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ビジネスでアートが注目される今、クラシック音楽を僕は再考する

この記事は2019年3月に草稿を残したまま熟成されていました。

約一年の時を経て公開に至ります。前半部分は2019年3月当時の内容です。

「デザイン思考」の波が来ましたね

「デザイン思考? まだ言ってるの?」という方もいらっしゃるかもしれません。書籍もたくさん出ましたし、巷では関連セミナーも開催されているようです。

でも、デザイン思考がしばらくビジネス上で注目され続けるのは間違いないと思います(お金も落ちるし)。日本人に限らず、ツール好きなのは古今東西かわらずで、なんか注目されてる、どっかで耳にした、もしそれが必要なら、いったいどこでどうやったら身に付けられるのか? が次の疑問です。

デザインを教育する場所といえば、やはりアートと結び付けて…「東京芸術大学 デザイン思考」で検索…でも、特に記事は見当たらない。
「東京芸術大学」関係でビジネス系の話題となるニュースも無い。

他の大学は? と探してみると、ありました。

京都造形大は、デザイン思考関連の本を書いた佐宗さんという方が関係していらっしゃるので2016年に既にこういう動きを取ってますね。

ちなみに佐宗さんが書かれた本↓↓は読みました。
(もう1冊別の方が書いた一番有名なのを読んだけど、正直、あまり評判ほどはイケてないと思いました…なんでそんなに評価が高いのかさっぱりわかりません・・・お願い誰か教えて)

デザイン思考に関する大学教育については、まとめ記事まで書かれていて、東大とか慶応とかが率先してやっている。千葉工大、エンジニア系が積極的に取り組むのもすごく面白いですね。

東京芸術大学はあまり出て来ない代わりに、世界に目を向けると「ロンドン・カレッジ・オブ・アート」は話題に事欠かない・・・スプツニ子!さんをはじめ、日本人も世界的に活躍される方が出て来ていらっしゃって、すばらしいですよね。

そして僕は思う、「音楽」なにやってんだ、と

僕はデザインとか絵画、造形など、一般的にアートと結び付けられるものは門外漢です。

代わりに、小さい頃から音楽(ピアノ)をやっていて、高校では吹奏楽、大学ではオーケストラに取り組み、社会人になってからも仲間と一緒に演奏活動を続けてきました。
※ この後、子どもが生まれたのをきっかけに音楽活動は止め、家族で美術館通いを始めました。

音楽も広い意味でのアート(芸術)で、様々な分野がありますが、僕の場合はクラシック音楽が専門です。

一応断っておきますが、僕は狂信的なクラシック信者ではありません。色々な音楽があって当然です。

そもそも西洋民族の伝統文化であるクラシックに、長く独自の伝統文化を持つ日本は、そして、日本国民は、なぜたくさんのお金を費やしてきたのでしょうか?

僕の母親も兄も音楽大学卒です。クラシックに時間とお金をたくさんかけてきました。はたから見ていて(そして僕自身もやってみて)、別に悪いことがあるかというと、別にない。

むしろ、音楽的な感性や、ひたすらスキルを磨きあげる習慣、練習の重要性を理解することは、いくつになっても大切だと感じます。

そして何より、音楽とコトバを通じた人とのコミュニケーションや、カタチがなくすぐに消えてしまう表現を一緒に創りあげる協働については、他のアートにはない音楽ならではの醍醐味があると言えます。

でも、それってクラシックだけに限らないんじゃない??

まさしくそのとおりなんです。バンドでもジャズでもロックでも民族音楽でも、雅楽でも同じなんです。

僕は語りの切り口としてクラシックしか持ち合わせいてませんので、この先はすべてクラシックを前提に書いていきます。

音楽のささげもの

仕事で頭も体も疲れきった平日の夕方ごろ、演奏会に向けて仲間と一緒に練習をすることがあります。すると、不思議なことに頭も体もすっきりして「あれ、もっと仕事できるんじゃないか?」みたいなキケンな精神状態へと入ります。バッハが言ったらしい「音楽は心のちりを払ってくれる」-まさにこれですね。

