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ものづくりのベクトルを変える

私たちは、「貼り箱(はりばこ)」という紙製の商品パッケージ/化粧箱を企画・製造しています。典型的な町工場です。

私たちの業界では、地域の小さなお菓子屋さんから貼り箱の注文を受けたり、もしくは印刷会社やパッケージ会社などから「下請け」として受注することが多くあります。

特に印刷会社などからの注文は、数ある下請け業者に相見積もりを取って安価なところに注文を出す。みたいな、昔ながらの慣習があります。

昔はそれでも何とか成り立っていたようですが、原材料や人件費が高騰する中で価格を中々上げてもらえずに、停滞しているところが多くあります。
発注側にも問題がありますが、受ける側もそれに長年抗えずにいることも事実です。

私より上の世代(下の世代も似たりよったりですが)の経営者はそういうやり方が染み付いているため、中々変えることが出来ません。しかしそんなやり方では、現代においては売上も利益も出すことができません。

日本のものづくり(製造業)は、世界的にみても確かに技術力が高く、「匠の技」や「職人技」なんてこともよく言われます。
しかし私は、この「匠の技」「職人技」という言い方が好きではありません。

確かに響きはいいですし、特に日本のメディアはものづくりと言うとすぐにこの言葉を使いたがります。「ものづくり=匠の技」という固定概念が支配しています。
もちろん真実なのもたしかですが、それにあぐらをかきすぎている感があります。

すごいハイスペックなもの(半導体製造装置やマシニングセンタなど)は別ですが、比較的誰でもつくれる町工場レベルのものづくりとは一緒にできません。

末端の製造業の場合、どうしても「スペック重視」になってしまいます。それは価格や納期も含めてです。
そのベクトル上で戦い、そのベクトルを変えるという発想がありません。同じやり方を何十年もやっているので、仕方ないことかもしれませんが、発注側もそのスタンスが変わらないのです。

私は元々「この道一筋」が性に合わないため、今の家業(私が3代目)に入るまで約10年近く、家業とは全く違うことをしていました。放送局のテレビエンジニア、保育士、海外生活でレストランの皿洗いからカメラマンまで。
とても遠回りな生き方ですが、今に思うとそれがすごく良かったと感じています。

今の業界しか知らなかったら、それが「常識」として疑問をいだかなかったかもしれません。違う業界を経験したからこそ、業界に違和感を感じたのでしょう。

私の場合、好奇心旺盛というのもあって、いろんなものに興味を持って足を突っ込んで来ました。笑
その過程で素晴らしいクリエイターの方々に出会い、たくさんの気づきと学びをいただきました。

ものづくりというスペック(ハード)重視から、そこに関わるソフト(デザイン、ブランディング、コミュニケーション、マーケティングなど)という全く違うベクトルに変えたことが良かったと感じます。

そのおかげで、今の自分と事業があると思っています。
興味を持っていろんなことに足を突っ込むのも、回り回って人生いいことにつながると感じる今日このごろです。

貼り箱の企画・製造:村上紙器工業所


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