2019年12月の記事一覧
自作の推し短歌ください・⑦
ようやく最後の歌です。2019年早かったな。
青い花をください肌寒い朝にちょっと笑ってしまうくらいの / 街田青々
青い花を、ある程度親しい相手へプレゼントするために買おうとしている状況を思い浮かべた。
寒色系であることから青色には低温、そこから展開される冷静さのイメージがある。だからプレゼントするものとしては、「情熱」や「愛」のイメージに直結しやすい「赤い花」にくらべて、親しいながらも少し距
自作の推し短歌ください・⑥
バターナイフはバター塗ってりゃいいんだよとバターナイフがいうかなしさよ / 白水ま衣
一見、とぼけた味のある文体で親近感のようなものを感じさせるが、歌の意味内容は自虐の悲哀がただよう。
ナイフであれば食事中の「切る」という行為の必要な場面で重宝されるが、バターナイフはバターを取り分けて塗る、ぐらいしか使い道がない。(というか、そのための専門道具だから、用途が限られているのが普通なのだ)
その使
自作の推し短歌ください・⑤
みなさんめりーくりすますです。ちょっと時間が空きました。すみません。
ゆるすとふ音はやはらか花束が崩れぬやうに抱擁をせよ / 7235(旧名・芳原わらび)
この一首にしっかり意味を通して読むとするなら、「〈ゆるす〉という音はやわらかいので、花束が崩れてしまわないように抱擁をしなさい」という読み筋が一番しっくりくるように思った。
「抱擁する」ことは能動的な行為だが、「崩れぬように」は「崩さぬよ
自作の推し短歌ください・④
好きな人はいなくて殴られてもなくてでも痣ができてはなおる / 小祝愛
疎外の極北のような歌だと思った。
「好きな人はいない」という好意的な人間関係の外にあり、「殴られる」という行為を通じて立ち上がる憎悪的な人間関係の外にもある中で、一番身近に思われる自分の身体さえも、外界の刺激に確かに反応するのにもかかわらず勝手に治癒してしまう。どこにも自分の意思の関与を感じられておらず、かつその痛みの感覚さ
自作の推し短歌ください・③
気付いたら2日続けてお休みしてました。明日もまたお休みします。年内にはすべて評します。
誰だってよかったなんて言わないで私の名前が記号に変わる / 花房香枝
〈誰だってよかった〉という発話は友人や恋人のような関係性のラベリングを問わず、「関係」のなかで投げかけられ、そして投げかけた人物と投げかけられた人物の間で、加害-被害のような構造をとりうる。なぜなら、誰でもいいということは、関係性における
自作の推し短歌ください・②
昨日に引き続き、2首目です(明日はお休みします)。
愛してもいいと思った 海岸であなたが貝に躓いたとき / 坂中茱萸
主体と〈あなた〉の関係は、それまでほどよい距離感で均衡を保っていたように感じた。
それが〈貝に躓く〉という隙※があらわれたことにより、主体の心のうちには、これまで占めていたあなたではないあなたが入り込んできてしまった。
以上の読みをもたらすのは、心の機微を一手にひきうける〈も
自作の推し短歌ください・①
というタグ遊びをしたところ、7首いただきましたので、1日1首ずつ評をします。
真夜中に楽器を吹けばやってくるだろうすごく怒るおじさんが / 平出奔
言われてみれば確かにありそうで、しかし実際にこの状況が普通に起きるかといえば、あまりないのではないか。〈真夜中に楽器を吹〉くという行為は想像に難くないが、(吹くタイプの楽器ではあるようだが)楽器名への言及もなく、真夜中に吹く状況の背景は一切見えてこ