Ted Educationでは、楽器の演奏がいかに脳に良い影響を与えるかアニメーションで詳しく教えてくれます(日本語字幕を右下の設定から表示できます)。

楽器演奏は視覚、聴覚、触覚とあらゆる感覚器官を使って創造的な活動を行うため、きっと頭にいいんでしょうね(科学的なことは知らんけど)。

クラシック音楽の良い所は、オーケストラという大人数で楽しめることだと思います。数時間、ひとことも発せずに黙々と楽器演奏のみで曲を奏で、ひとつの作品を創り上げるシーンは、ある意味奇妙ですが、組織の力を連携プレーで発揮するときですね。

次のTEDトークは、言葉を使わずに指揮者がいかにオーケストラという職人集団をリードするか、非常に面白く紹介しています。

アメリカのロサンゼルスで活躍する有名な指揮者ティルソン・トーマスのTEDトークは、喜びや悲しみ、驚きなどの感情と音楽の結び付きについて実話や実演を交えながら、とても楽しく教えてくれます。これはぜひ見ていただきたい。

音楽のヒント

僕が思うのは、クラシックをはじめとして音楽を聴くことや演奏すること、音楽について語ることは「デザイン思考」と同じようにビジネスや組織運営でも活かせるヒントがたくさんあるんじゃないか、ということです。

ちなみに、過去のノーベル賞受賞者を対象にした調査では、半数以上の方が「趣味は音楽」と答えたそうです(すみません、半数以上が正確だったかわかりませんが、かなりの割合の人が音楽を始めとしたアートを趣味としていたのは間違いないです)。

別に無理やりビジネスに結び付けなくてもいいのですが、僕が思いつく限り書き出してみます。

音楽を聴く
普段、仕事で使っていない脳を刺激して新しい発想を促す。リフレッシュして生産性を高める(ややブラックな香りもしますが笑)。

楽器を演奏する
五感をフルに刺激してリフレッシュする(社長がオフィスに音楽室を作り始めたらみなさん注意しましょう)。最近は、音感がなくてもちょっと練習したらいい音が奏でられる楽器も増えてきました(電子楽器など)。

練習する
一度でうまく行くことはありません。練習を積み重ねることで、特定の動きを「身体化(体に宿す)」させることで、できなかったことができるようになります。仕事でも、ツールの操作やプレゼンなど、練習が必要な場面がたくさんあることを教えてくれます。できるようになるまで繰り返すのはつらいですが、乗り越えられたとき、できなかったことができるようになった楽しさも味わえます。

教えてもらう
音楽は、他人から教えてもらう方が上達が早く、自分のクセも知れます。良い先生にめぐり会えると、自分の能力が引き出され、知らなかった自分とも出会えます。楽器をやっていると、他人から素直に教えてもらうことの重要性を体でわかっている感じがします。

鍛えられる
もちろん、人から教えられるのは良いことばかりではありません。一つの壁を乗り越えるときには厳しく自分と向き合うことも大事です。その点、ツッコミ慣れするメリットもあります(天才プレーヤーは別かもです)。それと、できるようになるまで挑み続けるメンタルも備わります。

楽譜を読む
楽譜は、図形と算数の組み合わせによってできています。楽譜を読むことは、脳の様々な部分を同時的に活性化させることになるので、これまでと違った頭の使い方ができるようになるかもしれません。楽譜を読むワークショップなんか楽しそうですね♪

アンサンブル=協働する
少人数でも、大人数でも取り組めるのが音楽のすばらしいところです。チームプレーがだんだんと求められる時代になったような気がするのですが、他者とのアンサンブルを通じた協奏体験は、何ものにも代えがたい経験だと思います(ただし、誰とでもうまく行くとは言ってない)。

ハーモニー=調和に感動する
ビジネスでは感情の機能が見過ごされがちではないでしょうか。職場での感情表現が許容されているかどうかは、働き方の質に影響します。音楽が生み出すハーモニーは、人の集団の力をまざまざと体感できる瞬間だと思います(もちろん、そのハーモニーを生み出すまでに道のりがあるんですけどね…)。

