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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~415


すっかり氷が解けてしまったグラスを見るともなく見ていた。氷一つとったって、私の思い通りにはならない。室内の温度や水の量、グラスの大きさなんかで解けるスピードが決まってくる。私の思い通りに出来ることなんて、もしかしたらほとんどないのかもしれない。『痩せること』だって『食べること』だって、いつまでたっても思い通りになんかならないのだから、そんなことわかり切っているのに、心のどこかでは『完璧に』コントロール出来るんじゃないかって、相変わらず『幻想』を追いかけている。摂食障害になってしまった、という『事実』を変えることは出来ないのだから、考え方や捉え方、解釈を『心地よくいられる』ように考えた方が楽なのかもしれない。

「私は今まで、既に起きてしまった事実を変えよう、変えようって、なかったことにしようって、必死になっていたのかもしれない。一番わかりやすいのが『過食嘔吐』で、食べて、食べて、食べ尽くして、もうこれ以上食べられない、ってくらい食べたのに、今度は太るのが怖くて吐いて、吐いて、吐き尽くす、ということを毎日毎日繰り返していたの。人生に『リセット』なんて存在しないのに、ないものを必死になって探して、追い求めて、リセットした気になっていたの。リセットしたつもりでいたの。でも本当は、リセットなんてあり得ないから、その『代償』を払わなくてはならなくなってしまって、きっとそれで『痩せること』と『食べること』に追い詰められて、苦しめられることになってしまったの。陽子の言うように何が起きるかわからないし、起きてしまったことは変えられないし、なかったことには出来ない。それなのに何もかもを思い通りにしようなんて考えるから、余計にうまくいかなくて、自分を責め続けて、出来ない自分に落ち込んで、イライラして、失望して……そんなことをもう何年も繰り返しているの」

そこまで一気に喋ったら、喉がカラカラに渇いてしまった。私の思い通りにはならなくて、解け切ってしまった『氷』を飲み干した。


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