なぜインデックス投資は儲かるのか
こんにちは、がぱけん(@gapaken335)です。
このアカウントは私が仕事や書籍、日々の気づきを通して考察したものを共有するものです。少しでもみなさまのインプットや気づきになると嬉しく思います。
ちなみに顔はアルパカに似ていると言われます。
今回は、最近何かと目にするS&P500や全世界株式などのインデックス投資について、ベースとなっている学術的な理論という角度から掘り下げてみます。
「とりあえずリスクが低くてリターンが見込めると聞いてインデックス投資をやっているけど、なぜそうなるか?に関してはあまり深く考えてこなかった。」という方に対して気付きを与えられればと思います。
それでは早速本題に入りましょう。
この記事で学べることはなんだろう。
以下のことを学べるように構成しています。
・インデックス投資の概要
・ポートフォリオを組む意義
・インデックス投資のベース理論、CAPM
・CAPMの前提と現実との解離
資産形成の重要性とインデックス投資。
2019年6月、金融庁から「年金だけを当てにしていると、老後の資金としてざっくり2000万円くらい足りなくなる」という調査結果が発表されて、物議を醸しました。いわゆる老後資金2000万円問題です。
今回この数字の真偽や精度には触れませんが、リタイア時に一定の資産を蓄えておかないと老後の生活が立ち行かなくなってしまうというのは正しいですし、この報道を受けて資産形成について考え出した方も多いのではないでしょうか?
(そういった意味では調査・公表の目的はある程度達成していますね。)
また、2020年コロナ禍である現在も、ステイホームによる思索時間の増加や、株式市場の暴落なども後押しして、ネット証券を中心に証券口座数がさらに増加しています。
※SBI証券IR資料より
「老後に向けて資産形成をしたい」そんな方々がWEB検索、SNSやYouTubeなどで調べてるうちに行き着くのがS&P500や全世界株式などのインデックス投資だと思います。
これらは大体以下のような触れ込みで解説されています。
・インデックス投資は市場の株式を満遍なく持つことができる金融商品
・対象市場の株価指数(市場の平均値)に連動して価格が上下する
・人が意思決定をしながら運用しているわけではないので手数料が低い
・どんなに優れた投資家でも長期的にはインデックス投資に勝てない
・米国のS&P500が優秀、インフレ加味で平均利回りが6%を超える
・世界的に高名な投資家ウォーレンバフェットもS&P500を勧めている
手数料などの無駄なコストがかからなくて、年利6%以上のリターンが見込めて、特に手入れをする必要もなく(長期的に見れば)右肩上がりで資産が増える。
「老後の資産形成」という目的においては、最適解の一つとして紹介されるのもうなずけます。
お決まりの「複利で運用すると思っているより資産が増える」というグラフも貼っておきます。
100万円を6%で30年間運用し続けると約540万円になります。
1,000,000*(1.06)^30 = 5,418,387
ちなみに年利6%で老後2000万円問題を解決するには、月々2万円(年24万円)を積み立てながら30年間運用すると達成できます。
(((240,000*1.06+240,000)*1.06+240,000)*1.06... = 20,34,378
「このくらいなら意外と簡単にできるかも、、、」という気持ちになってきますね。ただし、実際の利回りは年によって上下しますし、今後30年間同じような動きをする保証はないので注意が必要です。
ただ、総じて優良な投資先であることは間違い無いでしょう。
ポートフォリオ理論による分散投資の効果。
次にインデックス投資がなぜ良いのか、ついて考えてみましょう。
一つのわかりやすい利点として「分散投資」の効果が挙げられます。
よく言われる投資格言として「卵を一つのカゴに入れておくな」というものがあるようです。
一つのリスク資産を集中して持っていると、その資産の価値が大きく下がった時に経済的に大打撃を受けてしまう(≒全ての卵が割れてしまう)。だから分散投資をしましょう。
というお話です。
とてもわかりやすいリスク回避の説明ですよね。
このリスク回避の話、直感的に考えると「リスクとリターンはトレードオフであり、リスクを回避すればするほど期待リターンは減ってしまう」と思ってしまいがちです。(下図左側)
しかしながら、それは誤りで、実際には下の図の右側のような挙動をし、リスクに対するリターンを分散投資で上昇させることができます。
それはなぜか。
資産Aと資産Bのリスクのそれぞれの変動要因が同質では無いからです。
例えば、資産Aにとって向かい風の状況が、逆に資産Bの追い風となるようなことは往々にして存在します。
そして、そのような状況下で、Aのマイナス分の期待値よりもBのプラス分の期待値の方が上回っていれば、リスクを減少させながら、リターンを極力維持することが可能です。
ちなみに、これが二つのリスク資産ではなく、複数のリスク資産になると、下図のような形をとります。
この場合、できるだけ得をしたい投資家は各リスクに対してリターンがもっとも大きい赤線のラインの中からポートフォリオを選ぶことになります。
そしてその赤線の上を効率的フロンティアと呼びます。
投資家の目的は「資産の最大化」ですので、理論的には全ての投資家は効率的フロンティアを形成するポートフォリオの中から資産の持ち方を選択することになります。
