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ベートーヴェンを毎日聴く332(2020年11月27日)

『ベートーヴェン/カノン「今日バーデンを思い出せ」WoO181』を聴いた。

ベートーヴェンは1822年の年明けに最後のピアノ・ソナタ第32番 op.111を完成させたが、その後体調が良くなくて、創作の筆も止まっていた。

体調が良くない時に温泉地へ出かけていたベートーヴェン。ウィーン郊外のバーデンには住居も持ち頻繁に訪れていた。

ところで、ヨーロッパの温泉は日本の温泉の様にアツアツのお湯につかるのではなく、とてもぬるいお湯に長い間つかる方式。

わたしも訪れたとき、時間があると温泉に入るのだが、水風呂とまではいかないが、ぬるくて中途半端な温度に感じられて風邪をひくのではないか、と思ったほどだ。なのでいつも早めに出てしまい、熱いサウナへ移動してしまうのだが、ヨーロッパの方はずーっと浸かっている人がほとんどのようだ。

知人によると、だんだん芯から暖かく感じてきて出てからもしばらくはポカポカしているのだとか。今度は頑張って浸かってみようと思っている。

ベートーヴェンも長い時間ジッと温泉に浸かっていたのだろう。そしてバーデンの温泉が好きだったのだろう。

「今日バーデンを思い出せ」

と、ウィーンでこのカノンを歌いながら、体調が思わしくない日々を乗り越えたに違いない。

そして9月になると、甥のカールを連れてバーデンへ出かけている。

すると、ベートーヴェンの元にウィーンのヨーゼフシュタット劇場のこけら落とし公演の音楽依頼が来たり(「献堂式」op.121b)、ロシアのガリツィン侯爵から弦楽四重奏曲の依頼が来たりと(弦楽四重奏曲 第12、13、15番)、大きな仕事の話が舞い込んできている。

合わせてこの頃はあの第九も作曲が進められていた頃でもある。バーデンでも当然作曲はされていただろうが、翌1823年には長めに滞在して第九の多くの部分の筆を進めた。

その時の家がバーデンの第九の家として今でも残っている。その家を訪れるともちろん第九がBGMで流れているのだが、その場所で聴く第九はやはり他の場所で聴くのと違う感覚になる。

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バーデンの温泉が、ベートーヴェンの生涯終盤の大きな創作に貢献したともいえるのではないだろうか。


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