即応性
クラシックは楽譜に沿って淡々と演奏しているように見えますが、実は、0.1秒単位くらいでそのときそのとき起きていることに、演奏している人たち全員が双方向にやり取りをしながら音楽を紡ぎあげています。
ふとした動作やアイコンタクト、微妙なリズムの揺れ、歌い方の変化、プレーヤーの調子、湿度(これ意外と大事)や気温、風(エアコンで楽譜めくれるとか)、体の動き(やたら激しいやつはうざったかったり)など、様々な要素が相互に影響しています。まさに音楽が「時の芸術」と呼ばれるゆえんだと思います。
指揮者も、オーケストラ全体を観察し、耳を傾けながら、即座に方向性を定めていきます。その場その場で、柔軟に対応していく態度を身に着けることは、仕事でも重要ですよね。音楽でもさせたい少し柔らかくしたい人、その辺にいません?

即興性
ジャズが代表的ですが、クラシックも演奏を重ねていると、ふとしたときに「こうしたらいいんじゃね?」みたいなアイデアが演奏中に浮かんできます。アンサンブルでは、それを何気なくやると気心知れた仲間たちはついていきてくれます。音楽は「言葉のない対話」なんですね。アイデアを創発するという意味で、音楽は絶好の材料だと思います。

分析する
なぜこの音楽は人を元気にさせるのか、なぜこの曲を聴くと悲しくなるのか、楽譜を読めなくても曲について考えることができます。楽譜が読める人は、オーケストラ作品のスコアを読んだり、ピアノ曲を読んで、あーだこーだと分析して語り合うこともできます。
「分けて考える」という、仕事でも重要なスキルがここにもあります。

戦略を立てる=ストーリーを描く
例えば、3分間の曲があるとして、これを3分間延々と同じ調子で演奏することは普通ありません。3分間の中に、作曲者が意図した様々なドラマや仕掛けがあり、プレーヤーは現実問題(体力や力量)と闘いながらその意図を実現しようとします。
このプロセスで大切なのが「先の展開を考えながら今の動きをする」ことですね。後先考えずに動いて周りに迷惑ばかりかける人、いますよね(白目)。

リードする
アンサンブルにしても、オーケストラのプレーヤーや指揮者にしても、練習や本番の演奏をコミュニケーションを取ってリードすることが、様々な場面で求められます。
特に、指揮者は自分は演奏しないくせに最高の音をオーケストラに鳴らさせる、とんでもない存在です。あれ、会社にもいますよね? 自分では実務をしないけど、最高の実務をさせるべき人物が。良い指揮者がまれなように、良い社長やマネージャーもまれです。しかし、数が多いのは社長やマネージャーです。優れた指揮者のあり方を学ぶことは、優れたマネジメントを学ぶことにつながると僕は思います。

言葉にならない思いや表現を言語化する
音楽に限らず、芸術では言葉にならないものを、言語で伝える場面がたくさん出てきます。演奏のことだけを言っているのではなく、練習段階でどのような音楽にしたいのか、そのメロディをどのように弾いてもらいたいかなどを言葉で伝えなければならないのです。これは、その人のボキャブラリーや表現力を磨くことになります。「売上あげろ!」「がんばれ!」しか言えない人はそこんとこよろしくって感じです。

非言語コミュニケーションを磨く
音楽は、音だけで表現するものではなく、表情や体の動きも交えた創造活動です。行き過ぎはどうかと思われる向きもありますが、日本人はやり過ぎてちょうどよいくらいのようです。音の表現そのものも、自分が「やってるつもり」なのが、録音とかで聞いてみると全然そんなことなかったりします。自己主張や自己表現力を磨けそうですね。

楽しむ
色々書いてみましたが、最後はこれかなと思います。僕個人は、楽しむためには「感動」があるかどうかが重要だと思っています。音楽だけでなく、仕事もそうだと思います。その辺の態度は、音楽から教わったクセかもしれません。できないことでもチャレンジしてみるとか、できるようになるまでこんにゃろと思って繰り返したり、他者とのハーモニーや協奏を楽しんだり。

あぁ、音楽ってすばらしいなぁ。

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