さらに、債権などの無リスク資産を含めると、最適なポートフォリオはただ一つに規定されます。
無リスク資産と、ある一つのリスク資産ポートフィリオの資産割合を変化させる場合、リスク資産の持つリスク対リターンは変化しないので単純な直線になります。
例えば、期待リターン1%、リスク0%の債権と期待リターン2%、リスク2%の株式があったとします。
①債権100万円 株式0円 だと 期待リターン1% リスク0%
②債権50万円 株式50万円 だと 期待リターン1.5% リスク1%
③債権0円 株式100万円 だと 期待リターン2% リスク2%
と書いてみると、それぞれのリターンとリスクが一次関数、すなわち直線になっていることがわかります。
また、無リスク資産を始点として先ほどの効率的フロンティアとの接線を引くと、無リスク資産を含めた効率的フロンティアを書くことができます。
この時、接点より左に位置する赤い線上のポートフォリオは、接点のポートフォリオと無リスク資産の組み合わせに負けてしまうので、合理的な投資家は必ずリスク資産は接点のポートフォリオを選択することになります。
これを市場ポートフォリオと呼び、理論的には時価総額加重平均と一致するとされています。
CAPMによるインデックス投資の優位性の支持。
前項の最後にやっとインデックス投資に関連しそうな話が出てきました。
少しだけそこの話を掘り下げましょう。
考え方の元になるのがCAPM(Capital Asset Pricing Model)です。
簡単にいうと「全ての投資家が合理的に行動するのであれば、全員同じ最適なリスク資産ポートフォリオを持つことになり、それは市場全体の時価総額の加重平均(市場ポートフォリオ)となる」という考え方です。
ただし、それには多数の前提をおきます。CAPMの前提は以下の通り
前提 1 すべての投資家は,期待収益率,リスク,収益率相
関係数に関して,同じ予測をもつ.
前提 2 すべての投資家は合理的で,リスク回避的である.
前提 3 同一の利子率で無制限に貸借可.
前提 4 市場は無摩擦,完全競争的,任意の単位で取引可.
前提 5 空売り制約が無い.
「市場にいる投資家はみんな有能で、同じだけ情報を持っていて、同じ指向性を持つ」というイメージでしょうか。
繰り返しになりますが、市場の投資家全員が有能だとするのであれば、市場全体に投じられている投資マネーのリスクとリターンは最適となる。よって市場全体は最適なポートフォリオである。
これこそが、インデックス投資のベースになっている理論です。
理論と現実のギャップ
前述の過程が正しいのであれば、こと株式投資に関しては全世界の株式の加重平均を指数としたインデックス投資をするのが最も正しいことになります。しかし、現実にはそうなっていません。
多少古い資料ですが、国内株式と、海外株式の合成インデックスと全世界株式を比較したところ、25年の長期比較で、合成インデックスの方が高いパフォーマンスを出すことができたことが実証されています。
(出典 https://www.nli-research.co.jp/files/topics/39010_ext_18_0.pdf)
また、米国のS&P500が全世界株式よりも高いパフォーマンスを出し続けているのも、有名な事実です。
情報格差、自国投資バイアス、リスク志向のばらつき、期待リターンのばらつき、投機的バブルのような合理的でない投資行動などなど、前提を外れる要素は数多くあります。
これらからわかるように、この理論はあくまでベースです。
しかしながら、「市場の荷重平均がリスク対リターンの効用を高いレベルで実現する可能性が高い」ということを示唆しただけでも十分な成果だと私は思います。
事実、この理論の構築と実践への応用に尽力したハリー・マーコウィッツとウィリアム・シャープは1990年にノーベル経済学賞を受賞しています。
結びとして。
私はこれを書く3ヶ月ほど前に、株式投資を初めました。
余剰資金を個別株とインデックス投資に振り分け運用してみて感じたことは「数百万円以下の個別株投資は趣味でやらないと割りに合わない」ということです。
日次や週次ベースで株価のチェックを行い、株価の上下に一喜一憂し、大きな変化があったときは意思決定を行う。このプロセスは思った以上に時間的、精神的コストがかかります。その結果が大きければ良いのですが、現在30歳の私が余剰として扱える数百万円を元手とすると、得られる利益に対して、労力対効果が悪いと思いました。
運用に必要な労力や時間もコストととらえ、金銭、学び、もしくは娯楽としてのリターンがあるかどうか。個別株などの運用を行う際はそこをしっかりと見極めて実施するべきと思いました。
反対に、インデックス投資は金銭的コストだけでなく、時間や労力としてのコストも全て外部に出すことができるので、どのような境遇の人でも、純粋に資産形成を行う目的において最適だと言えるでしょう。
しかしながら、分析を繰り返して「これだ」と思った数社の会社の株主となり、少しだけ気にかけて生活をするのも悪くないものです。
追い風のニュースがきたら一緒になって喜び、振るわない決算で一緒になって悲しむ。
生活の視点が少し広がり、情報感度が少しばかり上がる。そんな良いこともあったりするので、個人的には趣味でもう少し個別株も持ち続けてみようと思っています。
みなさまも、それぞれの考えに則した良い投資ライフをお過ごしください。
それではまた。
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