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ベートーヴェンを毎日聴く105(2020年4月14日)

『ベートーヴェン/6つの歌曲 op.75』を聴いた。

ひとつの曲集になっているが、作られたのはそれぞれ異なる時代。そしてテーマも揃っているわけではない。

ただゲーテの詩によるものが3曲ある(ひとつは戯曲から引用)。それまでに作った作品を、あれこれ纏めて楽譜出版社へ出版提案したのだろう。

ここでは第3曲「蚤の歌」を取り上げよう。

ゲーテの戯曲「ファウスト」の一場面。ライプツィヒの酒場「アウアーバッハス・ケラー」でメフィストフェレスが歌う。

昔、ある王様が蚤を飼い、可愛がった。その蚤に仕立て屋に高級な服を作らせ、勲章まで与える。お城にいる人たちは文句も言えない。たとえ蚤にチクリと刺されてたとしても。でも、お城にいない我々なら、刺されれば潰してやるさ。

読めばわかる通り、王様に対する庶民の風刺である。

「蚤の歌」はベートーヴェンより、ムソルグスキーの作品の方が有名である。

ムソルグスキーの曲を知ったのは小学生の時だった。

それも音楽の授業の音楽鑑賞ではなく、なぜか給食時間にかかるBGMで流れていた。それも毎週のように。

聴いてわかる通り、歌の中に笑い声が出てくる。

これが子供心にはとっても面白おかしくて、そして奇妙な曲調なので、みんなが大笑い。

牛乳を飲んでいるときに、このイントロが出るだけで牛乳を吹き出すという事件が多発するまでになった。

それ以来「ムソルグスキーは、変な作曲家」だ、と思っていた。肖像画もインパクトがあった。

今から考えてもどういう基準で給食時間のBGMの選曲をしていたのか、不思議で仕方がない。

ベートーヴェンから離れてしまった。

ベートーヴェンのバージョンは笑い声は出て来ないが、やはりとてもユーモラスだ。歌は面白い歌い回しだし、さらに、ピアノがコミカルな表現をする。

舞台となった「アウアーバッハス・ケラー」は、まだライプツィヒに存在する。

とても大きなビアホールのような雰囲気でドイツ料理が楽しめる。入口にはゲーテとメフィストフェレスの銅像が立つ。ゲーテの左足を撫でると再びライプツィヒに戻ってくることができるという。

昔撫でたのだが、再びライプツィヒに行けるのはいつのことになるのやら。

店内の壁面には絵が描かれているのだが、和装の男性がひとり描かれている。それはここに通った森鴎外である。

(記:2020年12月10日)


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