場的に弱者である者が強者に立ち向かい勝利を掴んでいく。「シン・ゴジラ」では人間が未知の進化系生物であるゴジラに立ち向かう。裏テーマとしては弱腰外交の日本が国連安保理やアメリカに立ち向かうという姿が描かれている。「踊る大捜査線」で言えばノンキャリアの警察官が国立大卒の警察庁キャリア官僚に立ち向かっていく。見ててスカッとするという要素ももちろんあるだろうし、弱者側に自分を重ねて感情移入するという要素もあるんだと思う。日本人の多くは自分を弱者側の人間だと思ってるんだよねきっと(自分も含めて)

でも、業界モノだからなんでもヒットする訳ではないのは当然の話。描き方のリアルさや作品としての完成度や配役など様々な問題故なのかもしれないけど、この2作品に関しては、徹底したリアルさと様々な業界の中でも「政治」と「警察」という権力が集中する業界の裏側だからこその面白さと言ってもいいのだろう。同じく業界モノと言える2008年に公開された「クライマーズ・ハイ」は堤真一主演ということで配役も華やかで、原作の小説も非常に評価が高く、映画も素晴らしい作品だったが、そこまでヒットはせず。なんでかって言われると、スポットを当てた業界が「新聞社」という、僕が働いている出版業界と非常に近い世界。やっぱり「政治」とか「警察」に比べると、、、地味だったのかなぁ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?