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自作の推し短歌ください・⑦

ようやく最後の歌です。2019年早かったな。

青い花をください肌寒い朝にちょっと笑ってしまうくらいの / 街田青々

青い花を、ある程度親しい相手へプレゼントするために買おうとしている状況を思い浮かべた。
寒色系であることから青色には低温、そこから展開される冷静さのイメージがある。だからプレゼントするものとしては、「情熱」や「愛」のイメージに直結しやすい「赤い花」にくらべて、親しいながらも少し距離のある人へ渡すイメージがある。

一方で、この花を買う動機は一首の中で明示されておらず、自分のために買っている可能性がある。また〈青い花〉や〈ください〉の平易な言い回しは、内包する意味の幅がやや広くとられているので、抽象度が上がり、青い花を実際的なものではなくひとつの象徴として欲する主体の姿を読むこともできるだろう。一読したときの歌意はわかりやすいが、読むこむほど想定される状況が増えていく歌ではある。

上記のような可能性を踏まえた上で、「誰かにプレゼントする」読みをとりたい。
というのは、〈肌寒い朝にちょっと笑ってしまうくらいの〉箇所に、コミュニケーションの発生する余地があるからだ。
もちろん、ここでも「自分自身が笑ってしまう」という読みも可能ではあるが、そうした場合、ややシニカルで哀愁や自己完結的な感傷のほうに歌のトーンがいくので、比較的閉じた歌になる。
だが、誰かにプレゼントするものとしてのオーダーであれば、「寒いのに、なんでわざわざ青い花を買ったん?」というツッコミをきっかけに、相手との距離感に変化が起きうる。しかもそれが〈ちょっと笑ってしまう〉ような、青さの意図をくんでくれそうな相手であれば、その可能性はさらに高くなるだろう。
個人的な願望や好みを差し挟むことにはなるが、そうやって展開が開かれていく余地がある方向にいくほうが、この歌における主体のちょっとひねった感じがより生きてくるように思った。

あと前半の韻律が定型から外れていて、

あおいはなを/くださいはだざ/むいあさに/ちょっとわらって/しまうくらいの

一応31音に近づけてあるが、字余り・句跨がりのコンボである。
実際に読み下す際は

あおいはなを()ください/はだざむいあさに・ちょっとわらって・しまうくらいの ※

という息づかいで読んだが、倒置で形容が持ってこられることにより、思考の順序に従う感じもある。(実際の効果としては、〈肌寒い〉以下の変わった言い回しを引き立てることを狙っているように思った)

※()はブレス、/は文の切れ目、・は意味上の句の切れ目の感覚です。

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